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「半導体工場」費用70%補助…「中国を追い抜く」インドの極端なインセンティブ

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
情報技術(IT)強国のインドが中国を抜いて半導体グローバルサプライチェーンの主軸に位置づけられるという野望を表わしている。米国・台湾との摩擦で「世界の工場」の立地が揺らいでいる中国に代わり、半導体の不毛地だったインドを「人口大国」だけでなく「半導体大国」に変貌させるという覚悟だ。

先月28日、インド・グジャラート州ガンディーナガルで開かれた行事「セミコン(半導体)インディア」でナレンドラ・モディ首相が出した一声がこれを示している。モディ首相は「レッドカーペットを敷いておいた。先占すれば大きな利益を得るだろう」と断言した。

◆米国の中国牽制に中国の座を狙う


インドの戦略は、米国独自のサプライチェーン確保戦略かつ中国牽制戦略の「ディリスキング(危険除去)」に歩調を合わせ、中国の座に代わりにつくことだ。グローバル半導体サプライチェーンは設計・装備分野は米国、素材は日本、生産は韓国・台湾、後工程(ATP、組立・テスト・パッケージング)と一部汎用チップ生産市場は中国に分かれている。「インドの夢」は韓国・台湾のような「チップ生産拠点」になることだ。このために執権以降「メイク・イン・インディア」政策を主導してきたモディ首相は2021年からは半導体にすべてをかけている。

(1)極端なインセンティブも辞さない=モディ政府は今年、「半導体生産工場誘致」を目標に100億ドル(約1兆4330億円)の補助金支給計画を打ち出した。これとは別に、海外半導体企業がインドに工場を設立すれば、インド中央政府が施設建設費用の50%、州政府が20%を支給する。欧州の技術専門メディア「イーニュース・ヨーロッパ(eeNews Europe)」は「極端な水準のインセンティブ」と評した。インドのテクノロジー専門メディア・アナリティクス・インディアマガジンは「インド政府はグローバル半導体企業の現地投資を引き出すのに死活をかけている」と伝えた。

◆マイクロンとAMD、インド投資を約束

インドの提案に一番先に呼応したのは脱中国を急ぐ米国の半導体企業だ。米国最大手のメモリー半導体メーカー、マイクロンは今月、モディ首相の故郷のグジャラートに半導体後工程工場建設に着工する。全体投資額27億5000万ドル(約3940億円)のうち70%はインド中央政府と州政府がインセンティブとして支給し、マイクロンは30%(8億2500万ドル)のみ投入した。

米シリコンバレーに本社を置く半導体設計専門企業AMDは、ベンガルールに4億ドル(約573億円)規模の大規模な半導体デザイン・センターを設立することにした。米半導体装備専門メーカーのアプライド・マテリアルズ(AMAT)も同じ地域に4億ドルを投じてエンジニアリング・センターを建設することにした。

台湾と日本もインドに向かっている。アップル最大の協力会社・台湾企業フォックスコンは、インドに半導体施設造成を目的に5年間で20億ドル(約2866億ウォン)を投資する。これは最近、投資計画が保留されているフォックスコンとインドのベダンタ・グループの195億ドル(約2兆7950億円)合弁投資とは別の新規投資計画だ。日本は19日、インドと半導体分野協力了解覚書に署名した。「半導体復活」を宣言した日本とグローバル生産基地を狙うインドが半導体同盟を結成したという分析も出ている。

◆強みは民主主義とIT人材

(2)「インドの体制が中国より有利」=グローバル半導体企業がインドに目を向けたのは破格のインセンティブのためだけではない。インドは「世界最大の民主主義国家」で、米国と手を握る可能性がある「信頼できるサプライチェーン・パートナー」だということを浮き彫りにしている。クアッドが代表的だ。インド政府は、米国主導の安保同盟国のクアッド(米国・日本・オーストラリア・インド)と多国間経済協力体のインド太平洋経済フレームワーク(IPEF)の一員であることを掲げている。ムンバイ国際人口科学研究所のサンジェイ・クマール・モハンティ教授は「インドの政治的・民主的体制の方が中国よりグローバル投資にはより有利だ」とウォールストリートジャーナル(WSJ)に強調した。

