世界経済の浮沈がドル高に反映されている。ドル相場が揺れ動くこと自体は新しい現象ではない。世界経済が急変する時はいつもドル需要が急増した。安全資産への退避現象だ。しかし今回は少し様相が異なる。富裕国の通貨、ユーロと円さえドルの前では秋風落葉だ。最近のドル高の現状の本質は何だろうか。
ノーベル経済学賞を受賞したニューヨーク市立大学のポール・クルーグマン教授はニューヨーク・タイムズで「ユーロ安は活力を失った欧州経済を反映している」と指摘した。欧州経済はいま最悪の危機に直面している。薄氷を歩く局面だ。コロナ禍の直撃弾を受け一昨年から成長率が急落した。今年に入りやや回復しそうだったが、ロシアのウクライナ侵攻の余波で再びぐらついている。そのバロメーターであり外部に現れた症状がドルに対するユーロ安だ。
ユーロはドルより強い傾向を見せていた。かつては1ユーロ=1.6ドルに達したりもしたが、7月初めからユーロ・ドル相場のマジノ線とされた1対1が崩れ、1ユーロ=0.99ドルまで下落した。フィナンシャル・タイムズは「全く想像できないことが起きた」と伝えた。1999年1月1日にユーロ圏の単一通貨としてユーロが始まった初日、ユーロ相場は1ユーロ=1.17ドルだった。その後ユーロは2008年のリーマンショックをはじめとする金融危機に陥ると1.6ドルに迫るほどドルに対して強さを見せた。だがユーロは昨年から力を取り戻せずにいる。表向きの契機はロシアのウクライナ侵攻だ。ここに米国の急激な利上げが決定打になったとみられる。
◇独裁国家に依存した欧州、競争力失う
この余波で為替相場が一時的にゆがむことがある。だがクルーグマン教授は「今回は別の理由がある」としながら興味深い分析を提示した。安易に独裁国に依存した経済成長モデルが限界に直面したというのが彼の分析だ。すなわちエネルギーはロシアに、輸出は中国に依存してきた結果、欧州が袋小路に入ったという意味だ。欧州はこの30年に脱原発の風が吹きロシアの化石燃料輸入を大きく膨らませた。しかしウクライナ侵攻を契機にロシアがガス管を締めるとエネルギー危機に直面した。
世界の工場だった中国経済の成長率が鈍化したことも欧州経済を急速に冷え込ませている。ドイツの立場では中国は金の卵を産む巨大な市場だった。自動車をはじめとして工業製品輸出のドル箱だった。16年間執権したメルケル首相時代に中国と蜜月を楽しんだ理由もここにあった。だが中国経済が鈍化し欧州の主要国は巨大な市場を徐々に失っている。クルーグマン教授はこうした理由を挙げて今回ユーロが弱くなっているのは米国の利上げにともなう一時的為替相場変動のためだけではないと診断している。
その理由を提示するためにクルーグマン教授はドイツ出身の米国経済学者であるルディガー・ドーンブッシュ(1942~2002年)MIT教授の著名な論文『為替相場に対する期待と為替相場力学』を召還した。この論文は為替相場理論のバイブルと呼ばれるほど経済学者に大きな影響を及ぼした。クルーグマン教授はこの論文が国際マクロ経済学の決定版だと称賛しているほどだ。ドーンブッシュ教授がどうして称賛されるのか。ドーンブッシュ教授は「為替相場は結局ファンダメンタルズによって決まる」と洞察した。為替相場が一時的には揺れてもすべての通貨は自国の経済力だけに価値を認められるという意味だ。結局為替相場は各国が作り出す生産品の競争力が世界市場で評価される水準で決まるという話だ。
◇韓国は原子力・半導体超格差必要
こうした点で欧州経済の未来は明るくない。最近のユーロ安は投資家がこうした状況を見抜いた結果とみることができる。クルーグマン教授は、欧州の主要国がこうした状況に直面したのは、結局いつ180度変わるかもわからない独裁者に依存した高い代償だと指摘した。クルーグマン教授の分析が正しければ韓国にも示唆するところが大きい。石油の一滴も出ない韓国に急激な脱原発は自害と変わらない政策だ。中国に対する経済依存度を減らすのは足下の課題だ。半導体超格差技術維持は言うまでもない。
