パク・ヨンホの韓半島平和ウォッチ
尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権以前に保守政権と進歩政権がそれぞれ3回執権した。金泳三(キム・ヨンサム)政権は南北基本合意書の履行・実践、金大中(キム・デジュン)政権は平和・和解・協力実現による南北関係改善、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は平和増進と共同繁栄をそれぞれ提示した。李明博(イ・ミョンバク)政権は共生と共栄の南北関係発展、朴槿恵(パク・クネ)政権は南北関係の発展、韓半島(朝鮮半島)の平和定着、統一基盤の構築を掲げた。
◆首脳会談という巨大なショー
直前の文在寅(ムン・ジェイン)政権は北朝鮮核問題の解決と恒久的な平和定着、持続可能な南北関係発展、韓半島新経済共同体の実現を提示した。しかし進展したものはなく首脳会談の巨大なショーの痕跡だけが残った。それ以前の政府もそれほど変わらない。歴代政権はすべて任期末に成果を評価しながら自画自賛し、目標達成の失敗を北朝鮮にせいにした。
実際、進歩政権も保守政権も対北朝鮮政策目標は大きく変わらなかった。韓半島(北朝鮮)非核化、和解・協力、信頼構築、平和体制構築、経済協力、人道的支援、統一基盤造成など課題はほとんど似ている。ただ、保守政権が北朝鮮の変化の牽引を重視したのに対し、進歩政権はそうではなかった。尹錫悦政権は南北関係正常化と平和の韓半島を目標に設定し、北朝鮮の非核化、平和体制の構築、統一の準備、北朝鮮の変化誘導、人道的問題の解決などを課題に提示した。そして8・15をきっかけに北朝鮮を非核化に導くための「大胆な構想」を提案した。
しかし金正恩(キム・ジョンウン)政権は「空しい夢」として拒否した。金与正(キム・ヨジョン)党副部長は「核は国体」とし、南北が「互いに意識せず過ごすことを望む」と内心を表した。続いて金正恩委員長は9日、「大胆な政治的決断」として、核武力政策を法制化し、北朝鮮の核保有国の地位は不可逆的だと主張した。
◆北朝鮮に振り回される交流と協力
韓国社会で統一に対する関心が弱まったという見方があるが、これは自然な現象とも考えられる。ドイツ統一の2年前、西ドイツのある世論調査で統一を最も重要な問題と考える回答者は0.5%未満だった。ところが東ドイツが民主化し、短期間に統一することができた。南北関係が非正常的な状態で平和統一の実現は考えにくい。本当の自由民主的秩序での統一を望むのなら、その間の対北朝鮮・統一政策の誤った神話が先に消えなければいけない。
1つ目は、包容政策が北朝鮮の変化を導くことができるという神話だ。包容政策は金大中政権の「太陽政策」で本格化した。北朝鮮が厳しい状況であるため人道的・経済的に助けて交流・協力を徐々に拡大すれば、北朝鮮が変化して南北関係が発展するだろうという発想だった。北朝鮮が核を開発する状況でもこのような基調が堅持された。保守政権も程度の差はあったが交流・協力を持続しようと努力した。しかし多くの交流・協力は相互的・互恵的ではなく北朝鮮に都合のよいものだった。大規模な食料借款などを提供したが、北朝鮮は返していない。金剛山(クムガンサン)観光も南北住民がお互いを理解する日常の観光ではなかった。
◆国家・政権が一体の北朝鮮体制
包容政策は欧州共同体を理論化した機能主義接近を模倣したが、関与(engagement)政策の誤った解釈・適用だった。特に北朝鮮体制の属性、政治文化とはかけ離れている。関与は相手の行動の変化を目標に協力・競争・対決を組み合わせて執行する戦略だ。戦略と方法・手段がうまく調整されなければいけない。原則は信頼するものの確認することだ。ところが包容政策は北朝鮮を無条件に包容するというものに変質し、それ自体が目的になった。また、我々が「見たい北朝鮮」の認識の枠を抜け出せなかった。結果は核保有国の北朝鮮だ。北朝鮮の変化を導こうとするなら、国連加盟国として北朝鮮に対してそれにふさわしい行動するよう要求するべきだ。
2つ目、独裁者の事故、経済衰退などで北朝鮮体制が崩れるという「北朝鮮崩壊論」神話だ。金日成(キム・イルソン)主席、金正日(キム・ジョンイル)総書記が死去しても、北朝鮮体制と国家は持続した。過去30年の厳しい経済状況の中でも北朝鮮体制は健在だ。また三重苦(新型コロナ、自然災害、経済制裁)のような要因を挙げながら北朝鮮崩壊論が提起された。
北朝鮮の独裁者の死去や経済問題は体制と国家・政権に危機を招くかもしれないが、簡単に崩壊にはつながらない。現体制で軍部クーデターや大規模な住民抵抗の可能性はほとんどない。北朝鮮ほど体制と国家・政権が強く根付いた権威主義体制は見られない。もちろん北朝鮮の情勢変動と北朝鮮による韓半島危機に常に徹底的な対応体制を整えておくことは必要だ。しかし南北関係の発展と北朝鮮の変化のための政策は、北朝鮮体制と政権の本質に向かう冷厳な接近から出てこなければいけない。
3つ目、北朝鮮は同じ民族であるため民族同質性の回復のための政策を推進すべきという神話だ。何が回復すべき民族同質性なのか。同じ血統、共有する言語と文化、伝統と慣習なのか。それとも理念と体制、思考体系と生活様式なのか。分断の長期化で理念と体制の差による思考体系と生活様式には変化が生じた。
【韓半島平和ウォッチ】対北政策めぐる神話を捨ててこそ自由民主的統一も可能(2)
この記事を読んで…