東京オリンピック(五輪)の開会式で注目された聖火の最終ランナーは女子テニスの大坂なおみ選手だった。大坂選手はハイチ系米国人の父と日本人の母の間に生まれ、人種差別反対運動に参加したことでよく知られている。彼女が聖火最終ランナーに選ばれたのは多様性を強調するメッセージとみられた。
ところが日本では東京オリンピック(五輪)の開幕前、数人の関係者が多様性を否定する発言で辞任したり解任されるという事態があった。森喜朗元東京オリンピック組織委員会会長は「女性が多い会議は長くなる」という発言をし、海外から多くの批判を受けて辞任した。
開幕の前日にも開会・閉会式ショーディレクターの小林賢太郎氏が解任された。過去にホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)をギャグの素材にした映像が公開され、波紋が広がったからだ。日本国内ではそこまで大きな問題にならなかったことも海外の視線で見れば違うという点を知らせたもう一つの事例だ。
女性の私が日本で男女不平等を感じることの一つは、結婚すれば夫の姓になる「夫婦同姓」制度だ。私が夫婦別姓が一般的な韓国に住んでいるため、強くそう感じるのかもしれない。日本の法律では夫婦のどちらか一方の姓を選択することになっているが、96%は夫の姓にしている。私も夫の姓に変えた。変えたくないのは夫も同じはずで、夫に私の姓に変えてほしいとは言えなかった。
◆日本最高裁「夫婦同姓は合憲」
ところが姓が変われば運転免許証、パスポート、クレジットカードなど、すべての証明書と書類、カードなどの名義変更をしなければならず、心理的に拒否感を感じるだけでなく、実際に姓を変える過程で多くの時間も奪われる。そのわずらわしさを結婚初期に経験し、夫のせいではないものの夫を憎く感じたことを思い出す。
私を含めて日本の女性記者はほとんどが結婚後も元々の姓で活動する。読者は姓が変われば別の記者だと思うからだ。「成川」は結婚前の私の姓だが、日本でも韓国でも記事を書く時はいつも「成川彩」を使ってきた。
ところが最近、韓国のある研究機関の依頼で原稿を送ったところ、原稿料の支払い前に、銀行口座の名義が筆者の名前と異なるので婚姻関係証明書を提出してほしいという連絡があった。原稿料支払いのために婚姻関係証明書を提出してほしいというのは、結婚8年目にして初めてのことで少し驚いた。
日本にいる夫に婚姻関係を証明できる書類を海外郵便で送ってほしいと頼もうとしたが、原稿料を受けるためにそこまではしたくはなかった。抗議する意も込めて研究機関に「原稿料を受けなくてもかまいません」と答えた。結局、向こうから書類なく原稿料を支払うという連絡があった。
以前に韓国の銀行口座の名義を結婚後の姓に変えようとした際「結婚前のパスポートが必要」と言われ、日本まで取りに帰ったことがある。姓を変えたくて変えたのでもないのに、そのために不利益を受けるたびに不合理だと感じる。
日本では夫婦別姓を選択できないという事実を知る韓国人は多くないようだ。日本についてよく知る教授や記者も「選択可能になったのでは」と驚く。かなり以前から夫婦別姓を選択できるようにしようという議論があったからだろう。
私が大学生だった2000年代初期にも「選択的夫婦別姓制度」の導入についてかなり以前から議論されてきたことを聞いた。それで私が結婚する頃には制度が変わるだろうと楽観していたが、20年が経過した今でも夫婦別姓制度は実現していない。
いつから議論されてきたのか気になって過去の新聞記事を探してみた。1988年の朝日新聞のコラム「天声人語」に「英国では女性は夫の姓に変えても変えなくてもよい」という海外の例を挙げながら、日本の状況について「会社や組織により女性の旧姓を職業上の通称として認める動きがある」と書いている。社会の変化に合わせて夫婦別姓を認めるのはどうかという趣旨だった。これが33年前のコラムだ。
この数年間に夫婦別姓を認めてほしいという声が高まっていたが、最高裁判所は今年6月にまた夫婦別姓を認めない現行法を「合憲」と判断した。残念だった。「国会で議論して判断すべき」と国会に委ねたのだ。最高裁の裁判官15人のうち女性は2人だけだった。女性が半分なら判断は違っていたのではとも思う。
夫婦別姓に反対する人の中には「日本の伝統」を守るべきだという人もいる。女性に犠牲を強要しながらも守るべきことなのかは疑問だ。何よりも夫婦別姓の歴史はそれほど古くないため、これを日本の伝統と呼ぶのは適切でないという思いもある。
実際、日本は江戸時代まで姓を持つ人は一部だった。一般の人たちが姓を持ったのは明治時代以降だ。夫婦同姓が導入されたのは1898年であり、当時の西洋の影響を受けた。ところが西洋では夫婦別姓を選択できるようにしたり夫婦の姓をつなぐ「結合姓」を認めるなど、結婚後の姓制度が変わってきた。夫婦同姓しか認めない国はもう日本以外にほとんどない。
