#1.2007年8月22日、インドの国会議事堂。日本の安倍晋三首相はインドのシン首相と議員、閣僚らの前で「二つの海の交わり」という題名で演説した。
「私たちは今、歴史的、地理的に、どんな場所に立っているでしょうか。この問いに答えを与えるため、私は1655年、ムガルの王子ダーラー・シコーが著した書物の題名を借りてみたいと思います。すなわちそれは、『二つの海の交わり』(Confluence of the Two Seas)が生まれつつある時と、ところにほかなりません」。
ダーラー・シコーは著書『二つの海の交わり』で、悟りを得るためには境界を超えなくてはならず、得度の究極的目標を形而上学間の融和に求めた人物だ。安倍氏は本論に入った。
「太平洋とインド洋は、今や自由の海、繁栄の海として、一つのダイナミックな結合をもたらしています。従来の地理的境界を突き破る『拡大アジア』が、明瞭な形を現しつつあります。これを広々と開き、どこまでも透明な海として豊かに育てていく力と、そして責任が、私たち両国にはあるのです」。
太平洋とインド洋という地理的境界を崩し、さらに広いアジアを作ろうという「インド太平洋」概念の誕生だった。
#2.2006年12月15日、東京。安倍首相は日本を訪問したシン首相と首脳会談後に共同声明を発表した。声明の第46項には「両首脳は、日本、インド及びアジア太平洋地域の他の同様な考えを持つ諸国との間で、共通の関心事項について対話を行うことが有益であるとの認識を共有する。両国政府は、その方法について協議する」と書かれている。
インド太平洋地域の民主主義国同士で対話し協力しようという趣旨だった。中国の浮上を牽制するインド太平洋4カ国の安全保障の枠組みであるクアッドの始まりだった。「同様な考えを持つ諸国」として米国とオーストラリアが合流した。翌年5月にマニラで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域安全保障フォーラムの際に4カ国の当局者が参加する初のクアッド会議が開かれた。
◇トランプ氏とバイデン氏も認めたインド太平洋とクアッド
「自由で開かれたインド太平洋」と「クアッド」は米トランプ政権とバイデン政権のアジア政策を含蓄する用語だ。トランプ氏とバイデン氏の2人の大統領にインスピレーションを吹き込んだのは安倍元首相だ。
指向点が異なるトランプ政権とバイデン政権がアジア政策だけは安倍氏という日本の政治家に借りを作った形だ。安倍氏が米国の外交政策に及ぼした影響だけにワシントンのアジア専門家らは安倍氏の突然の死を惜しみ追悼している。
トランプ政権でアジア政策を担当したポッティンジャー元大統領副補佐官(国家安全保障担当)は、トランプ大統領が「自由で開かれたインド太平洋」という文言を安倍首相から「借りた」と明らかにした。
ポッティンジャー元副補佐官はウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿で、「2017年にトランプ政権がアジア地域に対する戦略を具体化するためのスローガンを探している時に私と同僚は自由で開かれたインド太平洋という安倍氏のモットーを増幅させることの長所を見た」と回顧した。
トランプ大統領は2017年11月の就任後にアジアを初めて訪問した。ベトナムでトランプ大統領は「自由で開かれたインド太平洋」を宣言する演説をした。安倍氏のインド議会での演説から10年が過ぎた後だった。
トランプ氏もバイデン氏も借り作った形…クアッドとインド太平洋、その始まりは安倍氏だった(2)
「私たちは今、歴史的、地理的に、どんな場所に立っているでしょうか。この問いに答えを与えるため、私は1655年、ムガルの王子ダーラー・シコーが著した書物の題名を借りてみたいと思います。すなわちそれは、『二つの海の交わり』(Confluence of the Two Seas)が生まれつつある時と、ところにほかなりません」。
ダーラー・シコーは著書『二つの海の交わり』で、悟りを得るためには境界を超えなくてはならず、得度の究極的目標を形而上学間の融和に求めた人物だ。安倍氏は本論に入った。
「太平洋とインド洋は、今や自由の海、繁栄の海として、一つのダイナミックな結合をもたらしています。従来の地理的境界を突き破る『拡大アジア』が、明瞭な形を現しつつあります。これを広々と開き、どこまでも透明な海として豊かに育てていく力と、そして責任が、私たち両国にはあるのです」。
太平洋とインド洋という地理的境界を崩し、さらに広いアジアを作ろうという「インド太平洋」概念の誕生だった。
#2.2006年12月15日、東京。安倍首相は日本を訪問したシン首相と首脳会談後に共同声明を発表した。声明の第46項には「両首脳は、日本、インド及びアジア太平洋地域の他の同様な考えを持つ諸国との間で、共通の関心事項について対話を行うことが有益であるとの認識を共有する。両国政府は、その方法について協議する」と書かれている。
インド太平洋地域の民主主義国同士で対話し協力しようという趣旨だった。中国の浮上を牽制するインド太平洋4カ国の安全保障の枠組みであるクアッドの始まりだった。「同様な考えを持つ諸国」として米国とオーストラリアが合流した。翌年5月にマニラで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域安全保障フォーラムの際に4カ国の当局者が参加する初のクアッド会議が開かれた。
◇トランプ氏とバイデン氏も認めたインド太平洋とクアッド
「自由で開かれたインド太平洋」と「クアッド」は米トランプ政権とバイデン政権のアジア政策を含蓄する用語だ。トランプ氏とバイデン氏の2人の大統領にインスピレーションを吹き込んだのは安倍元首相だ。
指向点が異なるトランプ政権とバイデン政権がアジア政策だけは安倍氏という日本の政治家に借りを作った形だ。安倍氏が米国の外交政策に及ぼした影響だけにワシントンのアジア専門家らは安倍氏の突然の死を惜しみ追悼している。
トランプ政権でアジア政策を担当したポッティンジャー元大統領副補佐官(国家安全保障担当)は、トランプ大統領が「自由で開かれたインド太平洋」という文言を安倍首相から「借りた」と明らかにした。
ポッティンジャー元副補佐官はウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿で、「2017年にトランプ政権がアジア地域に対する戦略を具体化するためのスローガンを探している時に私と同僚は自由で開かれたインド太平洋という安倍氏のモットーを増幅させることの長所を見た」と回顧した。
トランプ大統領は2017年11月の就任後にアジアを初めて訪問した。ベトナムでトランプ大統領は「自由で開かれたインド太平洋」を宣言する演説をした。安倍氏のインド議会での演説から10年が過ぎた後だった。
トランプ氏もバイデン氏も借り作った形…クアッドとインド太平洋、その始まりは安倍氏だった(2)
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