女子ワールドカップで優勝したスペイン代表チーム選手にスペインサッカー連盟会長が強制的にキスして世界的な批判を受けている。サッカー界で性差別が相変わらずだという批判とともに、彼の行動が性暴力だったという指摘が続いている。

スペインサッカー連盟のルイス・ルビアレス会長は２０日、２０２３国際サッカー連盟（ＦＩＦＡ）女子ワールドカップ表彰式で、スペイン代表チームのジェニファー・エルモソ選手の顔を両手で押さえて唇に口を合わせた。スペイン選手団がオーストラリアのシドニーで行われた決勝戦でイングランドを１－０で破り史上初めて優勝を果たした状況だった。ルビアレス会長はエルモソ選手にキスした後、彼女の背中と腰を叩いたりした。




その後エルモソ選手はロッカールームでインスタグラムで生配信しながら「気分は良くなかった」と話した。また、チームメートらに「嫌だった」と話すような口の動きが見えた。

別の選手が上げた動画ではルビアレス会長がロッカールームまで訪ねてきて話す場面もあった。動画でルビアレス会長は選手団を自国の休養地であるイビサ島に連れていくとし、そばに立っていたエルモソ選手とそこで結婚式を挙げると話すと笑って手を叩いた。

◇スペイン閣僚「ルビアレス会長の行動は性暴力」

ルビアレス会長の言動は世界のメディアの批判を受けている。スペインメディアのマルカは「国の歓喜とは別に多くのファンはエルモソ選手がされた強制キスに大きな衝撃を受けた」と伝えた。

米ニューヨーク・タイムズは「サッカー界に依然として性差別が残っているということが全世界に生中継された」と評価した。同紙は「これは女子サッカーをこれまで悩ませた不快な性差別的行動を思い起こさせる」とし、過去にも１９９８年からスペイン女子代表チームを指揮したイグナシオ・ケレダ監督が選手団の反発で２０１５年に辞任したことに言及した。

波紋が大きくなるとスペイン国内でも批判の声が大きくなっている。スペイン国営放送ＲＴＶＥによると、スペインのミケル・イセタ文化スポーツ相はルビアレス会長の行動に対し「容認できないこと。われわれは女性の平等な権利と尊重の時代を生きている」と指摘した。また「われわれは社会に尊重と平等のメッセージを強調しており、高い地位の人がキスを強要するメッセージを見せてはならない」と強調した。

スペインのイレーネ・モンテロ平等相もルビアレス会長の行動を性暴力と規定しソーシャルメディアのＸ（旧ツイッター）を通じ「同意のないキスを当たり前のことと考えるな。これは女性が日常的に体験する性暴力の一形態」と指摘した。スペイン政界ではルビアレス会長の辞任を促す主張も続いている。

◇サッカー連盟の収拾の動きにも批判世論

その後も議論が続くとエルモソ選手は現地のラジオに出演し「キスを期待してはいなかった」としながらも「瞬間の逸話であるだけそれ以上何もない」と一蹴した。エルモソ選手はサッカー連盟を通じても「親密さの表現だった」としてルビアレス会長をかばう立場を明らかにしたりもした。ルビアレス会長もインタビューで「みんなばかげた話をする。特別な意味のない瞬間的行動だ」と釈明した。

スペインサッカー連盟が事態を収拾しようとする動きにもスペイン主要日刊紙エルパイスは「エルモソ選手はルビアレスのキスを喜んでいない。私たちもそうだ」という見出しの社説を通じ批判した。同紙は「スペインサッカー連盟会長は誤解だったと言えるが、突然（他人の）口にキスするのは『攻撃』だ。『キス泥棒』は常に驚くべきで愉快に近づくものではない」と叱咤した。