◆「チップ設計IT人材だけで5万人」

(3)巨大なIT人材、インドが圧倒=英語を駆使する高級労働力が豊富だという点もインドの潜在力の一つだ。BBCはインド政府が「チップ・トゥ・スタートアップ(Chips to Startup)」計画として大規模集積回路(VLSI)および組込みシステム設計専門分野で8万5000人の優秀なエンジニアを養成したと伝えた。デロイトのグローバルコンサルティング業者カティール・タンダバリアン・パートナーは「現在、インドはチップ設計分野に世界の人材の20%を保有している」とし「この分野に従事しているインド人が5万人ほどになる」と述べた。

(4)水・電力などインフラ改善にも着手=インドは半導体産業の核心インフラである電力と水確保のための投資も大幅に増やした。米国公共政策シンクタンク情報技術革新財団(ITIF)は「インドの半導体準備度評価報告書」でこれまでインド連邦政府の投資で、半導体クラスター造成予定地のグジャラート州ドレラやカルナータカ州ミスルなど多くの地域で最近、上下水道・港湾・空港・道路・高速鉄道インフラが大きく改善されたと伝えた。現在、インドの発電設置容量は410ギガワットで、現在世界で3番目に大きい規模だ。

グローバル半導体電子産業サプライチェーンを代表する協会SEMIのアジット・マノチャCEO(最高経営者)は「2023年はインド史上初めて、地政学、国内政策、民間の力量が有利に整列され、半導体生産のプレーヤーとして跳躍した道しるべの年として記憶されるだろう」と述べた。インド情報通信省のラジーブ・チャンドラセカール長官は「インドは10年以内に世界最高の半導体製造国の一つとなり、過去に中国が半導体分野で定着するために30年間で2000億ドル(現レートで約28兆6580億円)をつぎ込んだのとは異なるだろう」と自信を示した。

◆弱点、差別的慣行にインフラ不足

ただ、現実的な障害も少なくない。

(1)「外国人投資の墓」=中国新華社通信は「インドは海外投資家の墓」とし「インドの差別的な事業慣行、脆弱な製造業力量、貧富格差など固着した問題が『インドの夢』を妨害するだろう」と酷評した。ブルームバーグ通信も「インドは都市化、インフラ、人的資源開発、急速な製造業発展が数十年にわたって先行されなければならない」と前提した。

(2)製造業インフラ不足=また、インド国内総生産(GDP)で製造業の比重は2021年基準で14%と27.44%に達する中国の半分水準だ。航空・港湾・インターネット・電気などのインフラ普及率も中国に遅れをとり、インドの都市化率は23%(2021年基準)で中国の65.2%(2022年)の半分程度だ。IT産業の発展を後押しする製造業インフラがまだ不足しているという指摘も厳しい。

◆「インド、目線を下げるべき」との意見も

これに伴い、インドが半導体サプライチェーンに合流するためには「チップ生産」ではなく「後工程」に集中すべきだという分析も出ている。ロイター通信・フィナンシャルタイムズ(FT)などは「インドは韓国・台湾のような生産拠点になろうとするという目標から目線を下げ、後工程分野占有率13%のマレーシアと競争しながらサプライチェーンに合流するのが現実的」と助言した。実際、現在までインド政府が誘致した海外企業投資は後工程やデザイン・センターなどで、生産工場は皆無だ。

韓国半導体産業協会のアン・ギヒョン専務は「インドにチップ製造工場を建てることができるのは米国・韓国・台湾程度」とし「これらの国は自国に工場を建てればよく、あえてインドに進出する必要はない」と述べた。また、「当初、中国にチップ製造工場が建設されたのは強固な市場が形成されているためだが、インドは市場が微々たるもので全般的な環境が造成されない」と慎重な立場を示した。



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