2008年9月、米金融グループ「リーマンブラザーズ」の破綻でグローバル金融市場で信用収縮が深刻になり、韓国銀行(韓銀)の海外借入が突然ふさがった。当時、1ドル=1570ウォンまでウォン安ドル高が進み、同年9月から年末まで462億ドルの外貨が流出した。外貨貸出を償還したり輸入代金を支払う企業はドルを確保できず危機を迎えた。
通貨当局は緊張した。銀行が海外借入金の満期を迎えても延長したり借り換えができなければ、国家が保有外貨を崩さなければいけない。
企業に貸した外貨を回収して返すのは実物経済を萎縮させたりする。1997年の通貨危機当時、海外借入金の満期延長が拒否され、保有外貨が底をつき、国際通貨基金(IMF)救済金融を受けた悪夢を思い出した。
あらゆる手段を使ったが、効果はなかった。韓銀の海外借入だけがふさがったのではなく、外国の金融機関も同じだった。わらをもつかむ心情で国会の同意を受けて海外借入に対する国家支払い保証まで約束した。それでも信用収縮は解決しなかった。こうした状況で意外なところから突破口が開かれた。米国が2008年10月30日に韓国と300億ドル規模の通貨スワップ協定を締結したのだ。これを受け、12月2日に韓銀に競争入札方式のスワップを通じて外貨が供給された。
すぐに外貨借入も再開され、為替レートもすぐに落ち着いた。韓国がグローバル金融危機の衝撃から抜け出す瞬間だった。結果的に韓米通貨スワップは韓国金融市場の安定に大きな役割をし、2回の延長を経て2010年10月に終了した。そして新型コロナ拡大でグローバル景気沈滞が始まると、2019年10月に再開され、また2度の延長の末、昨年末に終了した。
最近、米連邦準備制度理事会(FRB)は40年ぶりの物価高を抑えるために量的緩和を終了し、量的緊縮をしながらビッグステップやジャイアントステップなどで金利を次々と引き上げている。これを受けてドル高が進み、他の主要国通貨の価値は大幅に落ちた。韓国ウォンも年初は1ドル=1100ウォン台だったが、最近は1ドル=1400ウォン水準になっている。
こうした中、2008年のグローバル金融危機当時を思い出しながら、韓米通貨スワップをなぜ終了させたのかと当局を恨む声も聞こえる。今からでも韓米通貨スワップ協議を始めるべき、韓米首脳会談の議題にすべきという主張も出てきた。
通貨スワップは、米国の域外ドル市場で形成された流動性低下が米国の国内金融市場にも影響を及ぼし、米国の企業と家計に信用収縮として広がるのを防ぐための流動性供給装置として活用される。通貨スワップ対象国もグローバルドル市場に占める比率、米国経済に対する重要度、中央銀行の独立など健全な政策運用の有無などを幅広く問いただしてFRBが決める。
こうした基準に基づき2008年10月、FRBはメキシコ・ブラジル・シンガポール・韓国の4カ国の中央銀行と通貨スワップ協定を締結した。当時FRBはこれらの国が相当なレベルの経済規模を持ち、低物価と均衡的な経常収支で健全な政策を推進中であり、これら市場で流動性悪化が深刻になれば米国に移転することが懸念されるという点を理由に挙げた。
今はFRBが物価を抑えるためにあふれたドル流動性をさらに強く回収すべき立場であり、これに逆行する通貨スワップをする状況ではない。多くの主要国の中央銀行が一斉に金利を引き上げていて、米ドルを除いた他国の通貨価値が落ちている状況で、韓国だけが危機状況に直面しているのではない。そして金融機関や企業の海外借入がふさがっているわけでもない。
こうした状況で韓国がいま通貨スワップの必要性に言及すれば、外国ではむしろ韓国金融市場を不安視する可能性がある。最近、韓銀の李昌ヨン(イ・チャンヨン)総裁はFRBと緊密に情報交換をしていて、FRBが必要だと判断すれば適切なタイミングに決めるとし、通貨スワップ議論に一線を画した。
今は外貨保有高も十分であり、資本流出の兆候も表れていない。海外投資資産も多い状況で我々が通貨スワップの話をする必要はないということだ。今は市場の安定のために自信が必要な時だ。
