ロシア軍が２０日（現地時間）、先端戦略武器である極超音速ミサイル「キンジャール」を使用し、ウクライナ南部ミコライウ地域のコンスタンチノフカ地域の軍用燃料保存所を破壊したとＡＰ通信がこの日、ロシア国防省を引用して報じた。ロシア軍は前日、キンジャールを初めてウクライナに投じ、西部のイバーノ＝フランキーウシク地域のミサイル・航空機用弾薬貯蔵庫と地下軍需物資保存施設を攻撃した。

ＣＮＮは米国情報当局者を引用して「リアルタイム追跡の結果、ロシア軍がウクライナに極超音速ミサイルを発射したことが確認された」と伝えた。米ヘリテージ財団によると、極超音速ミサイル１発の費用は５０００万～１億ドル（約６０億～１１９億円）に達する。


キンジャールはウラジーミル・プーチン　ロシア大統領が２０１８年３月１日に開発を直接発表して「天下無敵」と表現した次世代空対地ミサイルだ。キンジャールは最高速度マッハ１０（時速１万２０００キロメートル）の極超音速飛行と回避機動で従来のミサイル防衛システムを無力化できるため「ゲームチェンジャー」と呼ばれている。核弾頭はもちろん、在来式弾頭も搭載することができ、超音速戦闘機「ミグ３１ｋ」や超音速爆撃機「Ｔｕ－２２」などから発射される。発射プラットフォームにより最大射程距離が約２０００～３０００キロメートルになり、誤差１メートルで目標物を打撃できると評価されている。


西側軍事専門家はロシアが１発で数百億ウォンに達する最新戦略武器まで持ち出して弾薬庫のような戦術的目標物を打撃し始めたという事実を巡り、それほど戦況が厳しいという意味だと分析した。一部ではロシアが西側に戦略武器を誇示するための戦略だとみている。チューリッヒの安保研究センター（Ｃｅｎｔｅｒ　ｆｏｒ　Ｓｅｃｕｒｉｔｙ　Ｓｔｕｄｉｅｓ）のＤｏｍｉｎｉｋａ　Ｋｕｎｅｒｔｏｖａ博士はＢＢＣに対して「自国の武器体系の威力を誇示し、ウクライナへの武器支援を続けている西側に対する信号」と述べた。

ウクライナ軍が予想外の抗戦を繰り広げ、長期戦に入ったロシア軍が新型武器で雰囲気を反転しようとする狙いがあるともみられている。Ｋｕｎｅｒｔｏｖａ博士は「数十発あると推定されるキンジャールまで在来式戦闘に投じたということは、それだけロシア軍が切迫した状況に置かれていると見るべきだ」と説明した。

米国シンクタンク戦争研究所（ＩＳＷ）も１９日、「弾薬庫を攻撃するのにこれほど貴重で高価な武器を使ったということは、具体的な軍事的目標の達成よりも（ロシア軍の）威力を見せつけようとする信号だと見たほうがいい」とし「極超音速武器を使用できる能力を証明すること以外にも、低威力核兵器使用も考慮するという信号を送る意図があるようにも取れる」と明らかにした。

ロシア軍の在来式武器の在庫が足りなくなってきたためという見解もある。ニューヨーク・タイムズ（ＮＹＴ）によると、ロシア軍は先月２４日、ウクライナ侵攻以降、今月１６日までに１０８０発以上のミサイルを発射したと米軍当局は推算した。軍事分析家のＰａｖｅｌ　Ｆｅｌｇｅｎｈａｕｅｒ氏はＡＦＰ通信に「誰もこのような長期戦を予想していなかったため、在来式武器が枯渇して先端ミサイルを使った可能性がある」と話した。フランス軍事評論紙「ＤＳＩ」国防戦略研究員であるＪｏｓｅｐｈ　Ｈｅｎｒｏｔｉｎ氏も「イスカンデル短距離弾道ミサイルが不足しているか、核搭載が可能な極超音速ミサイルを配備して緊張を高めようとする戦略かもしれない」とツイートした。