尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検察総長(左)と李在明(イ・ジェミョン)京畿道(キョンギド)知事(右)。中央フォト
韓国映画『アタック・ザ・ガス・ステーション!』のセリフとして有名なこの言葉は、政界では「私は無条件で強い奴だけを伸す」に変形されて使われることがある。使える資源が限定された状況で、あえて力を使わなければいけない場合、強い人を批判してこそ効果があるという理由からだ。強者との戦いは武勇談として認められるが、弱者との戦いは醜態だと批判を受けることも多い。
来年3月9日の大統領選を8カ月余り控えた韓国政界の観点から見ると、現在の強者は未来権力の最も近くにいる次期大統領選走者だ。各種世論調査で1・2位を争っている尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検察総長と李在明(イ・ジェミョン)京畿道(キョンギド)知事だ。そのため、尹氏と李氏は党内外の多くの競争者から集中的な牽制(けんせい)を受けている。
そのような状況でも互いを直接的に攻撃してこなかった2人が、今月4日、初めて火花をちらした。李氏が1日、「大韓民国が(政府樹立当時)親日清算をできず親日勢力が米占領軍と合作して支配体制をそのまま維持したのではないか」と話したことを、尹氏がそれから4日後の4日に「国政を掌握して歴史をわい曲し、次の政権まで狙っているあなたがたは今何を指向して誰を代表しているのか」と直撃しながらだ。これを受けて李氏は「新しい政治を期待したが、初っ端から旧態のセッカル(色、理念志向)攻勢とは実に残念だ」と再反論した。
◆尹錫悦vs李在明、歴史観克明に分かれて政治的波紋
政界には直ちに大きな波紋をもたらした。歴史観、それも大韓民国建国に関する歴史的見解が克明に分かれた様相だったためだ。
攻防は2日目の5日にも続いた。尹氏はこの日、ソウル大学原子核工学科の朱漢奎(チュ・ハンギュ)教授と面談した後、取材陣と会って「セッカル論、理念論争をするつもりは毛頭ない」としつつも「少なくとも国家の最高公職者として国家の重要なことを決める地位にあるかそれを希望する人なら、それでも現実的に実用的な歴史観と世界観を持って国を運営しなければならない」と李氏を再度狙った。
突如勃発した2人の「歴史戦争」を巡り、専門家によっては評価が分かれている。中には評価をしない視線もある。
政治コンサルティング「ミン」のパク・ソンミン代表は「2030世代、MZ世代の場合、(このような問題を取り上げることに)批判的なので、李氏の明らかな戦略的ミスだと考える」とし「尹氏としては当然の話をしたこと」と話した。
反面、韓国社会世論研究所(KSOI)のイ・ガンユン所長は「尹氏としては短期的には李氏の『占領軍』発言に応酬するのは仕方のない選択のようだ」とし「だが、中道と(民主党支持層から)離脱した進歩までを外縁拡大の対象とすると宣言した尹氏が国民の力と同じように対応するのは長期的にはつじつまが合わないと考える」と話した。
一方、政界の一部では2人の歴史戦争を「双方にとって悪くない意図的衝突」と見る向きもある。
与党「共に民主党」の姜勲植(カン・フンシク)大統領選挙競選企画団長はこの日、KBS(韓国放送公社)ラジオのインタビューで「(尹氏が)家族の悪材料をセッカル論で切り返して攻撃する様相」とし「(視線を)外に向けるために相手候補を攻撃している」と話した。野党「国民の力」関係者も「尹氏は出馬宣言以降、現在これといったメッセージがない状況だったが、李氏を攻撃したのは妙手」としながら「尹氏と李氏はそれなりの共生関係であり、戦略的同居をすることができると考える」と話した。
「歴史で真っ向勝負」韓国大統領選1・2位走者…「双方煮詰まりここぞとばかりに攻撃」(2)
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