【コラム】当分はドル高の流れ折る通貨はどこにもない(2)
ノーベル経済学賞を受賞したニューヨーク市立大学のポール・クルーグマン教授はニューヨーク・タイムズで「ユーロ安は活力を失った欧州経済を反映している」と指摘した。欧州経済はいま最悪の危機に直面している。薄氷を歩く局面だ。コロナ禍の直撃弾を受け一昨年から成長率が急落した。今年に入りやや回復しそうだったが、ロシアのウクライナ侵攻の余波で再びぐらついている。そのバロメーターであり外部に現れた症状がドルに対するユーロ安だ。
ユーロはドルより強い傾向を見せていた。かつては1ユーロ=1.6ドルに達したりもしたが、7月初めからユーロ・ドル相場のマジノ線とされた1対1が崩れ、1ユーロ=0.99ドルまで下落した。フィナンシャル・タイムズは「全く想像できないことが起きた」と伝えた。1999年1月1日にユーロ圏の単一通貨としてユーロが始まった初日、ユーロ相場は1ユーロ=1.17ドルだった。その後ユーロは2008年のリーマンショックをはじめとする金融危機に陥ると1.6ドルに迫るほどドルに対して強さを見せた。だがユーロは昨年から力を取り戻せずにいる。表向きの契機はロシアのウクライナ侵攻だ。ここに米国の急激な利上げが決定打になったとみられる。
◇独裁国家に依存した欧州、競争力失う
この余波で為替相場が一時的にゆがむことがある。だがクルーグマン教授は「今回は別の理由がある」としながら興味深い分析を提示した。安易に独裁国に依存した経済成長モデルが限界に直面したというのが彼の分析だ。すなわちエネルギーはロシアに、輸出は中国に依存してきた結果、欧州が袋小路に入ったという意味だ。欧州はこの30年に脱原発の風が吹きロシアの化石燃料輸入を大きく膨らませた。しかしウクライナ侵攻を契機にロシアがガス管を締めるとエネルギー危機に直面した。
世界の工場だった中国経済の成長率が鈍化したことも欧州経済を急速に冷え込ませている。ドイツの立場では中国は金の卵を産む巨大な市場だった。自動車をはじめとして工業製品輸出のドル箱だった。16年間執権したメルケル首相時代に中国と蜜月を楽しんだ理由もここにあった。だが中国経済が鈍化し欧州の主要国は巨大な市場を徐々に失っている。クルーグマン教授はこうした理由を挙げて今回ユーロが弱くなっているのは米国の利上げにともなう一時的為替相場変動のためだけではないと診断している。
その理由を提示するためにクルーグマン教授はドイツ出身の米国経済学者であるルディガー・ドーンブッシュ(1942~2002年)MIT教授の著名な論文『為替相場に対する期待と為替相場力学』を召還した。この論文は為替相場理論のバイブルと呼ばれるほど経済学者に大きな影響を及ぼした。クルーグマン教授はこの論文が国際マクロ経済学の決定版だと称賛しているほどだ。ドーンブッシュ教授がどうして称賛されるのか。ドーンブッシュ教授は「為替相場は結局ファンダメンタルズによって決まる」と洞察した。為替相場が一時的には揺れてもすべての通貨は自国の経済力だけに価値を認められるという意味だ。結局為替相場は各国が作り出す生産品の競争力が世界市場で評価される水準で決まるという話だ。
◇韓国は原子力・半導体超格差必要
こうした点で欧州経済の未来は明るくない。最近のユーロ安は投資家がこうした状況を見抜いた結果とみることができる。クルーグマン教授は、欧州の主要国がこうした状況に直面したのは、結局いつ180度変わるかもわからない独裁者に依存した高い代償だと指摘した。クルーグマン教授の分析が正しければ韓国にも示唆するところが大きい。石油の一滴も出ない韓国に急激な脱原発は自害と変わらない政策だ。中国に対する経済依存度を減らすのは足下の課題だ。半導体超格差技術維持は言うまでもない。
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