全大陸に広がったオミクロン株が既存の新型コロナウイルスワクチンに耐性を見せるだろうという見方が相次いで出ている。米製薬会社モデルナのステファン・バンセル最高経営責任者（ＣＥＯ）は先月３０日、既存のワクチンがオミクロン株に対しデルタ株ほどの効果はないだろうと予想した。

彼はこの日フィナンシャル・タイムズとのインタビューで、「既存のワクチンがデルタ株の時と（効果が）同じということはない。実際に効果が落ちるようだ」と話した。続けて「関連資料を待たなくてはならないが、話してみた科学者はみんな『良くなさそうだ』と話した」と明らかにした。

モデルナとファイザーなどのワクチンの予防効果はデルタ株流行後には以前より減少したが比較的高い水準を維持していることが明らかになった。しかしオミクロン株に対する予防効果はこれよりさらに落ちるかもしれないという話だ。


内外の医学界・科学界でもオミクロン株が持つ変異の量と位置など初期データを根拠に既存ワクチンの効能に懐疑的な見方が優勢だ。

オミクロン株はスパイクにある変異数がデルタ株の２倍である３２個とされる。新型コロナウイルスワクチンはウイルスのスパイクに対する抗体を形成する原理のためスパイクに変異ができればワクチンの効能が落ちる恐れがあるができる。

米コロンビア大学のデビッド・ホー教授（微生物学・免疫学）は先月２９日、ロイター通信に「ワクチン接種で得た抗体は（ウイルスにある）スパイクの部位３カ所を攻略するが、オミクロン株はこの部位３カ所すべてに変異がある」と説明した。続けて「オミクロン株の構造を分析中の学者は公衆保健専門家よりオミクロン株に対しはるかに心配している」と話した。

イタリアの研究陣が公開した３次元（３Ｄ）イメージによると、オミクロン株のスパイクにある変異は特に人体の細胞と最初に接触する受容体結合部位に集中している。高麗（コリョ）大学九老（クロ）病院感染内科のキム・ウジュ教授は中央日報に「これはオミクロン株が人体細胞にさらによくくっつき感染力が強くなり、既存のワクチンの効能を減少させる恐れがあるということを意味する」と説明した。

オミクロン株が既存のベータ株の強力なワクチン回避力とデルタ株の強い感染力をともに備えた可能性も提起される。南アフリカ国立伝染病研究所のペニー・ムーア博士はニューヨーク・タイムズに「オミクロン株ではベータ株で見つかった変異とデルタ株で見つかった変異がともに見つかった。オミクロン株は２つの変異の特性が合わさったようだ」と話した。

先月２９日のＣＢＳによると、南アフリカでオミクロン株を初めて発見した研究チームを率いるウイルス学者のアレックス・シーガル氏はオミクロン株について「フランケンシュタインに近い。これまで見たもののうち最も変異したウイルス」と評した。これに先立ちモデルナのスティーブン・ホッジ社長もやはり「オミクロン株は最高ヒット作を全部集めたフランケンシュタインの雑種のようだ」と話したことがある。

一部ではオミクロン株が抗体を無力化する最初の「免疫回避変異株」ではないのかとの懸念まで出ている。ニューヨーク・タイムズによると南アフリカでは過去に新型コロナウイルスに感染したのにオミクロン株に感染なる再感染事例が増加している。ドイツの感染症学者のクリスティアン・トゥロステン氏はドイツＺＤＦ放送とのインタビューで「南アフリカの再感染事例などから見ると、オミクロン株は最初の免疫回避変異株ではないかと懸念される。これまでの変異はこうした特性は目立たなかった」と主張した。

それでも研究者は現在ではワクチン接種が最善策だとみている。重症化と死亡を予防できるという理由からだ。また、オミクロン株で抗体機能が落ちてもワクチン接種で活性化したＴ細胞などはウイルスと戦う機能を発揮できるという意見もある。免疫専門家であるジョン・ウェリー氏は「ワクチン接種は依然として重症化と死亡を予防してくれる」と強調した。

現在ワクチンメーカーを含め世界で数十の研究チームがオミクロン株に対する既存のワクチンの効能研究に着手した状態だ。早ければ２週間以内に研究結果が出る見通しだ。合わせてファイザーと新型コロナウイルスワクチンを共同開発したドイツのビオンテック、モデルナ、英アストラゼネカ、ノババックスなどのワクチンメーカーはオミクロン株に対応した新たなワクチンを開発中だと明らかにした。

一方、ファイザーのアルバート・ブーラＣＥＯは自社が開発中の新型コロナウイルスの傾向治療薬「パクスロビド」がオミクロン株にも効果があるだろうと予想した。ブーラＣＥＯは先月２９日、ＣＮＢＣ放送とのインタビューで「多くの変異がスパイクで起きるだろうという事実を念頭に治療剤を設計した。そのためわれわれの治療剤は変異の影響を受けないものと自信を持っている」と話した。