先日、韓国ドラマにはまっている日本の友人から電話がかかってきた。ドラマを見ながら感じた疑問をいくつか尋ねてきたが、「寿司や酒が出てくるのは大丈夫なの」という質問もあった。その瞬間、どういう意味か分からず反応できなかったところ、友人が尋ね直した。「日本の製品が出てくるのはいけないのでは」。韓国の視聴者が嫌がるのではという質問だった
韓国の友人に尋ねたところ「寿司はすでに韓国に定着しているので別に…」と言いながら首を傾げた。日本でカレーライスを見てインドと思わないのと似ているのだろうか。2019年夏に日本製品不買運動が広がった当時、ドラマに酒が出てくれば反感を抱く視聴者がいたかもしれない。
昨年7月に日本に帰国し、今年3月初めに韓国にまた来ると、日本製品不買運動がある程度落ち着いているのを感じた。帰国中も韓国に関する報道をよく見ていたが、やはり韓国に入ってくると雰囲気を実感することができた。一時は客がいなくなった日本料理店にも並んで待つ人がいて、日本のビールもまた売れている。不買運動の後、新型コロナウイルス感染症が流行して日韓間の往来が難しくなり、日本では韓国の現在の雰囲気が正確に伝えられていない。
◆「NiziU、反日のため韓国デビュー白紙」報道
それだけではない。韓国の「反日」が日本でよく報道される影響もある。その報道が事実ならやむを得ないが、誤報も多く、実際より強調されている場合が多い。
最近、私に「韓国で福島原発処理水の放出に関してエンターテインメント側に影響を及ぼしてほしい」という依頼があった。日本政府が福島原発処理水放出を決めたことで韓国で反日感情が激しくなり、エンタメ側にも影響があるだろうと考えているようだ。例えば、日本の人気アニメ映画の上映が中止になったり、そのような話を期待するようだ。
私は私自身が感じるまま「エンタメ側への影響は特にないと思う。処理水放出に反対するのは反日ではないのでは」という内容の返答をした。
日本国内でも処理水放出に反対する人は少なくない。海が汚染すれば漁業関係者は生計が脅かされ、一般の人たちも健康を心配して水産物を安心して食べることができない。国境を越える問題だ。ところが韓国が反対するのを「反日」と見れば、日本対韓国の構図が形成される。日本の人たちの中には、報道を通じて「また韓国で反日運動をする」と考えて嫌韓感情を抱く人もいる。韓国と日本の市民が連帯できる問題なのに残念だ。
韓国の反日を報道する記事は日本で照会数が多い。特にエンタメ関連の記事はそうだ。例えば昨年12月、ガールズグループNiziUが反日感情のため韓国デビューが白紙になったという記事が話題になった。メンバーが日本人だからだという。日本の週刊誌のオンライン記事だった。私に「本当か」と尋ねる人も多かった。NiziUは日本ソニーミュージックと韓国JYPエンターテインメントの合同グローバルオーディションプロジェクトで誕生したグループで、メンバーは日本人だが、K-POP風のアイドルだ。オーディションプログラムは日本で放送され、日本でデビューする前から人気があった。
ところが韓国では反日感情が作動したというより、NiziUを知らない人が多いためそうなったようだ。韓国でデビューすることになっていたのか記事を探しても確認できなかった。私が見る限り誤報だ。反論記事を書いたりしたが、NiziUが韓国の反日感情のためにデビューできずかわいそうだと考える日本人も多いだろう。
いったい「反日」とは何だろうか。最近、反日について考える機会があった。日本では4月末から5月初めまで「ゴールデンウィーク」連休だ。今年は新型コロナ感染が広がり、東京・京都・大阪・兵庫の4都府県に緊急事態宣言が発令され、家で過ごす人も多いようだ。休館する映画館も多い中、ミニシアター(芸術映画館)の中には給付金も受けられず営業を続けているところもある。こうした厳しい状況の中、ミニシアターで話題になった韓国映画がある。キム・ミレ監督のドキュメンタリー映画『東アジア反日武装戦線』(日本タイトル『狼をさがして』)だ。東アジア反日武装戦線は1970年代の三菱重工業爆破事件など連続企業爆破事件を起こした日本左翼グループだ。日本帝国主義による植民地支配や労働搾取を批判する目的だったが、過激な行動のため多くの死傷者が発生し、日本ではダブー視する事件となっている。
