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【コラム】安倍元首相は暴力で命失ったのに、軍備拡張の道を進もうとする日本(2)

ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版
五台山の散策後に入った食堂のメニューに「ドクターマキノカレー」があった。店主が着るシャツにも牧野が描かれていた。ドラマを通じた牧野の人気を狙っているようだ。牧野とカレーがどんな関係なのかはわからないがおいしかった。シャツに描かれた牧野の顔を見て実際の人物と似ていたのか確認しようとインターネットで検索したところ、絵と同じようににっこり笑った顔の写真が出てきた。戦争時期にひたすら好きなことを追求して生きるということは容易でなかったはずだ。

小説『人間失格』を書いた太宰治は1948年に38歳で自ら命を絶った。それも内縁の女とともに心中したため当時大きな話題になった。『人間失格』は太宰の自伝的小説であり、1948年に出版された。最近韓国で『人間失格』が100刷を突破したというニュースを見て読み直してみた。主人公の大庭葉蔵が書いた手記を話者である「私」が読む構造の小説だが、「恥の多い生涯を送って来ました」という手記の始まりが象徴するように、葉蔵は自身を「人間失格」と考える。葉蔵が自殺未遂を繰り返したのも薬物中毒になったのもすべて太宰本人の話だ。

◇小説『人間失格』若年層も多く読む


『人間失格』は夏目漱石の小説『こころ』とともに日本で最も多く売れた小説だ。日本でも韓国でも比較的若い人が多く読むようだ。『人間失格』を読んだという30代の韓国の友達は「慰労された」とした。「退廃美」という表現を使った友達も数人いた。「世界文学全集」のひとつとして『人間失格』を出版する民音社は「特にマーケティングに力を入れたわけではないが昨年から多く売れている。理由はミステリー」と話す。私が考えるに競争社会に疲れた若者たちがコロナ禍まで重なり『人間失格』に共感して慰労されているのではないかと思う。

私もやはり10代で読んだ時は弱気で受動的な葉蔵に別に魅力を感じられなかったが、今回読み直して太宰が生きた時代を考えると、太宰の弱さは戦争のために国民に犠牲を強要した国に対する消極的な「抵抗」だったのではという気がした。

東京・三鷹にある「太宰治文学サロン」にも行ってみた。太宰は三鷹に住んでいた。そこに行けば太宰が書いた本よりも太宰について書いた本がはるかに多いということがわかる。太宰は一般読者にも人気があるが作家の間でも人気がある。例えば著名な中国文学者竹内好は「太宰治の何にひかれたかというと、一口にいって、一種の芸術的抵抗の姿勢であった」とした。太宰は戦争に便乗する多くの作家らと違ったということだ。

戦争時期にも自分が好きなことに没頭した牧野も、退廃的な文を書いて実際にそのように生きた太宰も私の目には平和主義者に見える。日本が戦前に似ていくようで心配にもなるが、牧野や太宰が照明を受けるのは「戦いたくない」という人もとても多いという意味ではないのか、希望を感じたりもする。

成川彩/元朝日新聞記者


【コラム】安倍元首相は暴力で命失ったのに、軍備拡張の道を進もうとする日本(1)

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