「我々はますます忙しく混雑する新しい宇宙時代を迎えている」（米天体物理学者ジョナサン・マクダウェル博士）。

宇宙で「交通事故」が発生する危険が日々高まっている。一部の強大国の政府が独占する状況の宇宙空間にイーロン・マスク氏が設立した「スペースＸ」など民間宇宙探査企業が次々と低軌道人工衛星を打ち上げているからだ。すでに人工衛星やロケット破片など１万トン近い宇宙ごみが低軌道宇宙を飛び交っていて、専門家らは「宇宙で災難に近い衝突が発生する可能性が高まっている」と憂慮している。

最近、中国の宇宙ステーションとスペースＸの人工衛星の接近があった。ＣＮＮなどの２７日（現地時間）の報道によると、中国航空宇宙当局は今月初め、国連宇宙事務局（ＵＮＯＯＳＡ）に「スペースＸのスターリンク衛星が７月１日と１０月２１日、中国宇宙ステーションの核心モジュールに接近した。衝突を避けるために宇宙ステーションが回避しなければならなかった」と明らかにした。中国は４月、宇宙ステーションの核心モジュール「天和」を打ち上げ、来年の完成を目標に宇宙飛行士３人が建設作業を進めている。


こうした情報が中国国内で広がると、マスク氏とスペースＸを非難する書き込みが続いた。微博（ウェイボー）でこの主題は約９０００万回の照会数となった。あるネットユーザーはスペースＸの衛星を「宇宙ごみ」と酷評した。中国国営「環球時報」の胡錫進元編集長はツイッターで「中国宇宙飛行士にテスラを売るために接近したのか」と皮肉った。中国外務省の趙立堅報道官は２８日、「米国は他国に宇宙活動に対する責任を強調しながら、自国は宇宙条約を無視している」と批判した。

ＣＮＮは今回の事件が「政府と民間企業による宇宙での活動増加が『宇宙交通事故』問題を引き起こした」と指摘した。地球の２００－２０００キロ上空の低軌道衛星は通信遅延率が低く、次世代ネットワークシステムとして注目されている。特に市場を先に確保するための民間企業の競争が激しい。スペースＸだけでなく、ジェフ・ベゾス氏も子会社を設立し、「プロジェクト・カイパー」と名付けて低軌道衛星事業に参入した。米衛星産業協会（ＳＩＡ）は２０２９年まで１０万個以上の商業用衛星が軌道に乗ると推算した。

特にトップ走者のスペースＸが低軌道過密化の主犯に挙がっていると、ＣＮＮは伝えた。すでに約２０００個の低軌道衛星を宇宙に打ち上げ、２０２７年までに１万２０００個の衛星を低軌道に乗せる計画だ。ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのジョナサン・マクダウェル博士は「人工衛星の衝突リスクを減らすための回避機動が増えている」とし「スターリンクはその中で大きな部分を占めている」と指摘した。スペースＸは自社のスターリンク衛星に自律衝突回避機能が内蔵されていて、他の物体との衝突を未然に防ぐと主張する。

米ＩＴメディアのザ・バージ（Ｔｈｅ　ｖｅｒｇｅ）は中国も低軌道衝突問題の責任から自由でないと指摘した。中国は２００７年、衛星迎撃ミサイル（ＡＳＡＴ）で自国の衛星を破壊し、数千個の宇宙破片を作った。実際、先月１０日、国際宇宙ステーション（ＩＳＳ）はこの破片を避けるために回避起動をしなければならなかった。マクダウェル博士は「ＩＳＳは過去１０年間に何度か中国が作った宇宙破片を避けなければならなかった」とし「中国もこの問題でクリーンでない」と批判した。

米中露の宇宙競争が日々激化し、民間事業者までが参入して宇宙が角逐場となり、新しい宇宙規則が必要だという主張も提起されている。フィナンシャルタイムズ（ＦＴ）は１０日の論評で「低軌道宇宙では、誰もが遵守する、責任のある持続可能な規則が存在しない」と指摘した。ＦＴは１９６７年の国連宇宙条約は古くなり、２０１９年に国連宇宙平和委員会で採択したガイドラインは違反時のペナルティがないと伝えた。欧州宇宙機関（ＥＳＡ）のジョセフ・アッシュバッハー長官は「マスク氏が宇宙を独占するように放置してはいけない」とし「我々は共通の規則を決める必要がある」と主張した。