中国は韓国・米国・日本・台湾が参加するチップ(Chip)4同盟に強く反対している。中国外務省・商務省はチップ4が自由貿易に合わず、半導体サプライチェーンを混乱させると批判した。
中国の反発と抗議にもかかわらず米国の技術と装備に依存する韓国はチップ4に加入するしかない。参加しない場合、米国は中国に加えた多様な制裁を韓国企業にも適用するだろう。先月末に米議会を通過した半導体関連法のガードレール条項も問題だ。この条項によると、米国政府から補助金を受けた企業は中国をはじめとする「憂慮国家」に今後10年間、先端半導体を生産する工場を新設することができない。1990年代の日米半導体協定で没落した日本半導体産業の歴史的教訓をみると、チップ4加入は選択でなく必須といえる。
とはいえ、韓国は中国の反対を完全に無視できる状況でない。韓国の半導体輸出の約60%が中国に向かう。もちろん韓国企業が輸出した半導体のすべてが中国国内で消費されるわけではない。中国が輸入した半導体の半分ほどは完成品になって海外に再輸出される。米国半導体協会によると、半導体の最終消費地を基準に米国と中国はほぼ似た水準だが、2025年前後に中国が米国を上回ると予想される。この場合、韓国企業の対中輸出依存度はさらに強まる。韓国の貿易黒字の大半は対中貿易で生じる。1993年から2021年まで輸出額全体で中国の比率は22.5%だったが、貿易黒字では86.0%にのぼった。
韓国の最大輸出品の半導体は対中貿易黒字の最大の源泉だ。したがって半導体の輸出が減少すれば、対中貿易黒字はもちろん、全体の貿易黒字が減ることになる。5月と6月に28年ぶりに月間対中貿易赤字が発生した。今年上半期に韓国株式市場は20%以上も下落し、1ドル=1300ウォンまでウォン安ドル高が進み、外貨保有額も3月から減少する状況で、貿易赤字の長期化は国家信用度にマイナスの影響を及ぼしかねない。
中国に進出した韓国企業の生産施設とサプライチェーンも考慮する必要がある。サムスン電子西安工場はNAND型フラッシュメモリー製品の約40%、SKハイニックス無錫工場はDRAM製品の約50%を生産する。また個別素子半導体部品、メモリー半導体、金属素材およびダイオードの対中輸入依存度が40%を超えている。当分は半導体が不足するため、中国が韓国企業を直ちに牽制するのは難しいだろう。しかし今年上半期の主要半導体企業の株価が供給過剰に対する懸念から年初比で20%以上も下落したのをみると、市場の主導権は生産者から消費者に移っている。
チップ4が半導体貿易に及ぼす影響についても詳細に考慮する必要がある。2018年に米国が中国に報復関税を賦課して先端製品の輸出を統制したにもかかわらず、米国はもちろん日本・台湾の対中半導体輸出は増加した。両岸関係の悪化で軍事的緊張が高まったが、台湾の対中半導体輸出は昨年、過去最高となった。こうした傾向をみると、米国の対中制裁の効果は当分は大きくないと推定される。
最後にチップ4が失敗する場合にも備える必要がある。チップ4が成功するためには韓国・米国・日本・台湾の主要半導体企業が緊密に協力しなければならない。しかし世界市場で激しく競争するサムスン電子・TSMC・インテルが自社の収益をあきらめて協力する可能性は高くない。昨年9月に米商務省が売上高・在庫・顧客リストなど営業秘密を提出するよう要求した当時、多くの企業が締め切り期限の直前まで提出しなかった。また、中国に生産施設を保有するインテル・サムスン・TSMCともに中国への投資を制限するガードレール条項に否定的な立場を表明した。
半導体貿易とサプライチェーンで韓国は米国と根本的に異なる利害関係を持つ。米国は国内での半導体生産を増やすために海外企業を誘致する必要がある。逆に韓国は国内で生産した先端半導体を中国など海外に輸出する。チップ4加入交渉をする際、韓国政府はサムスン電子・SKハイニックスが中国で被害を受けないよう米国政府を説得することが求められる。
イ・ワンフィ亜洲大政治外交学科教授