チョ・ヨンジェ/法務法人クァンジャン顧問/元韓国金融研修院長
◇外部執筆者のコラムは中央日報の編集方針と異なる場合があります。
通貨当局は緊張した。銀行が海外借入金の満期を迎えても延長したり借り換えができなければ、国家が保有外貨を崩さなければいけない。
企業に貸した外貨を回収して返すのは実物経済を萎縮させたりする。1997年の通貨危機当時、海外借入金の満期延長が拒否され、保有外貨が底をつき、国際通貨基金(IMF)救済金融を受けた悪夢を思い出した。
あらゆる手段を使ったが、効果はなかった。韓銀の海外借入だけがふさがったのではなく、外国の金融機関も同じだった。わらをもつかむ心情で国会の同意を受けて海外借入に対する国家支払い保証まで約束した。それでも信用収縮は解決しなかった。こうした状況で意外なところから突破口が開かれた。米国が2008年10月30日に韓国と300億ドル規模の通貨スワップ協定を締結したのだ。これを受け、12月2日に韓銀に競争入札方式のスワップを通じて外貨が供給された。
すぐに外貨借入も再開され、為替レートもすぐに落ち着いた。韓国がグローバル金融危機の衝撃から抜け出す瞬間だった。結果的に韓米通貨スワップは韓国金融市場の安定に大きな役割をし、2回の延長を経て2010年10月に終了した。そして新型コロナ拡大でグローバル景気沈滞が始まると、2019年10月に再開され、また2度の延長の末、昨年末に終了した。
最近、米連邦準備制度理事会(FRB)は40年ぶりの物価高を抑えるために量的緩和を終了し、量的緊縮をしながらビッグステップやジャイアントステップなどで金利を次々と引き上げている。これを受けてドル高が進み、他の主要国通貨の価値は大幅に落ちた。韓国ウォンも年初は1ドル=1100ウォン台だったが、最近は1ドル=1400ウォン水準になっている。
こうした中、2008年のグローバル金融危機当時を思い出しながら、韓米通貨スワップをなぜ終了させたのかと当局を恨む声も聞こえる。今からでも韓米通貨スワップ協議を始めるべき、韓米首脳会談の議題にすべきという主張も出てきた。
通貨スワップは、米国の域外ドル市場で形成された流動性低下が米国の国内金融市場にも影響を及ぼし、米国の企業と家計に信用収縮として広がるのを防ぐための流動性供給装置として活用される。通貨スワップ対象国もグローバルドル市場に占める比率、米国経済に対する重要度、中央銀行の独立など健全な政策運用の有無などを幅広く問いただしてFRBが決める。
こうした基準に基づき2008年10月、FRBはメキシコ・ブラジル・シンガポール・韓国の4カ国の中央銀行と通貨スワップ協定を締結した。当時FRBはこれらの国が相当なレベルの経済規模を持ち、低物価と均衡的な経常収支で健全な政策を推進中であり、これら市場で流動性悪化が深刻になれば米国に移転することが懸念されるという点を理由に挙げた。
今はFRBが物価を抑えるためにあふれたドル流動性をさらに強く回収すべき立場であり、これに逆行する通貨スワップをする状況ではない。多くの主要国の中央銀行が一斉に金利を引き上げていて、米ドルを除いた他国の通貨価値が落ちている状況で、韓国だけが危機状況に直面しているのではない。そして金融機関や企業の海外借入がふさがっているわけでもない。
こうした状況で韓国がいま通貨スワップの必要性に言及すれば、外国ではむしろ韓国金融市場を不安視する可能性がある。最近、韓銀の李昌ヨン(イ・チャンヨン)総裁はFRBと緊密に情報交換をしていて、FRBが必要だと判断すれば適切なタイミングに決めるとし、通貨スワップ議論に一線を画した。
今は外貨保有高も十分であり、資本流出の兆候も表れていない。海外投資資産も多い状況で我々が通貨スワップの話をする必要はないということだ。今は市場の安定のために自信が必要な時だ。
チョ・ヨンジェ/法務法人クァンジャン顧問/元韓国金融研修院長
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