私はキム監督と日本の配給会社が最初にミーティングをする時から通訳を務めた。実際、1982年生まれの私はよく知らない事件だったが、日本の記者らのインタビューを通訳しながら大きな関心に驚いた。もともとキム監督は「(日本では)関係者らを対象に上映会をしたい」と劇場公開まで期待していなかったが、多くのメディアが報道し、30館近い映画館で上映されることになった。
◆反日・嫌韓を利用する政治家・メディアを警戒
日本の記者らはまず「なぜ韓国の監督が日本の事件を素材に映画を制作したのか」と尋ねた。ところがキム監督は基本的に韓国の観客を考えて作ったという。「東アジア反日武装戦線を通じて韓国の加害についても考えることになった」と伝えた。日本で日本人が日本の加害について批判する構図を見て、「それまで韓国は被害国とばかり考えていたが、加害国であるかもしれないという考えになった」ということだ。例えば東南アジアに進出した韓国企業による労働搾取など、韓国人が考えるべき韓国の加害もあると考えたのが、キム監督がこの映画を作った理由の一つだ。
ある日本の記者はキム監督に対し、東アジア反日武装戦線の反日の意味を尋ねた。キム監督は「日本帝国主義に反対すること」と答えた。日本では最近、日本政府に批判的な話をすれば「反日」として売国奴扱いされる雰囲気があるが「それが本当に反日だろうか」と考えになった。日本の記者と観客がこの映画に関心を持つのは、テロという手段は間違っているが、日本帝国主義による植民地支配や労働搾取に対する批判は日本人として考え直すべき問題という意識もあるからではないだろうか。「日本人が制作すべき映画」という記者もいた。
東アジア反日武装戦線のメンバーの数人は北海道出身であり、アイヌ民族に対する差別が日本帝国主義に対する問題意識を抱く出発点だった。被害と加害の関係は国家と国家の構図でない場合もある。アイヌ民族の立場で見ると、日本に侵略された過去は、日本の植民地支配を受けた韓国とも似ているのかもしれない。反日武装戦線の前に「東アジア」がついたのはそのような連帯を想起させる。キム監督はそのような加害と被害の複雑さを映画で表現した。
「反日」や「嫌韓」は両国の政治家や照会数を増やしたいメディアによって利用されやすいという事実を忘れず国家を越えた広い視野で眺めれば、こじれるだけこじれた日韓関係を解く糸口でも見えるのではないうかと思う。
成川彩/元朝日新聞記者
韓国の友人に尋ねたところ「寿司はすでに韓国に定着しているので別に…」と言いながら首を傾げた。日本でカレーライスを見てインドと思わないのと似ているのだろうか。2019年夏に日本製品不買運動が広がった当時、ドラマに酒が出てくれば反感を抱く視聴者がいたかもしれない。
昨年7月に日本に帰国し、今年3月初めに韓国にまた来ると、日本製品不買運動がある程度落ち着いているのを感じた。帰国中も韓国に関する報道をよく見ていたが、やはり韓国に入ってくると雰囲気を実感することができた。一時は客がいなくなった日本料理店にも並んで待つ人がいて、日本のビールもまた売れている。不買運動の後、新型コロナウイルス感染症が流行して日韓間の往来が難しくなり、日本では韓国の現在の雰囲気が正確に伝えられていない。
◆「NiziU、反日のため韓国デビュー白紙」報道
それだけではない。韓国の「反日」が日本でよく報道される影響もある。その報道が事実ならやむを得ないが、誤報も多く、実際より強調されている場合が多い。
最近、私に「韓国で福島原発処理水の放出に関してエンターテインメント側に影響を及ぼしてほしい」という依頼があった。日本政府が福島原発処理水放出を決めたことで韓国で反日感情が激しくなり、エンタメ側にも影響があるだろうと考えているようだ。例えば、日本の人気アニメ映画の上映が中止になったり、そのような話を期待するようだ。
私は私自身が感じるまま「エンタメ側への影響は特にないと思う。処理水放出に反対するのは反日ではないのでは」という内容の返答をした。
日本国内でも処理水放出に反対する人は少なくない。海が汚染すれば漁業関係者は生計が脅かされ、一般の人たちも健康を心配して水産物を安心して食べることができない。国境を越える問題だ。ところが韓国が反対するのを「反日」と見れば、日本対韓国の構図が形成される。日本の人たちの中には、報道を通じて「また韓国で反日運動をする」と考えて嫌韓感情を抱く人もいる。韓国と日本の市民が連帯できる問題なのに残念だ。
