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【グローバルアイ】ある在日の遺言

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版

55年間に約1万2000点の絵を韓日両国に寄贈した在日韓国人2世、河正雄(ハ・ジョンウン)氏。ホ・フン氏の金剛山(クムガンサン)の前で「在日」画家の絵を説明している。 [写真 在日韓国文化院]

今でいえば小学2年の時だ。美術の時間に絵を描いたところ、先生から意外にも褒められたという。彼が描いたのは故郷、秋田県の紅葉が美しい山。在日として差別と貧困で萎縮していた幼い河正雄(ハ・ジョンウン)の心に光が射し始めた。ただ、絵が好きだった。絵の中では差別も寂しさもなかったが、貧困にだけは勝てなかった。3人の弟妹がいた彼に長男という地位は重かった。高校を卒業しながら決心した。「社会が大学だと思えばいい。必死に頑張って最後に社会で卒業証書を受ければいい」。しかし就職も容易でなかった。在日だったからだ。絶望の時間だった。

その彼を天が助けた。26歳の時だ。電子製品を売っていたが、東京オリンピック(1964年)が開かれると飛ぶように商品が売れた。これを元手に不動産業に参入した。運よく開発ブームを迎え、事業は拡大した。ある日、近くに住んでいた画家ホ・フンが訪ねてきた。「絵を売ってほしい」ということだった。風景画「金剛山(クムガンサン)」(1961年)だった。訪れたこともない祖国の風景に心を奪われた。作家が在日という理由で絵の仲介は容易でなかった。これをきっかけに彼は自身と同じ立場にいる作家の絵の世界に目を向け始めた。在日作家の絵を広く伝えたかった。祖国にまともな美術館がないことを知ると、光州(クァンジュ)市立美術館と釜山(プサン)市立美術館などに一つ、二つと寄贈し始め、在日作家の作品は注目され始めた。

8日に東京の韓国文化院で開かれた「河正雄コレクション」展示会で会った彼は今年84歳。立っているのも不便だと言いながらも、自身の人生を変えた絵の前では時間を忘れた。55年間に韓日両国に彼が寄贈した絵は計1万2000点余り。彼は「数えたことがなく知らなかったが、多いとは思っていない」と語った。「お金だけで人は幸せになることができない。私の手には何もないが、寄贈すれば私たちみんなの宝になる」。声が澄んでいた。日帝強占期と戦争、つらい屈曲の時間を韓国人でも日本人でもない在日として生きてきた彼は、今回の展示会が自身の「遺言」だと言った。30代の若い韓日両国の作家の作品を紹介しながら彼が選んだテーマは徒徒(つれづれ)。「手を取り合って仲間として、幸せに、一緒に歩もう」という、若者と未来に送るメッセージという。韓日関係の解氷という声が春の新芽のようにあちこちで出ている。故国の若者、そして日本の青年にも彼のこうした切実な思いが届くことを願う。


キム・ヒョンイェ/東京特派員



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