いわゆる「渓谷殺人事件」で無期懲役を宣告されて収監中のイ・ウンヘ被告（３２）が、亡き夫の死亡保険金８億ウォン（約８９００万円）を受け取ることができなくなった。

ソウル中央地方法院民事合議１８部（パク・ジュンミン部長）は５日、イ被告が保険会社「新韓ライフ（旧オレンジ生命保険）」を相手取って起こした保険金支払訴訟で、原告の請求を棄却して訴訟費用は原告が負担するよう命じる原告敗訴の判決を下した。

イ被告は２０１９年６月３０日、夫のユンさん（死亡当時３９歳）が死亡すると翌年２０２０年１１月に夫名義で加入していた生命保険金８億ウォンを返してほしいとする民事訴訟を起こした。再捜査が始まって検察に送検される前に保険会社を相手取って訴訟を起こしたのだ。


今年４月まで続いた１・２審裁判でイ被告は無期懲役を宣告されていたが、保険金訴訟は取り下げなかった。

これに対して２０２１年６月初の弁論期日を開いた裁判部は刑事裁判の結果を待つために期日を後日指定すると明らかにし、控訴審宣告後の今年５月、２年ぶりに裁判を再開した。

イ被告は共犯のチョ・ヒョンス被告（３１）とともに２０１９年６月３０日、泳げないユンさんに京畿道加平郡（キョンギド・カピョングン）の龍沼（ヨンソ）渓谷で強制的にダイビングをさせて死なせた容疑が持たれている。また、フグの血を混ぜたものを食べさせるなど二度にわたって殺害を試みたが未遂に終わった容疑で昨年５月起訴された。

事件は２０１９年のユンさん氏死亡当時には単なる変死として内部捜査が終結したが、同年１０月に遺族・知人の情報提供によって再び捜査が始まった。イ被告とチョ被告は２０２０年１２月に殺人と保険詐欺防止特別法違反未遂容疑で検察に書類送検されて１回目の出頭調査を受けた後に潜伏し、公開手配の末に昨年４月京畿道高陽市（コヤンシ）で検挙された。

１・２審はイ被告が水の中に落ちたユンさんを積極的に救助しなかったとして間接（不作為）殺人を認めて無期懲役を宣告した。ただし「被害者が心理的屈従状態だったとはみることはできない」として心理的支配（ガスライティング）による殺害は認めなかった。イ被告と検察は控訴審判決に従わず、同事件は大法院（最高裁）の最終判断を控えている。