【コラム】96%が夫の姓を選択する夫婦同姓、日本の多様性欠如を立証(2)
ところが日本では東京オリンピック(五輪)の開幕前、数人の関係者が多様性を否定する発言で辞任したり解任されるという事態があった。森喜朗元東京オリンピック組織委員会会長は「女性が多い会議は長くなる」という発言をし、海外から多くの批判を受けて辞任した。
開幕の前日にも開会・閉会式ショーディレクターの小林賢太郎氏が解任された。過去にホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)をギャグの素材にした映像が公開され、波紋が広がったからだ。日本国内ではそこまで大きな問題にならなかったことも海外の視線で見れば違うという点を知らせたもう一つの事例だ。
女性の私が日本で男女不平等を感じることの一つは、結婚すれば夫の姓になる「夫婦同姓」制度だ。私が夫婦別姓が一般的な韓国に住んでいるため、強くそう感じるのかもしれない。日本の法律では夫婦のどちらか一方の姓を選択することになっているが、96%は夫の姓にしている。私も夫の姓に変えた。変えたくないのは夫も同じはずで、夫に私の姓に変えてほしいとは言えなかった。
◆日本最高裁「夫婦同姓は合憲」
ところが姓が変われば運転免許証、パスポート、クレジットカードなど、すべての証明書と書類、カードなどの名義変更をしなければならず、心理的に拒否感を感じるだけでなく、実際に姓を変える過程で多くの時間も奪われる。そのわずらわしさを結婚初期に経験し、夫のせいではないものの夫を憎く感じたことを思い出す。
私を含めて日本の女性記者はほとんどが結婚後も元々の姓で活動する。読者は姓が変われば別の記者だと思うからだ。「成川」は結婚前の私の姓だが、日本でも韓国でも記事を書く時はいつも「成川彩」を使ってきた。
ところが最近、韓国のある研究機関の依頼で原稿を送ったところ、原稿料の支払い前に、銀行口座の名義が筆者の名前と異なるので婚姻関係証明書を提出してほしいという連絡があった。原稿料支払いのために婚姻関係証明書を提出してほしいというのは、結婚8年目にして初めてのことで少し驚いた。
日本にいる夫に婚姻関係を証明できる書類を海外郵便で送ってほしいと頼もうとしたが、原稿料を受けるためにそこまではしたくはなかった。抗議する意も込めて研究機関に「原稿料を受けなくてもかまいません」と答えた。結局、向こうから書類なく原稿料を支払うという連絡があった。
以前に韓国の銀行口座の名義を結婚後の姓に変えようとした際「結婚前のパスポートが必要」と言われ、日本まで取りに帰ったことがある。姓を変えたくて変えたのでもないのに、そのために不利益を受けるたびに不合理だと感じる。
日本では夫婦別姓を選択できないという事実を知る韓国人は多くないようだ。日本についてよく知る教授や記者も「選択可能になったのでは」と驚く。かなり以前から夫婦別姓を選択できるようにしようという議論があったからだろう。
私が大学生だった2000年代初期にも「選択的夫婦別姓制度」の導入についてかなり以前から議論されてきたことを聞いた。それで私が結婚する頃には制度が変わるだろうと楽観していたが、20年が経過した今でも夫婦別姓制度は実現していない。
いつから議論されてきたのか気になって過去の新聞記事を探してみた。1988年の朝日新聞のコラム「天声人語」に「英国では女性は夫の姓に変えても変えなくてもよい」という海外の例を挙げながら、日本の状況について「会社や組織により女性の旧姓を職業上の通称として認める動きがある」と書いている。社会の変化に合わせて夫婦別姓を認めるのはどうかという趣旨だった。これが33年前のコラムだ。
この数年間に夫婦別姓を認めてほしいという声が高まっていたが、最高裁判所は今年6月にまた夫婦別姓を認めない現行法を「合憲」と判断した。残念だった。「国会で議論して判断すべき」と国会に委ねたのだ。最高裁の裁判官15人のうち女性は2人だけだった。女性が半分なら判断は違っていたのではとも思う。
夫婦別姓に反対する人の中には「日本の伝統」を守るべきだという人もいる。女性に犠牲を強要しながらも守るべきことなのかは疑問だ。何よりも夫婦別姓の歴史はそれほど古くないため、これを日本の伝統と呼ぶのは適切でないという思いもある。
実際、日本は江戸時代まで姓を持つ人は一部だった。一般の人たちが姓を持ったのは明治時代以降だ。夫婦同姓が導入されたのは1898年であり、当時の西洋の影響を受けた。ところが西洋では夫婦別姓を選択できるようにしたり夫婦の姓をつなぐ「結合姓」を認めるなど、結婚後の姓制度が変わってきた。夫婦同姓しか認めない国はもう日本以外にほとんどない。
【コラム】96%が夫の姓を選択する夫婦同姓、日本の多様性欠如を立証(2)
この記事を読んで…