世の中の人たちが「公正」を話している。「チョ・グク事態」に象徴される不公正がそれだけ随所に蔓延しているからだ。今週次々と出馬を宣言する大統領選予備走者も例外なく公正を口にしている。30日に予備候補に登録する李在明(イ・ジェミョン)京畿道(キョンギド)知事は公正と成長を、29日に出馬宣言をする尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検察総長は公正と常識を強調している。28日の崔在亨(チェ・ジェヒョン)監査院長の辞任報道には「公正で正しい世の中を取り戻してほしい」というコメントが書き込まれている。すでに「公正」は次期大統領選挙の「時代精神(Zeitgeist)」となっている。
元判事のシン・ピョン弁護士(65)が最近、著書『公正社会に向かって』を出したのもこうした流れと無関係でない。シン氏は慶北大法学専門大学院(ロースクール)教授、憲法学会長を務めた。保守的な大邱(テグ)・慶北(キョンブク)地域で進歩的な声を出してきたシン氏は、朴槿恵(パク・クネ)大統領弾劾当時ろうそく集会にほぼ毎回参加していた。第19代大統領選挙当時には文在寅(ムン・ジェイン)候補陣営で公益情報提供支援委員長として活動した親文派出身だ。2019年からチョ・グク事態を経て昨年12月には「ろうそく市民革命を継承したという政府がなぜこのようになったのか分からない」とし、政府を厳しく批判した。当時から親文勢力の集中攻撃を受けてきた。
1993年に「判事再任命脱落1号」になった後、慶尚北道慶州(キョンジュ)に帰郷し、農作業と弁論を併行している。一時上京したシン氏に会った。シン氏は自身の政治性向について「進歩・保守を分けるのは虚しいこと」としながらも「厳密に言えば中道」と話した。そして「進歩であれ保守であれ既得権改革が核心だ」と強調した。シン氏は文在寅政権について「進歩を標ぼうしながら既得権者として勢力を強めてきた『進歩貴族政権』」と酷評した。
シン氏が文大統領と縁を結んだのは1980年代だった。1980年代の浦項(ポハン)は大邱・慶北地域で民主化運動の核心だった。当時、浦項を管轄した大邱地方裁慶州支部で刑事単独判事を務めたシン氏は、浦項地域の労働運動事件や学生運動に加担した反体制人物を釈放して有名になった。「当時、逮捕状がよく請求された人たちの弁護人が文在寅弁護士だったため縁が生じた。当時はまだ激しい時代だったので文弁護士も(逮捕状取り下げが思い通りにいかず)苦労したが、判事が反体制人物を釈放するので私に強い印象を受けたようだ」。
シン氏は文在寅陣営のシンクタンク「民主政策統合フォーラム」にも参加した。「大統領選挙後にはフォーラム常任委員はほとんど要職に就いた。文政権の初期に私が監査院長・法務部長官候補に挙がっているとメディアに報道され、2018年には『大法院(最高裁)裁判官候補になったので急いでソウルに来てほしい』という大法院の電話を受けた。裁判所の事情をよく知る人たちは『青瓦台からオーダーがあった』と推測した。私を推薦した人はおそらく『文(大統領)』であるはず」。
しかし青瓦台推薦説を当時の尹建永(ユン・ゴンヨン)国政状況室長は否認し、「シン・ピョン最高裁裁判官」はなかったことになった。シン氏は昨年12月、「文政権がろうそく革命精神を裏切った」と批判した。チョ・グク事態がきっかけだった。シン氏は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権だった2007年、司法改革が進歩貴族に対する一つの戦利品の役割をしながら国民を考慮しない結果だったと批判した前歴がある。「国民が望むのは単純だ。公正な捜査と公正な裁判だ。盧武鉉政権に続いて運動圏出身者が核心を占める文在寅政権で、公正な捜査と公正な裁判がまともに取り上げられなかった。本気で国民のための政治をすべきだが、少数の進歩貴族が自分の子どものために利益を得た。それがろうそく革命の結果ならあまりにも虚しい」。
