秋は映画のイベントが多い。おかげでビザなし入国が可能になった日本からも、多くの映画関係者が韓国を訪れている。私が最近参加したイベントの一つは坡州(パジュ)で開かれた「出版都市映画交流フォーラム」だ。2日にわたる行事で、初日は「新型コロナ前後の韓国・日本・中国の映画動向」というテーマで韓中日各国の専門家の発表があり、2日目は日本映画と中国映画を上映した。
日本からは李鳳宇(リ・ボンウ)代表が参加した。李代表は現在、映画会社「スモモ」の代表だが、以前は映画会社「シネカノン」代表として知られていた映画プロデューサーだ。京都生まれの在日コリアンで、私が個人的に最も影響を受けた映画人でもある。韓国映画『風の丘を超えて/西便制(ソピョンジェ)』(1993)、『シュリ』(1999)、『JSA』(2000)を日本で配給し、日本国内の韓流ブームを作り、プロデューサーとしては在日コリアンを描いた名作『月はどっちに出ている』(1993)、『パッチギ!』(2005)を制作し、日本国内で多くの映画賞を受賞した。
今回の坡州のフォーラムで上映された日本映画は是枝裕和監督の『歩いても 歩いても』(2008)だった。是枝監督は2018年の『万引き家族』でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞し、今年は韓国映画『ベイビー・ブローカー』を手掛けており、韓国で最も有名な日本の監督だ。
◆「世界ジェンダーギャップ」韓国99位、日本116位
私は李鳳宇代表が是枝監督の作品も制作に携わったことをしばらく忘れていた。『歩いても 歩いても』は是枝監督がある程度有名になってから作った作品だが、是枝監督の長編デビュー作『幻の光』(1995)と、主演俳優の柳楽優弥がカンヌ国際映画祭主演男優賞を歴代最年少で受賞して是枝監督が世界中で知られるきっかけとなった作品『誰も知らない』(2004)の配給は李鳳宇代表が担った。いわば、是枝監督の才能を誰よりもいち早く知っていた1人だ。
是枝監督の作品の中で一番好きな作品として『歩いても 歩いても』を選ぶ人が多い。私もそうだ。韓国の映画ファンの中にもこの作品が好きだという人が多いが、おそらくその理由の1つは映画の中で流れる歌『ブルー・ライト・ヨコハマ』のためだと思う。映画のタイトル『歩いても 歩いても』も『ブルー・ライト・ヨコハマ』の歌詞の一部だ。韓国人が好きな日本の歌ベスト3に入るのではないかと思う。
『歩いても 歩いても』上映後はミョンフィルムのイ・ウン代表の司会で、李鳳宇代表が質問に答える懇談会が続いた。私もコーディネーターとして参加したが、印象に残った質問がある。イ・ウン代表の「日本では映画に出てくるように本当に座るときに正座しますか」という質問だ。韓国人にとっては、非常に居心地悪く見えると思う。実際、日本では床に座る時、男性はあぐらをかくこともあるが、女性は正座するのが普通だ。
映画では嫁が舅・姑の前で正座していたが、しばし一人で部屋にいる時に足を伸ばして休む姿が出てくる。私も「舅・姑の前ではあぐらをかいて楽に座れない」と韓国の観客に話したが、心の中では「なぜなのだろう」と思った。おそらく日本の伝統衣装の着物の構造上、あぐらをかくことができなかったからだろうが、着物でない普段着でも、なぜ今まで女性は楽に座れないのか疑問に思った。そして、多くの日本人女性が自分でも知らないうちに「女性はこうあるべきだ」という枠に囚われて生きてきたことに気づいた。
このように、他国との文化交流は自国の文化について新たに発見するきっかけにもなる。日本では数年前から韓国文学が人気だが、そのきっかけとなった作品はチョ・ナムジュ作家の小説『82年生まれ、キム・ジヨン』だ。この小説を読んで男女格差や女性が生きていく上でぶつかる問題について自覚したという日本人女性が少なくない。しかし、2018年に韓国で#MeToo(ハッシュタグミートゥー)運動が広がった時、日本は静かだった。何人かの被害者が声を上げたが、運動と言えるほど広がってはいない。このような日本を見守った韓国人から「なぜ日本では『82年生まれ、キム・ジヨン』は売れるのに#MeTooについては静かなのか」と何度も質問された。私は日本の女性が我慢しているだけで、被害は多いと思った。
今年、世界経済フォーラムが発表した「世界ジェンダー格差報告書」によると、世界146カ国中、日本は116位、韓国は99位だった。この報告書は経済・政治・教育・健康の4分野に関する統計データとして算出され、1位に近いほど男女格差が少ない。日本の場合、経済・政治分野が特に格差が大きく、国会議員や管理職に女性が少ないと指摘されている。
