「バフムトはロシアとウクライナの両軍隊の血の渦になった」（米ＮＹＴ）

ウクライナ東部の小さな都市バフムトが今回の戦争の新たな激戦地に浮上した。ウクライナ軍が南部ヘルソン奪還に攻勢を集中する間、数カ月間にわたりロシア軍を防いだバフムトに最近ヘルソンから撤退したロシア兵力まで大規模に加わり、まさに「血の渦」になっている。最も残酷な戦争に挙げられる第１次世界大戦の塹壕戦の様相まで表れていると、海外主要メディアが２８日（現地時間）伝えた。

この日、ニューヨークタイムズ（ＮＹＴ）、英日刊ガーディアンなどによると、最近ウクライナ東部のドネツクに位置する人口７万人の都市バフムトの病院では負傷兵士が絶えない。都市に一つしかない軍病院に２４日の一日だけで約２４０人の負傷兵が運ばれた。銃傷と破片傷、脳しんとうまで重傷の兵士も多かった。


以前から東部戦線接線地区だったここは、ロシア民間軍事企業ワグナー（Ｗａｇｎｅｒ）から送られた従来の傭兵に加え、最近はヘルソンから撤退したロシア軍兵力までが加わり、大きな人命被害が発生している。ここの医療スタッフは「この数日間、ロシア軍はさらに激しく攻撃している」とし「ロシア軍は旧ソ連時代のように兵士が小銃１丁を持って出て倒れれば次の兵士が出てくるという形をとっている」と伝えた。

これに対応してウクライナ軍もこの数日間、特殊部隊と訓練が十分でない領土防衛隊員までも動員して兵力を増やしている。

ロシア軍はウクライナ側が掘った塹壕に向けて兵力を投じて被害を拡大させている。あるウクライナ兵士は、ロシア軍が機関銃と曲射砲などで防いでいる塹壕に押し寄せながらはるかに大きな被害を受けていると、ＮＹＴに伝えた。

これは最近降った雪と雨でウクライナ軍の塹壕が泥沼のように変わった姿と重なり、第１次世界大戦の悪夢を思い出させる。

第１次世界大戦当時、ドイツ軍は当初計画していた迅速な終戦に失敗し、続く連合国の攻勢を防ぐために巨大な規模の塹壕を掘った。これに対し連合国も塹壕を掘って持ちこたえながら、双方ともに実質的な進撃はできず、大規模な死傷者を発生させる「最悪の塹壕戦」がかなり続いた。

当時、敵を防ぐことを優先した双方はまともに排水されない粗悪な塹壕を作り、兵士の被害を増やした。塹壕の底の冷たい水のため局所低体温症にかかる塹壕足（ｔｒｅｎｃｈ　ｆｏｏｔ）が代表的な例だ。皮膚の壊死を防ぐために足を切断する兵士も少なくなかった。

バフムトの病院の医療スタッフは「塹壕足と低体温症の兵士が増えている」とし「兵士は保温に必要な補給を受けるが、それがすべての問題を解決するわけではない。彼らは塹壕の中で雨に濡れながら数日間を送っている」と伝えた。慢性的な兵たん問題で防寒装備不足問題が提起されるロシア軍の場合は被害がさらに深刻だと、専門家らは予想している。

バフムトでロシア軍が多くの兵士の命を担保に激しい攻撃をしながらも顕著な成果は少ないという点も、この戦場が第１次世界大戦の惨状を思い出させる要素だ。小都市バフムトの実際の戦略的価値は大きくないという評価が多い。

米シンクタンク海軍分析センター（ＣＮＡ）のマイケル・コフマン・ロシア担当研究員は「ロシア軍が進撃することを見せるための非現実的な政治的要求を受けているとみられる」と伝えた。しかしロシア軍の期待ほどの進撃は見られない。ＮＹＴは「最近のバフムト戦場の進軍はマイル（約１．６キロ）でなくヤード（約０．９メートル）単位」と報じた。

英日刊ガーディアンは「ウクライナ軍もこの戦線を維持し、ロシア軍に莫大な被害を与えようとするとみられる」と分析した。

一方、ウクライナの気温が近く氷点下１１度まで落ちるという予報があり、ロシア軍が冬季の厳しい戦争をするという見方が出ている。アフガニスタン英国軍元司令官リチャード・キャンプ氏は最近、英日刊テレグラフへの寄稿で、ロシアがウクライナに冬季の苦痛を与えるために発電所などを攻撃したが、低い士気と補給問題で困難があるはずだという見方を示した。