シン氏はチョ・グク事態をきっかけに「ネロナムブル(自分がやればロマンスだが他人がやれば不倫という二重基準)」を確信したという。「偽善的、無能でありながら政治ショーに依存した。朴槿恵(パク・クネ)政権に続いて文在寅政権も支離滅裂な無能政権であり、終息しなければいけない」と指摘した。
執権から4年が経過し、最近は文在寅政権批判書が次々と出版されている。『一度も経験したことがない国』(チン・ジュングォン、クォン・ギョンエら),『もう二度と経験したくない国』(キム・ジョンヒョク)、『文在寅の背信』(チャン・キルサン))、『真の進歩の告発状』(キム・ソクウ)などが出てきた。チョ・グク元長官が『チョ・グクの時間』を出した後、シン氏の著書『公正社会に向かって』が出版された。
「文政権の改革は間違っていたと国民に分かりやすく伝えたかったし、絶望しないでほしいと言いたくて本を出した。幸い、4・7補欠選挙で野党が圧勝し、新しい政治の土台を用意した。もし与党が勝っていれば間違いなく過激な親文勢力による親衛クーデターが起きたはず」。
親衛クーデターという聞き慣れない言葉に驚いて問い返した。「世論調査で国民の圧倒的な支持を受けている2人の(大統領選)トップ走者の李在明と尹錫悦を除去することだ。国民の参政権を根本的に否定して歪曲するという点で民主政治を否定するクーデターではないのか。民主主義に対する重大な挑戦は一つの反乱行為だ。野党の圧勝でその勢力が弱まったが、今回『尹錫悦Xファイル』としてまた出てきた。闇の勢力に屈服すれば民主主義の希望が消える。尹錫悦除去に成功すれば、さらに李在明除去に出るのではないだろうか。満身創痍にして二度と選挙に出てくることができないようにすることだ。そうなれば過激な親文が自分たちに都合がよい候補を当選させ、自分たちの既得権を維持するというシナリオだ。このような観点で見ると、互いに立場は違っても李在明と尹錫悦は過激親文という風浪に直面した呉越同舟の状況だ」。
「文政権は進歩標ぼうしながら既得権者として勢力を強めた貴族政権」(2)
元判事のシン・ピョン弁護士(65)が最近、著書『公正社会に向かって』を出したのもこうした流れと無関係でない。シン氏は慶北大法学専門大学院(ロースクール)教授、憲法学会長を務めた。保守的な大邱(テグ)・慶北(キョンブク)地域で進歩的な声を出してきたシン氏は、朴槿恵(パク・クネ)大統領弾劾当時ろうそく集会にほぼ毎回参加していた。第19代大統領選挙当時には文在寅(ムン・ジェイン)候補陣営で公益情報提供支援委員長として活動した親文派出身だ。2019年からチョ・グク事態を経て昨年12月には「ろうそく市民革命を継承したという政府がなぜこのようになったのか分からない」とし、政府を厳しく批判した。当時から親文勢力の集中攻撃を受けてきた。
1993年に「判事再任命脱落1号」になった後、慶尚北道慶州(キョンジュ)に帰郷し、農作業と弁論を併行している。一時上京したシン氏に会った。シン氏は自身の政治性向について「進歩・保守を分けるのは虚しいこと」としながらも「厳密に言えば中道」と話した。そして「進歩であれ保守であれ既得権改革が核心だ」と強調した。シン氏は文在寅政権について「進歩を標ぼうしながら既得権者として勢力を強めてきた『進歩貴族政権』」と酷評した。
シン氏が文大統領と縁を結んだのは1980年代だった。1980年代の浦項(ポハン)は大邱・慶北地域で民主化運動の核心だった。当時、浦項を管轄した大邱地方裁慶州支部で刑事単独判事を務めたシン氏は、浦項地域の労働運動事件や学生運動に加担した反体制人物を釈放して有名になった。「当時、逮捕状がよく請求された人たちの弁護人が文在寅弁護士だったため縁が生じた。当時はまだ激しい時代だったので文弁護士も(逮捕状取り下げが思い通りにいかず)苦労したが、判事が反体制人物を釈放するので私に強い印象を受けたようだ」。
