テスラの積極的な価格引き下げに、米国で電気自動車攻略に出た現代（ヒョンデ）自動車グループの苦心が深まっている。米インフレ抑制法の補助金を受けられない境遇なのに競合メーカーはスピードを出す姿だからだ。

テスラは今年に入り３度目の価格引き下げに出た。７日に「モデルＳ」と「モデルＸ」の米国での販売価格をそれぞれ５０００ドル（約６６万円）引き下げた。モデルＳの価格は８万９９９０ドルから８万４９９０ドルに下がった。モデルＸは９万９９９０ドルから９万４９９０ドルに調整された。

「モデル３」と「モデルＹ」もそれぞれ１０００ドルと２０００ドル引き下げた。テスラで最も安いモデル３（パフォーマンス）は今年初めに６万２９９０ドルで販売されていたが、価格引き下げを繰り返し販売価格は５万２９９０ドルに調整された。この３カ月間で１万ドル値下げされたのだ。


テスラの価格引き下げ加速戦略は市場でしっかりと効果を出している。テスラは１－３月期に４２万２８７５台を顧客に引き渡したが、これは四半期基準で過去最高だ。昨年１－３月期の３１万４８台と比較すると３６％増えた。テスラも価格引き下げ効果を認知している。イーロン・マスク最高経営責任者（ＣＥＯ）は今年初め「小さな価格変化も需要に大きな影響を与える」と話した。景気不況と高金利基調の中で財布が軽くなった顧客を価格引き下げカードで引き留めようとする戦略と分析される。

現代自動車グループは心配事が増えた状態だ。北米製の電気自動車にだけ税制優遇を提供するインフレ抑制法に加え競合メーカーの価格引き下げまで加わった。最近北米市場で販売新記録を打ち立てているが、内心は穏やかではない。

現代自動車グループの米国内販売台数は１月に１０万７８８９台で１０万台を超えたのに続き、先月には１４万６６９８台を記録した。１－３月期としては過去最大の販売台数だ。

これに対し現代自動車グループが重点を置いている純電気自動車販売台数は振るわない。１月に４３８７台を記録した純電気自動車の販売台数は先月には５２２５台と小幅の増加にとどまった。全体販売台数で電気自動車が占める割合は１月の４．０％から２月が４．１％、３月が３．５％と減少傾向を見せている。ヒョンデ「アイオニック５」は昨年米国市場だけで２万２９８２台が販売されるほど人気を呼んだが、先月には２１１４台の販売にとどまり、前年同期比２２％減少した。

現代自動車グループも対応策に苦心しているところだ。まず２０２５年上半期に予定されている米国での生産日程を来年下半期に前倒しする計画だ。現代自動車グループは米ジョージア州に年産３０万台規模の電気自動車専用工場「メタプラントアメリカ」を造成中だ。ここではヒョンデ、起亜（キア）、ジェネシスの３つのブランドの電気自動車を生産する予定だ。

ヒョンデの張在勲（チャン・ジェフン）社長は最近ソウルモビリティショーで記者らと会った席で、「ひとまず商業用リースや準備している工場などを通じて最善を尽くすことが（インフレ抑制法対応の）正解だと考える」と明らかにした。リースとレンタルは生産地域と関係なく７５００ドルの補助金を受けることができる。

だが米国販売リース車両のうちエコカーの割合は５％にすぎない。市場で現代自動車グループが価格対応カードを切るだろうという予測が根強く出ている理由だ。大林（テリム）大学未来自動車学部の金必洙（キム・ピルス）教授は「（現代自動車グループが）米国の電気自動車市場の主導権を手放さないためにディーラーインセンティブ拡大など多様な案を考えるだろう」と話した。