「プーチンの頭脳」として知られるアレクサンドルドゥーギン氏の娘・ダリヤ氏（３０）暗殺事件に関連し、２２日（現地時間）ロシア連邦保安庁（ＦＳＢ）が事件の容疑者としてウクライナ軍部隊出身のナタリア・ウォウク氏（４３）という女性を名指した。２０日午後、モスクワ郊外の高速道路で車両爆発が発生してダリヤ氏が死亡してから２日ぶりだ。外信は、ＦＳＢが捜査着手翌日に容疑者の身元を公開した点とウクライナ秘密要員がロシアの国境をそれほど簡単に出入りする可能性が小さいという点から専門家は同日発表を信じられないと伝えた。

テレグラフ、ニューヨークタイムズ（ＮＹＴ）などによると、ＦＳＢは今回の車両爆弾事件を「ウクライナの情報機関が準備して実行した」と主張した。ＦＳＢは容疑者のウォウク氏がウクライナのアゾフ連隊出身で、事件直後にエストニアに向かったと明らかにしたとガーディアン紙が報じた。ロシアがウクライナ内の極右主義団体とされるアゾフ連隊は、２０１４年ロシアのクリミア半島強制合併の際、民兵隊から出発して現在正規軍として編成されている。

ＦＳＢの捜査発表にロシアでは極右主義者による報復の声が高まっている。ロシア国営ＲＴのマルガリータ・シモヤン編集長はツイッターに「殺人者がエストニアにいる」とし「（ロシア情報当局が）チームをエストニアに送る可能性もある」と述べた。ロシアのウラジーミル・ザバロフ重鎮議員は、エストニアがウォウク氏を渡さない場合、「エストニアに強硬な措置を取る必要がある」とし、葛藤が拡大する可能性を示唆した。


一方、ウクライナ当局は同日、「ダリヤ氏がそれほど（暗殺しなければならないほど）重要な人物ではない」とし、同事件に介入していないと反論した。アゾフ連隊も「ウォウク氏とはいかなる関連性もない」とし「（ロシアのこのような主張は）アゾフ連隊員の裁判を控えて世論を助長しようとするトリックだ」と対抗した　。また、クレムリン宮殿が２４日ウクライナ独立記念日に合わせて「ショー」を演出する口実を探していると非難した。

これを裏付ける情況も捉えられている。テレグラフによると、英国に本社を置く探査報道メディア「ベリングキャット」の首席ロシア調査員クリスト・グロゼフ氏は４月、ロシアのハッカーたちがナタリア・ウォウク氏がウクライナ軍所属という点を突き止め、「個人情報公開」サイトにこれを掲載したと伝えた。　また、すでに身元が露出したウォウク氏が「そのように簡単に露出できる痕跡を残してロシアに入っただろうか」と疑問を提起した。

これに先立ち、ウクライナのポドリャク大統領室顧問もＳＮＳに「ロシアの主張は虚構の世界にある話」とし「ロシア内部の権力争いで起きたこと」と述べた。

一部では、今回の事故がロシア内部のレジスタンスの仕業だという主張も出ている。一時、ロシアのドゥーマ（下院）議員としてウクライナに亡命した反体制政治家イリヤ・ポノマリョフ氏は２１日、車両爆発の背後が反クレムリン勢力「国民共和国軍（ＮＲＡ）」とし、「ロシア内部に蔓延しているプーチン主義に対する抵抗を知らせる事件」と述べた。しかし、ＮＲＡ関連の証拠は提示しなかったとテレグラフは伝えた。

ＮＹＴは同日、ＦＳＢの迅速な発表と複数に対する熱い要求は、ロシア内のタカ派の声が拡大していることを示唆すると報じた。これはウクライナ戦争６カ月目になり、国内政治を安定的に統治して戦争を遂行することを望むプーチン大統領に負担になりかねないと付け加えた。プーチン大統領は同日死亡したダリヤ氏に「勇猛勲章」を授与すると明らかにした。

ネッド・プライス米国務省報道官は同日のブリーフィングで、事件の背後がウクライナというＦＳＢの主張に対して「ロシアがこれを調査するということに疑いの余地はない。ロシアが特定結論を提示する」とし「ここで私が言えるのはウクライナがいかなる介入も否認したということ」と話した。同日、国連も異例的に徹底した捜査を促した。

ダリヤ氏は父親の思想を受け継いで反自由主義的「ロシア帝国」の拡張を主張した政治哲学者で、マスメディアを通じてロシアのウクライナ侵攻を支持したりもした。このため、西側の制裁リストに含まれた。