韓国の反日を報道する記事は日本で照会数が多い。特にエンタメ関連の記事はそうだ。例えば昨年12月、ガールズグループNiziUが反日感情のため韓国デビューが白紙になったという記事が話題になった。メンバーが日本人だからだという。日本の週刊誌のオンライン記事だった。私に「本当か」と尋ねる人も多かった。NiziUは日本ソニーミュージックと韓国JYPエンターテインメントの合同グローバルオーディションプロジェクトで誕生したグループで、メンバーは日本人だが、K-POP風のアイドルだ。オーディションプログラムは日本で放送され、日本でデビューする前から人気があった。
ところが韓国では反日感情が作動したというより、NiziUを知らない人が多いためそうなったようだ。韓国でデビューすることになっていたのか記事を探しても確認できなかった。私が見る限り誤報だ。反論記事を書いたりしたが、NiziUが韓国の反日感情のためにデビューできずかわいそうだと考える日本人も多いだろう。
いったい「反日」とは何だろうか。最近、反日について考える機会があった。日本では4月末から5月初めまで「ゴールデンウィーク」連休だ。今年は新型コロナ感染が広がり、東京・京都・大阪・兵庫の4都府県に緊急事態宣言が発令され、家で過ごす人も多いようだ。休館する映画館も多い中、ミニシアター(芸術映画館)の中には給付金も受けられず営業を続けているところもある。こうした厳しい状況の中、ミニシアターで話題になった韓国映画がある。キム・ミレ監督のドキュメンタリー映画『東アジア反日武装戦線』(日本タイトル『狼をさがして』)だ。東アジア反日武装戦線は1970年代の三菱重工業爆破事件など連続企業爆破事件を起こした日本左翼グループだ。日本帝国主義による植民地支配や労働搾取を批判する目的だったが、過激な行動のため多くの死傷者が発生し、日本ではダブー視する事件となっている。
私はキム監督と日本の配給会社が最初にミーティングをする時から通訳を務めた。実際、1982年生まれの私はよく知らない事件だったが、日本の記者らのインタビューを通訳しながら大きな関心に驚いた。もともとキム監督は「(日本では)関係者らを対象に上映会をしたい」と劇場公開まで期待していなかったが、多くのメディアが報道し、30館近い映画館で上映されることになった。
◆反日・嫌韓を利用する政治家・メディアを警戒
日本の記者らはまず「なぜ韓国の監督が日本の事件を素材に映画を制作したのか」と尋ねた。ところがキム監督は基本的に韓国の観客を考えて作ったという。「東アジア反日武装戦線を通じて韓国の加害についても考えることになった」と伝えた。日本で日本人が日本の加害について批判する構図を見て、「それまで韓国は被害国とばかり考えていたが、加害国であるかもしれないという考えになった」ということだ。例えば東南アジアに進出した韓国企業による労働搾取など、韓国人が考えるべき韓国の加害もあると考えたのが、キム監督がこの映画を作った理由の一つだ。
ある日本の記者はキム監督に対し、東アジア反日武装戦線の反日の意味を尋ねた。キム監督は「日本帝国主義に反対すること」と答えた。日本では最近、日本政府に批判的な話をすれば「反日」として売国奴扱いされる雰囲気があるが「それが本当に反日だろうか」と考えになった。日本の記者と観客がこの映画に関心を持つのは、テロという手段は間違っているが、日本帝国主義による植民地支配や労働搾取に対する批判は日本人として考え直すべき問題という意識もあるからではないだろうか。「日本人が制作すべき映画」という記者もいた。
東アジア反日武装戦線のメンバーの数人は北海道出身であり、アイヌ民族に対する差別が日本帝国主義に対する問題意識を抱く出発点だった。被害と加害の関係は国家と国家の構図でない場合もある。アイヌ民族の立場で見ると、日本に侵略された過去は、日本の植民地支配を受けた韓国とも似ているのかもしれない。反日武装戦線の前に「東アジア」がついたのはそのような連帯を想起させる。キム監督はそのような加害と被害の複雑さを映画で表現した。
「反日」や「嫌韓」は両国の政治家や照会数を増やしたいメディアによって利用されやすいという事実を忘れず国家を越えた広い視野で眺めれば、こじれるだけこじれた日韓関係を解く糸口でも見えるのではないうかと思う。
成川彩/元朝日新聞記者
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