２０２３年１０月７日午前６時３０分（現地時間、日本時間午後１２時３０分）。パレスチナ武装勢力ハマスによるイスラエル攻撃は２０分間に約５０００発のロケット発射と同時に始まった。イスラエルの当局者は「奇襲だった」（Ｗｅ　ａｒｅ　ｓｕｒｐｒｉｓｅｄ）」と告白した。一言で「情報の失敗（Ｆａｉｌｕｒｅ　ｏｆ　Ｉｎｔｅｌｌｉｇｅｎｃｅ）」ということだ。

もちろん具体的な事実関係は今後の調査で明らかになるだろう。しかし情報が失敗する場合に作動する基本原理を理解することは、現在の状況を評価するのに役立つ。情報はいかなる場合に失敗し、類似の事例にはどんなものがあり、これを通じて得られる教訓は何かを見てみよう。

◆敵に対する「固定観念」が客観的な状況判断を曇らせることがある


戦争は基本的に「自由意志」を持つ敵を相手に極端な手段を動員して対決する行為だ。自分が選択権を持つだけに、相手も時期・方法などで一定の選択権を持つということだ。こうした基本前提はよく忘れられたりする。特に、自分が相手に一方的に勝利した経験が累積したり、圧倒的な能力を備えたりした場合、こうした現象がよく表れる。

５０年前の１９７３年１０月６日の第４次中東戦争が代表的な例だ。当時、エジプトの侵攻兆候が次々と表れた。しかしイスラエル情報当局は「（第３次中東戦争で）エジプトは戦争を恐れている。ソ連からスカッドミサイルと爆撃機が到着してこそ開戦するだろう」と確信していた。結局、イスラエルの「総動員令」は最後の瞬間まで発令されなかった。今回の事態でも「ハマスが経済的利益に優先的な関心を持っている、大規模な立体的攻撃能力はない」という固定観念を抱いていたのかもしれない。

情報分析の対象は「脅威」だ。脅威は「意図」と「能力」で構成される。意図は敵の選択によっていくらでも変わる。したがって情報判断で意図を中心に置くのは危険だ。特に、敵に対して長期間にわたり固定観念を抱いていたり、希望的思考（Ｗｉｓｈｆｕｌ　Ｔｈｉｎｋｉｎｇ）の罠にはまって善意を期待するのは致命的な結果を招くことになる。脅威はすべての可能性を残して能力を中心に判断しなければいけない。

◆「技術」の助けが必要だが、過度な依存は危険なこともある

先端技術の発展が情報能力を向上させている。特にサイバー・宇宙領域の収集資産と人工知能（ＡＩ）を活用した分析などが代表的だ。しかし「望むものをすべて把握できる」「技術がすべてに代わる」という考えは違う。技術が人間の過誤までなくすのは不可能であるうえ、敵の原始的な手段によって逆にだまされたりもするからだ。

第４次中東戦争でもこうした過誤があった。戦争勃発の９カ月前、イスラエル特殊部隊はカイロとスエズ運河を連結する路上の制高地点「アタカ（Ａｔａｋａ）」に先端盗聴装置を設置した。しかし一部はエジプトに事前に発覚し、残りはイスラエル情報当局の誤った判断で遅れて稼働した。今回の事態でも迎撃成功率９０％を誇るアイアンドーム（Ｉｒｏｎ　Ｄｏｍｅ）がロケットの大規模同時発射に対応する過程で限界を表し、難攻不落と見なされた分離壁はモーターパラグライダーで突破されたという事実に注目する必要がある。

技術は情報の不確実性を減らすのに役立つ。したがって持続的に発展させる必要がある。しかし不確実性を完全に解消することは不可能だ。特に敵がいかなる犠牲も覚悟していれば注意する必要がある。通常では考えられない極端な手段と方法を選択することがあるからだ。結局、技術の役割は補助的な手段として活用されるのが望ましい。


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