◇外部執筆者のコラムは中央日報の編集方針と異なる場合があります。
中国の反発と抗議にもかかわらず米国の技術と装備に依存する韓国はチップ4に加入するしかない。参加しない場合、米国は中国に加えた多様な制裁を韓国企業にも適用するだろう。先月末に米議会を通過した半導体関連法のガードレール条項も問題だ。この条項によると、米国政府から補助金を受けた企業は中国をはじめとする「憂慮国家」に今後10年間、先端半導体を生産する工場を新設することができない。1990年代の日米半導体協定で没落した日本半導体産業の歴史的教訓をみると、チップ4加入は選択でなく必須といえる。
とはいえ、韓国は中国の反対を完全に無視できる状況でない。韓国の半導体輸出の約60%が中国に向かう。もちろん韓国企業が輸出した半導体のすべてが中国国内で消費されるわけではない。中国が輸入した半導体の半分ほどは完成品になって海外に再輸出される。米国半導体協会によると、半導体の最終消費地を基準に米国と中国はほぼ似た水準だが、2025年前後に中国が米国を上回ると予想される。この場合、韓国企業の対中輸出依存度はさらに強まる。韓国の貿易黒字の大半は対中貿易で生じる。1993年から2021年まで輸出額全体で中国の比率は22.5%だったが、貿易黒字では86.0%にのぼった。
韓国の最大輸出品の半導体は対中貿易黒字の最大の源泉だ。したがって半導体の輸出が減少すれば、対中貿易黒字はもちろん、全体の貿易黒字が減ることになる。5月と6月に28年ぶりに月間対中貿易赤字が発生した。今年上半期に韓国株式市場は20%以上も下落し、1ドル=1300ウォンまでウォン安ドル高が進み、外貨保有額も3月から減少する状況で、貿易赤字の長期化は国家信用度にマイナスの影響を及ぼしかねない。
中国に進出した韓国企業の生産施設とサプライチェーンも考慮する必要がある。サムスン電子西安工場はNAND型フラッシュメモリー製品の約40%、SKハイニックス無錫工場はDRAM製品の約50%を生産する。また個別素子半導体部品、メモリー半導体、金属素材およびダイオードの対中輸入依存度が40%を超えている。当分は半導体が不足するため、中国が韓国企業を直ちに牽制するのは難しいだろう。しかし今年上半期の主要半導体企業の株価が供給過剰に対する懸念から年初比で20%以上も下落したのをみると、市場の主導権は生産者から消費者に移っている。
チップ4が半導体貿易に及ぼす影響についても詳細に考慮する必要がある。2018年に米国が中国に報復関税を賦課して先端製品の輸出を統制したにもかかわらず、米国はもちろん日本・台湾の対中半導体輸出は増加した。両岸関係の悪化で軍事的緊張が高まったが、台湾の対中半導体輸出は昨年、過去最高となった。こうした傾向をみると、米国の対中制裁の効果は当分は大きくないと推定される。
最後にチップ4が失敗する場合にも備える必要がある。チップ4が成功するためには韓国・米国・日本・台湾の主要半導体企業が緊密に協力しなければならない。しかし世界市場で激しく競争するサムスン電子・TSMC・インテルが自社の収益をあきらめて協力する可能性は高くない。昨年9月に米商務省が売上高・在庫・顧客リストなど営業秘密を提出するよう要求した当時、多くの企業が締め切り期限の直前まで提出しなかった。また、中国に生産施設を保有するインテル・サムスン・TSMCともに中国への投資を制限するガードレール条項に否定的な立場を表明した。
半導体貿易とサプライチェーンで韓国は米国と根本的に異なる利害関係を持つ。米国は国内での半導体生産を増やすために海外企業を誘致する必要がある。逆に韓国は国内で生産した先端半導体を中国など海外に輸出する。チップ4加入交渉をする際、韓国政府はサムスン電子・SKハイニックスが中国で被害を受けないよう米国政府を説得することが求められる。
イ・ワンフィ亜洲大政治外交学科教授
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