ウクライナキーフ地域の国境施設がロシア軍の空襲で破壊された。 [写真 ウクライナ内務省フェイスブックページ]
◇「領土譲歩は敗北」民主主義の価値にだれが従うか
ウクライナの独立系メディア「ウクラインスカヤ・プラウダ」と姉妹メディアの「ユーロピアンプラウダ」は26日、共同社説を通じ「ニューヨーク・タイムズはウクライナとロシアの戦争を理解できない。領土を譲歩するのはどんな言葉で偽装しようが『敗北』を意味する。これは第2次世界大戦当時にルーズベルト米大統領が欧州の一部をナチスドイツが占領したままヒトラーと合意するのと同じこと」と主張した。
ウクライナは2月末の開戦以降、東部のルハンシクとドネツク地域、南部のヘルソンとザポリージャ地域などをロシア軍に占領された。
メディアはウクライナが一部領土を渡してからどのような状況が広がるのか大きく3つに分けて反論した。まず「米国など西側は他の国に民主主義の価値を支持するよう説得できない」と主張した。実際の戦闘はロシアとウクライナがしているが、戦争の様相はロシアと北大西洋条約機構(NATO)間の対決で、ウクライナの敗北はそのままNATOと米国の敗北と認識されかねないと主張した。
したがって米国の同盟から信頼を失いかねず、米国が強調する民主主義を守るために戦わなければならないという名分が消えるだろうと付け加えた。
◇チェンバレンの事例を見よ、ロシアは「しばし」弱くなるだけ
2番目に「ロシアはしばし弱くなるかもしれないが、そのような状態が永遠に続きはしないだろう。まともに処罰を受けなければロシアのプーチン大統領が去ってもまた別の暴政が起き再び戦争が始まるだろう」とした。
その上で1938年にチェンバレン英首相がヒトラーと結んだ平和条約であるミュンヘン協定に言及した。当時チェンバレン首相はチェコスロバキア領土のうちドイツ人が多いズデーテンをナチスドイツに譲渡することを骨子に協定を締結した後「これがわれわれの時代のための平和であることを信じる」と述べた。だがナチスドイツは1年もたたずに第2次世界大戦を起こした。
また、ウクライナが領土譲歩と引き換えに平和交渉をする場合、次の攻撃対象はウクライナ、ジョージア、モルドバだけでなくNATO加盟国であるポーランドとバルト3国になりかねないとした。これは中国に口実を与えることもできる。メディアは「他の国を侵略しようとする国がロシアのほかにもある。特に中国が台湾を侵攻することになりかねない」とした。
◇ロシアが輸出ルートの黒海掌握、世界食糧危機深化
ウクラインスカヤ・プラウダは戦争が終われば世界食糧危機も解決されるかのようにみられるが、事実はそうではないとした。メディアは「世界食糧危機がさらに悪化する恐れがある。ウクライナの穀物の主要輸出ルートである黒海を掌握したロシアが安全な輸出を保障する可能性は小さい」と指摘した。また、不安な安全保障状況が続くならば外国人投資家も入らずウクライナの戦後再建も難しいと予想した。
最後に「最後まで戦争をするのか、現在の状態で休戦後に領土を再奪還するのかなどに対してはウクライナで議論中。今回の戦争でどんな結論を下すかはウクライナが自ら決めなければならない」とした。
2000年に創刊したウクラインスカヤ・プラウダは現地で信頼されるオンラインメディアで、1日の訪問者は400万人に達する。セブギル・ムサイェワ編集長は23日に米タイム誌が選定した今年の「世界で最も影響力のある100人」のうち1人に選ばれた。
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