ジョン・ミアシャイマー米シカゴ大政治学教授 [中央フォト]
ミアシャイマー教授は、バイデン米政権がウクライナに対する軍事的支援とロシアに対する経済制裁、同盟糾合に専念する時に戦争が勃発したという根本的な原因に注目すべきだ、と主張している。戦争の原因を正確に把握してこそ、状況の悪化を防ぐ戦争の終わりも見えてくるとしながらだ。
ミアシャイマー教授はプーチン露大統領がウクライナを侵攻したのは明らかに問題だが、それと戦争が起きた原因は区別することを注文した。さらにロシア-ウクライナ戦争の原因は米国が提供したと主張した。米国政府と与野党、主流学界・メディアからすると非常に破格的な主張だ。ミアシャイマー教授自身も「一般の通念に反して、主流社会でほとんど受け入れられない少数説」と説明する。
しかし最近になって主流メディアがミアシャイマー教授の主張を積極的に紹介し、彼の論理をめぐる論争が激しくなっている。ニューヨーカー誌は3月、「ミアシャイマーがウクライナ危機について米国を非難する理由」と題した記事を出した。英エコノミストは「なぜ西欧はウクライナ危機に責任があるのか」というミアシャイマー教授の寄稿を掲載した。
ミアシャイマー教授は寄稿で「プーチンが戦争を始めて戦争の展開に責任があるということに疑いの余地はない。しかし彼がなぜそうかは別の問題」と主張した。続いて「西欧の主流の見解は(プーチンが)旧ソ連の形態を帯びた、より偉大なロシアを築くことに専念する非理性的で理解できない侵略者というものだ」と説明した。
したがってプーチン大統領が単独でウクライナ危機に対するすべての責任を負うべきだとみるが、こうした主流の見解は誤りだと批判した。西欧、特に米国がウクライナ危機に大きな責任があるということだ。ミアシャイマー教授はロシア-ウクライナ戦争の種は2008年4月にルーマニア・ブカレストで開催されたNATO(北大西洋条約機構)首脳会議でまかれたという見方を示した。
当時のブッシュ米政権はこの会議でウクライナとジョージアがNATO加盟国になると発表した。プーチン大統領とロシアは直ちに反発した。プーチン大統領はウクライナのNATO加盟をロシアに対する「実存的脅威(existential threat)」と見なし、これを必ず阻止すると明らかにした。ロシアがレッドラインを引いたが、米国は警告を無視した。ウクライナをロシアに対する「西欧の防壁(bulwark)」にしようとしたというのが、ミアシャイマー教授の見解だ。当時のアンゲラ・メルケル独首相とサルコジ仏大統領もウクライナのNATO加盟がロシアを刺激するとして反対したが、積極的な動きは見せなかった。
ミアシャイマー教授は、米国がウクライナを軍事的にはNATO、経済的には欧州連合(EU)に編入し、理念的には親米民主主義国家にしようという戦略を持った、と説明した。結局、米国の支援を受けたウクライナが2014年2月の「マイダン革命」で親露性向のヤヌコビッチ大統領を追放すると、これに反発したロシアがクリミア半島を併合し、東部ドンバス地域の内戦を煽ったと見なした。
ミアシャイマー教授が見る戦争の最も直接的な原因は、昨年11月にブリンケン米国務長官とクレバ・ウクライナ外相が締結した「米国・ウクライナ戦略的パートナーシップ憲章」だ。この憲章は2008年のブカレストNATO首脳会議に言及しながら、ウクライナのNATO加盟に対する米国の約束を改めて言明した。ロシアのラブロフ外相は「沸点に到達した」と警告し、ウクライナのNATO加盟放棄を書面で約束するようを要求した。米国とウクライナはこれに応じず、プーチン大統領が「NATOの脅威」を除去するために侵攻したというのが、ミアシャイマー教授の見方だ。
「ウクライナ戦争の原因は米国だ」…米碩学の破格的な主張(2)
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