「正直、好材料とは見なしがたい」。

韓国バッテリー企業の関係者は、最近トランプ前大統領が次期米大統領選挙の支持率１位となっている状況についてこのように話した。現在のバイデン政権で作られたインフレ抑制法（ＩＲＡ）を廃止するという意志をトランプ氏が示唆してきたからだ。

米国政府は２０２２年８月からＩＲＡを施行し、米国で生産した電気自動車バッテリーに補助金を支給してきた。ＬＧエナジーソリューション、サムスンＳＤＩ、ＳＫオンなどは昨年ＩＲＡで得た営業利益が１兆ウォン（１１００億円）に達し、２０２５年には１０兆ウォンまで増えるという予想もある。トランプ氏が当選してＩＲＡを廃止する場合、こうした期待は消える。


特に韓国バッテリー企業が米国投資を拡大した状況を考慮すると、ＩＲＡ廃止時には収益性に影響が及ぶ。ＬＧエナジーソリューションは７兆２０００億ウォンを投資して米アリゾナ州に北米最大規模のバッテリー工場を建設している。ステランティスとの合弁工場を米国に建設しているサムスンＳＤＩは工場の稼働を操り上げ、今年末に大量バッテリー生産を始めることにした。

対外経済政策研究院は２日に公開した報告書「米国のサプライチェーン再編政策への企業の対応および示唆点」で「トランプ氏が再選する場合、米国の電気自動車およびバッテリー産業は莫大な打撃を受ける可能性がある。米国に投資を進行中または計画中の韓国企業は重大な政治的要因を主要変数として考慮する必要がある」と診断した。

しかし「トランプ当選」を「ＩＲＡ廃止」と見るのは性急だという分析もある。蔚山科学技術院（ＵＮＩＳＴ）エネルギー化学工学科のチョ・ジェピル教授は「トランプ氏の公約の核心は『アメリカファースト（米国優先主義）』だが、その代表格のＩＲＡを廃止するだろうか」と反問した。さらにＩＲＡの廃止は議会上下院の過半数の同意を得なければならず、トランプ氏の意志よりも議会の構成がさらに重要という面もある。これを受け、トランプ氏が当選してもＩＲＡを廃止するより、一部調整にとどまるという見方が出ている。

韓国バッテリー業界も米大統領選挙の結果よりも市場の成長性を重視している。ＬＧエナジーソリューションの関係者は「米国バッテリー工場はＩＲＡのためでなく北米電気自動車市場の成長の可能性のために建設するものだ」と述べた。続いて「ＩＲＡ廃止または縮小が現実化すれば打撃があるだろうが、『電気自動車市場の成長に伴うバッテリー需要の拡大』という大きな方向が続く限り、事業方向も大きくは変わらないだろう」と話した。