シン氏は文在寅陣営のシンクタンク「民主政策統合フォーラム」にも参加した。「大統領選挙後にはフォーラム常任委員はほとんど要職に就いた。文政権の初期に私が監査院長・法務部長官候補に挙がっているとメディアに報道され、2018年には『大法院(最高裁)裁判官候補になったので急いでソウルに来てほしい』という大法院の電話を受けた。裁判所の事情をよく知る人たちは『青瓦台からオーダーがあった』と推測した。私を推薦した人はおそらく『文(大統領)』であるはず」。
しかし青瓦台推薦説を当時の尹建永(ユン・ゴンヨン)国政状況室長は否認し、「シン・ピョン最高裁裁判官」はなかったことになった。シン氏は昨年12月、「文政権がろうそく革命精神を裏切った」と批判した。チョ・グク事態がきっかけだった。シン氏は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権だった2007年、司法改革が進歩貴族に対する一つの戦利品の役割をしながら国民を考慮しない結果だったと批判した前歴がある。「国民が望むのは単純だ。公正な捜査と公正な裁判だ。盧武鉉政権に続いて運動圏出身者が核心を占める文在寅政権で、公正な捜査と公正な裁判がまともに取り上げられなかった。本気で国民のための政治をすべきだが、少数の進歩貴族が自分の子どものために利益を得た。それがろうそく革命の結果ならあまりにも虚しい」。
シン氏はチョ・グク事態をきっかけに「ネロナムブル(自分がやればロマンスだが他人がやれば不倫という二重基準)」を確信したという。「偽善的、無能でありながら政治ショーに依存した。朴槿恵(パク・クネ)政権に続いて文在寅政権も支離滅裂な無能政権であり、終息しなければいけない」と指摘した。
執権から4年が経過し、最近は文在寅政権批判書が次々と出版されている。『一度も経験したことがない国』(チン・ジュングォン、クォン・ギョンエら),『もう二度と経験したくない国』(キム・ジョンヒョク)、『文在寅の背信』(チャン・キルサン))、『真の進歩の告発状』(キム・ソクウ)などが出てきた。チョ・グク元長官が『チョ・グクの時間』を出した後、シン氏の著書『公正社会に向かって』が出版された。
「文政権の改革は間違っていたと国民に分かりやすく伝えたかったし、絶望しないでほしいと言いたくて本を出した。幸い、4・7補欠選挙で野党が圧勝し、新しい政治の土台を用意した。もし与党が勝っていれば間違いなく過激な親文勢力による親衛クーデターが起きたはず」。
親衛クーデターという聞き慣れない言葉に驚いて問い返した。「世論調査で国民の圧倒的な支持を受けている2人の(大統領選)トップ走者の李在明と尹錫悦を除去することだ。国民の参政権を根本的に否定して歪曲するという点で民主政治を否定するクーデターではないのか。民主主義に対する重大な挑戦は一つの反乱行為だ。野党の圧勝でその勢力が弱まったが、今回『尹錫悦Xファイル』としてまた出てきた。闇の勢力に屈服すれば民主主義の希望が消える。尹錫悦除去に成功すれば、さらに李在明除去に出るのではないだろうか。満身創痍にして二度と選挙に出てくることができないようにすることだ。そうなれば過激な親文が自分たちに都合がよい候補を当選させ、自分たちの既得権を維持するというシナリオだ。このような観点で見ると、互いに立場は違っても李在明と尹錫悦は過激親文という風浪に直面した呉越同舟の状況だ」。
「文政権は進歩標ぼうしながら既得権者として勢力を強めた貴族政権」(2)
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