米国際貿易委員会（ＩＴＣ）が２年近く続いたバッテリー技術流出訴訟でＬＧエネルギーソリューションの手を上げた。ＩＴＣは１０日、ＳＫイノベーションのバッテリーと関連部品に対し米国への輸入禁止を命じた。輸入禁止期間は１０年だ。ただバッテリー供給契約をすでに結んでいるフォードとフォルクスワーゲンに対してはそれぞれ４年と２年の猶予期間を与えた。

米国工場で生産しなければならないＳＫイノベーションは今後の営業活動への打撃が避けられない見通しだ。電気自動車用バッテリー技術が急速に変化しているだけにＩＴＣが指定した１０年は業界のパラダイムが変化するほど長い時間だ。

◇ＩＴＣの決定にもＬＧとＳＫは連休中も攻防


ＩＴＣの決定にも１４日までの旧正月連休中に双方は攻防を続けた。ＬＧはＩＴＣの決定が出た直後に「ＳＫはＩＴＣの決定を受け入れ、これに合致する提案を通じて残りの訴訟を早く終えるべき。和解案を提示しない場合には米デラウェア連邦地裁で民事訴訟も断固として進める」と明らかにした。これに対しＳＫは「ＩＴＣの決定は訴訟の争点である営業秘密侵害事実を実質的に明らかにできなかった。米国でのバッテリー生産に支障がないようにして顧客保護に出たい」と答えた。

◇フォードとフォルクスワーゲンは両社の和解圧迫

ＳＫと電気自動車用バッテリー供給契約を締結した自動車メーカーは両社の「和解を促した。フォードのジム・ファーリー最高経営責任者（ＣＥＯ）は１１日、「両社の和解は米国のメーカーと労働者に最善」と話した。フォルクスワーゲンも「韓国のバッテリーメーカーの紛争のため意図していない影響を受けた。ＳＫの電気自動車用バッテリーを最小４年間利用できるようにしてほしい」と米国政府に要求した。

米国の政界では大統領の拒否権行使を要求する声も出てきた。ＳＫの工場があるジョージア州のブライアン・ケンプ知事は１２日、「ＩＴＣの決定は新型コロナウイルスで打撃を受けた雇用と製造業を危険に陥れた」と主張した。だがＩＴＣの決定を尊重する慣例によりバイデン大統領が拒否権を行使する可能性は非常に低いというのが業界の観測だ。

ＩＴＣの決定は６０日間の大統領審議期間を経て最終確定する。両社が和解できる時間として６０日が与えられた格好だ。これまで両社は水面下の交渉を数回にわたり進めたが和解には至らなかった。和解金であまりにも溝が大きかったが、両社ともＩＴＣの決定を待ち望んだ側面もある。ＩＴＣの決定により一方が和解過程で有利な立場を獲得できるからだ。

ＩＴＣが手をあげたＬＧはすぐにオンライン記者懇談会を開いてＳＫを圧迫した。ＬＧエネルギーソリューションのチャン・スンセ専務は「（ＳＫが）損害賠償を解決しなければ受注が困難になるだろう。真正性ある姿勢で交渉に臨んでこそ未来事業を継続できる」と主張した。これに対しＳＫ関係者は「合理的な条件ならばいつでも交渉に臨むだろう。訴訟を早期に終了し産業生態系と国民経済発展に向け協力しよう」として和解の可能性を開いている。

業界では両社の和解は時間の問題という見通しが出ている。ＩＴＣの決定により不確実性が解消され遅々として進まなかった交渉に速度が出るだろうという解釈だ。問題は和解金の金額だ。バッテリー業界によると、ＬＧは２兆ウォン（約１８９８億円）以上を要求しているが、ＳＫは５０００億ウォンでも多いという立場だ。

◇ＩＴＣ決定で内外のドミノ訴訟に影響

両社の和解を圧迫するのはＩＴＣの決定だけでない。ＩＴＣと別個に内外で進められている民事訴訟も両社の和解を圧迫する要因だ。民事訴訟と別に警察は産業技術保護法違反容疑でＳＫイノベーションを捜査している。これに先立ちＬＧエネルギーソリューションは２０１９年にＳＫイノベーションを営業秘密侵害容疑で警察に告訴した。

和解金とは別に両社間で深まった感情の谷を埋める宿題も残っている。財界３位と４位の企業があからさまに争うのは韓国の企業文化に照らしてみれば異例だ。財界関係者は「企業間紛争は表に出るものよりはるかに多いが、企業イメージと直結するためほとんどが水面下で静かに進められるのが一般的」と指摘した。