「うわぁ…」。

２日午後、キウム対斗山（トゥサン）のプロ野球ポストシーズンワイルドカード最終戦が開かれたソウル・蚕室（チャムシル）球場。５回表２死満塁の状況でキウムの打者イ・ジョンフが３点２塁打を放つと観客席からは悲鳴混じりの叫び声があふれた。キウムが１－９で追う状況での劇的なキウムの適時打に両チームのファンは歓声とため息を吐き出した。３塁側客席ではイ・ジョンフの名前を叫び続けた。しばらくすると応援団長が出てきて声を出しての応援自粛を要請した。ただ応援団長はアンプを使った応援は継続し、チアリーダーもやはりステージに上がりファンらの応援を誘導した。この日の試合前に電光掲示板に「肉声での応援を控えてほしい」という案内文が表示された。だが突然起きる歓呼と応援を防ぐことはできなかった。

１日に段階的な日常回復を進める「ウィズコロナ」が始まったが、緩和された防疫ルールをめぐって各所で混乱が起きている。観客のこうした歓声と声を出しての応援は依然として防疫ルール違反だ。感染症予防法により競技場の管理者・運営者には３００万ウォン以下の過怠金、観客には１０万ウォン以下の過怠金が科されることもある。


ウィズコロナの施行により韓国野球委員会（ＫＢＯ）はポストシーズンに観客の１００％入場を認めた。全座席をワクチン接種者区域として運営する。野球場の全座席が観客に開放されるのは２０１９年１０月の韓国シリーズから２年１カ月ぶりだ。試合観戦中に食べ物を食べるのも可能になった。この日蚕室球場を訪れた野球ファンらは久々にフライドチキンとビールを楽しみながら野球を観戦した。だが韓国政府のウィズコロナ１段階指針によると、球場でチキンとビールを楽しむのは可能だが、歓声を上げたり声を出して応援歌を歌うのは不可だ。

前日の１日のワイルドカード第１戦での声を出しての応援をめぐる議論がふくらむと、中央事故収拾本部の孫映莱（ソン・ヨンレ）社会戦略班長は２日の会見で「マスクを使っていても歓声や掛け声は飛沫の排出が多く強まりマスクの遮断効果が落ちる」として歓声や掛け声を禁止する理由を説明した。彼は「接種完了者だけで観客が構成された場合には飲食が認められている。飲食時は当然マスクをはずすことになるが、この時に歓声や掛け声を叫べばより危険だ」と懸念する。孫班長は「文化体育観光部、球団、協会などとともにこうした部分が徹底的に守られるようにする案を講じて措置するよう協議したい」と話した。

野球ファンの間では飲食は認めて歓声は禁止するという防疫ルールはおかしいとの批判が出ている。１日に試合を観戦した会社員のチャンさんは、「球場でマスクをはずして食べ物は食べるのに声は出すなというのは理解できない」と話した。チャンさんは「食堂やカフェは室内なのにマスクをはずして飲食し大きな声で対話してもかまわないのに野外である球場はなぜそんなに窮屈に規制しているのか」と反問した。

スポーツジムやピラティススタジオなど防疫パス（ワクチンパス）が適用される屋内スポーツ施設運営者も不満を訴える。ワクチンを接種してから２週間経過した人だけ利用できるようになり未接種者の払い戻し要求が激しいという。これまでは時間制限やシャワールームの利用制限などが下されても未接種者の施設利用そのものを禁止したりはしなかったが、ウィズコロナが始まりむしろ防疫措置が強化された形だ。京畿道水原市（キョンギド・スウォンシ）でスポーツジムを運営するキムさんは「そうでなくても厳しい状況でウィズコロナ以降払い戻し要求が相次いでおり大変だ。マスクを着用して運動だけするのも禁止するのは公平ではない」と訴えた。大韓室内体育施設総連合会は３日にソウル・汝矣島（ヨイド）の民主党事務所前で防疫パス不服デモをすると予告した。

これと関連し孫班長は「所管官庁で対話し意見を取りまとめるものと承知している」としながらも、「防疫規制を解除する過程で未接種者を中心に感染が拡大するのを遮断する目的のため防疫パス措置は避けられない」として理解を求めた。

韓国政府が前日に発表した社会福祉施設のウィズコロナ対応指針も議論を呼んだ。指針によると、児童施設、障害者施設、高齢者施設など集団生活施設に住む人のうちワクチン未接種者は登下校・出退勤以外には外出・外泊が禁止される。新型コロナウイルスワクチンを接種できない子どもたちですら登下校以外には原則として外出できない。議論が続くと孫班長は「きのう発表した指針は一般原則で、児童施設では登下校を除いた外出を全く認めない側には行かないだろう」と説明した。韓国政府は、児童福祉施設の場合、基本防疫ルールを強化しながらも子どもたちが日常を最大限回復する方向で細部ガイドラインを３日にまとめる予定だと明らかにした。