【コラム】日本映画界も「#MeToo」ブーム、韓国女性の運動に刺激を受けたか(2)
日本からは李鳳宇(リ・ボンウ)代表が参加した。李代表は現在、映画会社「スモモ」の代表だが、以前は映画会社「シネカノン」代表として知られていた映画プロデューサーだ。京都生まれの在日コリアンで、私が個人的に最も影響を受けた映画人でもある。韓国映画『風の丘を超えて/西便制(ソピョンジェ)』(1993)、『シュリ』(1999)、『JSA』(2000)を日本で配給し、日本国内の韓流ブームを作り、プロデューサーとしては在日コリアンを描いた名作『月はどっちに出ている』(1993)、『パッチギ!』(2005)を制作し、日本国内で多くの映画賞を受賞した。
今回の坡州のフォーラムで上映された日本映画は是枝裕和監督の『歩いても 歩いても』(2008)だった。是枝監督は2018年の『万引き家族』でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞し、今年は韓国映画『ベイビー・ブローカー』を手掛けており、韓国で最も有名な日本の監督だ。
◆「世界ジェンダーギャップ」韓国99位、日本116位
私は李鳳宇代表が是枝監督の作品も制作に携わったことをしばらく忘れていた。『歩いても 歩いても』は是枝監督がある程度有名になってから作った作品だが、是枝監督の長編デビュー作『幻の光』(1995)と、主演俳優の柳楽優弥がカンヌ国際映画祭主演男優賞を歴代最年少で受賞して是枝監督が世界中で知られるきっかけとなった作品『誰も知らない』(2004)の配給は李鳳宇代表が担った。いわば、是枝監督の才能を誰よりもいち早く知っていた1人だ。
是枝監督の作品の中で一番好きな作品として『歩いても 歩いても』を選ぶ人が多い。私もそうだ。韓国の映画ファンの中にもこの作品が好きだという人が多いが、おそらくその理由の1つは映画の中で流れる歌『ブルー・ライト・ヨコハマ』のためだと思う。映画のタイトル『歩いても 歩いても』も『ブルー・ライト・ヨコハマ』の歌詞の一部だ。韓国人が好きな日本の歌ベスト3に入るのではないかと思う。
『歩いても 歩いても』上映後はミョンフィルムのイ・ウン代表の司会で、李鳳宇代表が質問に答える懇談会が続いた。私もコーディネーターとして参加したが、印象に残った質問がある。イ・ウン代表の「日本では映画に出てくるように本当に座るときに正座しますか」という質問だ。韓国人にとっては、非常に居心地悪く見えると思う。実際、日本では床に座る時、男性はあぐらをかくこともあるが、女性は正座するのが普通だ。
映画では嫁が舅・姑の前で正座していたが、しばし一人で部屋にいる時に足を伸ばして休む姿が出てくる。私も「舅・姑の前ではあぐらをかいて楽に座れない」と韓国の観客に話したが、心の中では「なぜなのだろう」と思った。おそらく日本の伝統衣装の着物の構造上、あぐらをかくことができなかったからだろうが、着物でない普段着でも、なぜ今まで女性は楽に座れないのか疑問に思った。そして、多くの日本人女性が自分でも知らないうちに「女性はこうあるべきだ」という枠に囚われて生きてきたことに気づいた。
このように、他国との文化交流は自国の文化について新たに発見するきっかけにもなる。日本では数年前から韓国文学が人気だが、そのきっかけとなった作品はチョ・ナムジュ作家の小説『82年生まれ、キム・ジヨン』だ。この小説を読んで男女格差や女性が生きていく上でぶつかる問題について自覚したという日本人女性が少なくない。しかし、2018年に韓国で#MeToo(ハッシュタグミートゥー)運動が広がった時、日本は静かだった。何人かの被害者が声を上げたが、運動と言えるほど広がってはいない。このような日本を見守った韓国人から「なぜ日本では『82年生まれ、キム・ジヨン』は売れるのに#MeTooについては静かなのか」と何度も質問された。私は日本の女性が我慢しているだけで、被害は多いと思った。
今年、世界経済フォーラムが発表した「世界ジェンダー格差報告書」によると、世界146カ国中、日本は116位、韓国は99位だった。この報告書は経済・政治・教育・健康の4分野に関する統計データとして算出され、1位に近いほど男女格差が少ない。日本の場合、経済・政治分野が特に格差が大きく、国会議員や管理職に女性が少ないと指摘されている。
【コラム】日本映画界も「#MeToo」ブーム、韓国女性の運動に刺激を受けたか(2)
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