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【コラム】文在寅政権の「抗米援朝」視線

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
「抗米援朝」は巧妙だ。その言葉は中国の韓国戦争(朝鮮戦争)参戦スローガンだ。それは毛沢東主席の作品だ。その語彙に名分が入っている。「中国が米国に対抗して朝鮮(北朝鮮)を助けた(抗米援朝)戦争だ」。そこには3カ国しかない。韓国は抜けている。その造語は記憶を再編する。その4字は言葉の欺まん術だ。

抗米援朝の真実は鮮明だ。それは中国の韓半島武力侵攻だ。中国共産軍の銃口はどこに向かったのか。韓国軍は最初から集中標的だ。韓国人は最大の被害者だ。米軍は彼らの後順位標的だ。その言葉はとぼけたように作動する。ある瞬間、韓国は第三者に押し出された。その4字は歴史戦争の武器だ(中央SUNDAY2020年10月10日付「パク・ボギュンの現場の中へ、1・4後退のソウルを占領した毛沢東軍隊…」)。

抗米援朝は韓国戦争の第2幕だ。第1幕は金日成(キム・イルソン)主席の奇襲南侵だ。その舞台は短かった。第2幕第1章は中国共産軍の出兵だ。その日は1950年10月19日。18万の大部隊が鴨緑江(アムノッカン)の国境を越えた。第2幕は長かった。冬を3度迎えた。韓国戦争の英雄、白善ヨプ(ペク・ソンヨプ)将軍の言葉だ。「戦争3年1カ月のうち中国共産軍と戦った期間は33カ月であり、ほとんどすべてだった」。それで常識が崩れる。長い歳月ほど流血の痛みは深い。1000万人の離散家族の大半は当時の遺産だ。抗米援朝は自由統一を阻んだ。その4つの文字はずる賢い。そのような悔恨と鬱憤を避ける。


抗米援朝は毛沢東の叙事詩だ。その構成は変則と破格だ。彼は言葉から先に供給した。保家衛国(家と国を守る)--。その言葉は大衆動員の舞台にのせられた。中国人民志願軍の朝鮮出兵--。その表現は偽装術だ。実際は最精鋭正規軍(人民解放軍)だ。彼の戦略的本能は韓国軍蔑視だ。洪学智志願軍副司令官の回顧録はそれを実感させる。「(毛沢東主席は)偽軍から集中的に打撃しろといった(『抗米援朝戦争回憶』)」。偽軍(傀儡軍)とは毛の韓国軍の呼び方だ。

今年は抗米援朝70周年。10月25日は記念日だ。なぜ70年前のその日なのか。その頃、韓米軍は鴨緑江側に疾走した。仁川(インチョン)上陸→9・28ソウル収復→38度線突破の後だ。北朝鮮軍は壊滅状態だった。災難が近づいた。

待ち伏せ・包囲は中国共産軍の必勝技量。韓国軍第6師団第2連隊がそれにかかった。位置は平安北道(ピョンアンブクド)オンジョン里ヤンス洞。

中国中央(CC)TV4特集ドキュメンタリー(『抗米援朝 保家衛国』)はこう伝える。「わが軍のラン頭(先頭を防ぐ)、截尾(尻を切る)、斬腰(腰を切る)戦法で南朝鮮部隊を撃破した」(10月15日放映)。それが抗米援朝の最初の戦闘だ。歓呼の初勝戦だ。韓国戦争史には恥辱だ。その状況は不都合だ。大多数の韓国人はあまり知らない。韓国戦争専門家の大半は戦争起源論(南侵問題)にとどまっている。

抗米援朝は神話レベルだ。中華民族主義がその中で躍る。BTS(防弾少年団)の発言めぐる問題はその反映だ。BTSの受賞の感想は穏やかだった。「今年は韓国戦争70周年で、両国(韓米)が共に経験した苦難の歴史を記憶しなければいけない」(10月7日のヴァン・フリート賞)。中国ネットユーザーのBTS非難はぎこちなかった。それは「抗米」の反対側に立つなという難癖だ。国営環球時報は事態を幼稚に扱った。「文在寅(ムン・ジェイン)政権の人たち」は眺めるだけだった。

抗米援朝の4字が羽を伸ばす。習近平国家主席はその言葉に力を与えた。10月19日は中国共産軍の入朝(朝鮮進入)70年。その日、彼は北京軍事博物館(抗米援朝展覧会)に行った。習近平の発言は激しい。「70年前の、平和を守り、侵略に対抗するための歴史的決策…抗米援朝戦争の勝利は正義の勝利、平和の勝利、人民の勝利だ」。その言葉は挑発的だ。歴史解釈の排他的独占だ。

その言葉は事実の歪曲だ。韓国戦争の根源は北朝鮮の南侵だ。中国の視点では「内戦勃発」。それによって平和が崩れた。北東アジアの秩序が揺れた。鴨緑江の壊れた橋に抗米援朝記念彫刻像がある。総司令官の彭徳懐と中国共産軍が形象化された。鴨緑江を渡る直前の場面の描写だ。礎石の文字は「為了和平(平和のために)」。その文字は彫刻像の侵攻イメージと衝突する。

習近平の言葉は米国を狙う。米中の軍事・経済対立は険悪だ。彼の発言は韓国を配慮しない。韓国人の歴史的試練に背を向ける。抗米援朝による苦痛は黙殺される。それは多数の韓国人の怒りと反発を生む。文在寅政権の反応は沈黙だ。「文在寅の人たち」は第3者の傍観的姿勢だ。そのような視線で眺める。日本・米国の指導者がそうであればどか。「文在寅の人たち」は直ちに駆けつけただろう。

毛の韓国軽蔑は中国リーダーシップの遺伝子だ。毛の野心は習近平の中国の夢で復活した。それは韓半島新朝貢体制だ。国際関係の属性は人間関係と似ている。低姿勢はさらに大きな侮辱を招く。勇気と堂々たる態度が適時に要求される。それが健全な協力と交流を保障する。

北東アジアは記憶の戦場だ。文在寅政権は日本との戦線に重点を置く。中国との戦線からは敗走している。「文在寅の人たち」は中国勢力圏に編入しようとする。その姿勢は自発的だ。韓国の歴史は屈辱で汚れる。

パク・ボギュン/中央日報論説委員/コラムニスト



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