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【コラム】「執行官」は去るが、アベノミクスはひとまず維持か…世界経済見通し(2)

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
◇植田氏は「日本のバーナンキ」

複雑に絡まるジレンマを植田氏が解くことができるだろうか。植田氏個人の能力はけちのつけようがなさそうだ。彼は日本の量的緩和政策の最高手の1人だ。1998年~2005年に日銀の最高意志決定機関である政策委員会の審議委員を務め、ゼロ金利と量的緩和導入に関与した。現在日銀のシンクタンクである通貨経済研究所の首席顧問を務めており、最近の金融緩和政策も見抜いている。

学問的バックグラウンドも世界最高水準だ。特に世界の中央銀行を牛耳っている「スタンレー・フィッシャー軍団」の一員だ。フィッシャー氏はMITで経済学教授を務めた後イスラエル中央銀行総裁、米連邦準備制度理事会(FRB)副議長を務めた。植田氏のMIT博士課程の指導教授がフィッシャー氏だ。ブルームバーグによると、バーナンキ元FRB議長、ドラギ前欧州中央銀行総裁、サマーズ元米財務長官もフィッシャー氏の教え子だった。ドルばらまきで米国を金融危機から救った「ヘリコプター・ベン」(バーナンキ氏)と積極的通貨政策でユーロ圏危機から欧州を救った「スーパー・マリオ」(マリオ氏)が植田氏とほぼ同じ時期にフィッシャー氏の下で経済学を学んだ。サマーズ元長官はブルームバーグテレビで「われわれは彼を日本のバーナンキと考えることができる」と話した。世界の中央銀行関係者との親密な関係は今後の日銀の政策に対する国際社会の信頼と支持を高めるのに寄与するものとみられる。


◇当分円相場急変イベントはなさそう

市場専門家らは植田氏の最初の手術対象にYCC政策を挙げる。10年物長期国債利回りを0%にし上下0.5%の変動だけ許容する制度だ。ここには日銀の国債過多保有、日本政府の財政不良、債券価格機能喪失などの代償が伴う。その上に長期金利固定は米国との金利格差を拡大し円急落など多くの副作用を生んだ。サマーズ元長官は「利回り統制を無制限持続することはできない」と話した。国際通貨基金(IMF)もより柔軟な利回り統制を要求している。カギはYCCの手術方向とタイミングだ。過激な手術は途轍もない後遺症を引き起こす。昨年12月に変動幅を上下0.25%から0.5%に拡大しただけでもすぐ長期金利上昇を呼んだ。

対外経済政策研究院のチョン・ソンチュン副院長は「ひとまずYCCの効果と副作用を検討した後、長期金利変動幅を少しずつ慎重に拡大していく可能性がある。短期金利引き上げは来年以降にでも検討すると予想される」と話した。

植田氏の登場と黒田氏の退場はアベノミクスの閉幕を既定事実にする。しかしすぐではない。現在の金融緩和フレームは当分ドラマチックな変化なく維持されるだろう。それならば短期的に円相場急変の可能性は小さいとみられる。

延世(ヨンセ)大学経済学部の成太胤(ソン・テユン)教授は「日本の金融市場の正常化は韓国経済に肯定的に作用するだろう。現時点では円キャリー資金の急激な還流の可能性は大きくない」と話した。

◇韓国経済に垂れ込める日本経済の影

日本経済がくしゃみをすれば韓国経済が風邪をひくという言葉がある。1997年の通貨危機が代表的事例だ。同年外国短期資金375億ドルが抜け出たのが危機の導火線だった。日本は韓国に貸し付けた短期資金218億ドルのうち60%の130億ドルを回収した。それがウォン暴落の最大要因だった(カン・マンス、『現場で見た経済危機対応実録』)。2013年に本格化したアベノミクスは発足したばかりの朴槿恵(パク・クネ)政権の経済運用に大きな負担を抱かせた。円が続落し韓国の輸出戦線が脅威を受けた。当時IMFのラガルド総裁がアベノミクスの無制限通貨放出を「近隣窮乏化政策」と批判したが、米国の擁護の下で問題なくやり過ごした。昨年も韓国の輸出企業は円急落に悩んだ。対ドル円相場が150円台を超えて下がったりもした。過去には対円ウォン相場が1対10より上がれば韓国経済が影響を受けたりした。通貨危機直前の1996年にウォン相場は100円=727ウォン、金融危機直前の2007年には829ウォンだった。13日の相場は100円=962ウォンだった。

イ・サンリョル/論説委員


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