日本の次期首相が確実視される菅義偉氏の人物探求
菅義偉官房長官が安倍晋三首相の後任として確実視されている。過去7年8カ月間、安倍政権を支えてきたナンバー2だが、韓国では菅氏がどういった人物かあまりよく知られていない。国際舞台に出ないで、内政に集中する官房長官という特性のためだ。コロナ危機や米中葛藤、韓日関係悪化などの挑戦課題の中で、首相官邸の鍵を引き継ぐ菅氏とは果たしてどんな政治家なのか、いくつかのエピソードを通じてその人物像に迫ってみた。
ビジネスマンや大企業会社員を主要読者層としている時事雑誌『プレジデント』で「戦略的人生相談」という連載コーナーがある。職場の上下関係、業務成果を認められる方法などの悩みについて、紙上カウンセリングを2ページにわたって載せている。驚くべきことにカウンセラーは菅氏だ。今年5月に連載が始まると、「『ポスト安倍』を視野に露出を増やしている」と疑われたりもした。概してこのような種類の相談は「悩みを訴える人」が十分に満足できるような名答が出てくることはあまりないが、政治家・菅義偉の人生観や政治哲学、またはそれとなく自身の政治業績を前に出す「戦略的」表現が登場する。
たとえば若い会社員が「“昭和の考え方”の上司が多すぎる仕事をさせる」訴えると、菅氏は「現在自民党の税制調査会会長の甘利明先生は、事務所のスタッフがたるんでいると『菅事務所に出すぞ』と活を入れているとも聞きました」と答える。また自分にも過去に同じような過程を通ってきたとしながら「毎日、朝から晩まで歩き続けるのでいつも靴がボロボロで、見かねた支援者の方に靴をプレゼントされたこともありました。(中略)あなたの世代が抱くビジョンや、描いている未来像についての話を聞けば、上司の方もあなたの世代に会社の将来、ひいては日本の未来を託しても何の心配もない、と安心してくれるのではないでしょうか」とアドバイスもした。酒を飲まない菅氏は「24時間フル稼働政治家」として噂になったほどの仕事の虫だ。
権力闘争の宿命から抜け出すことができない政治家の中には、マキャベリを通読する人が珍しくない。菅氏も同じのようだ。菅氏は「恐れられるよりも愛されるほうがよいか、それとも逆か。……二つのうちの一つを手放さねばならないときには、愛されるよりも恐れられていたほうがはるかに安全である」と『君主論』を引用した後、官僚社会を手中に収めた秘訣として「嫌われ役」を買って出たことを挙げた。
日本の官僚は菅氏の前では強く出ることができない。「意志あれば道あり」を信条とする菅氏に「できない」という言い訳は通じない。そのうえ、高位級官僚の人事に直接関与し、従来の慣行を破壊した。安倍氏が最長寿首相になることができた秘訣の一つに、菅氏の力を借りて官僚を掌握したことが挙げられる。
ナショナリズムと歴史修正主義、右翼指向が顕著な安倍氏に比べ、菅氏は理念指向が明確ではないとの評価がある。だが、力の論理を優先するのはマキャベリストの共通点だ。菅氏は2012年に出版した自叙伝『官僚を動かせ 政治家の覚悟』でマキャベリの別の著書『政略論』の中の一節「弱体な国家は常に優柔不断である。そして決断に手間取ることは、これまた常に有害である」を引用し、「まるで今の日本に向けたかのようで慄然とします」と結んだ。結局は安倍氏と同じように「強い日本」を目指して言うべきことは言うということだ。このような志向は、今後彼が本格的に外交舞台に登場するときにさらに顕著になるだろう。菅氏が前面に出る韓日関係も小さくない波動が予想される理由だ。
◆少壮派時期から対北朝鮮強硬論者
歴史問題が韓日葛藤のアルファでありオメガであるとよく認識されているが、その他にも主要な葛藤の要因がある。中国の台頭と米中葛藤に対する対応方式、北朝鮮の核武装に対する解決方案と当面の政策など、国際情勢変化に対する戦略的差異は韓日協力を難しくさせている重要原因だ。菅氏は外交前面から一歩下がっていたが、北朝鮮政策だけは少壮議員時代からはっきりとした所信を表してきた。
前述の自叙伝『政治家の覚悟』で、菅氏が議員立法として通過させた代表的業績として掲げているものがある。2004年5月に通過した「特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法」だ。これは事実上の「万景峰号禁止法」だ。菅氏は「年間20回ほど往来する万景峰号に乗って北朝鮮統一戦線部の幹部が来て、日本で暗躍している工作員に船上で指令を下し、毎回10億~20億円の現金を北朝鮮に運ぶ役割を果たしていた。このような船が入ってくることをこれ以上放置できない」とし、官僚の反対を押し切って法案を通過させた。菅氏は自民党の「対北朝鮮経済制裁シミュレーションチーム」の座長で、山本一太氏(現群馬県知事)や河野太郎氏(現防衛相)など若手議員を率いて主導的な役割を果たした。
万景峰号禁止法だけでなく「外国為替及び外国貿易法」条項を改正し、朝鮮総連系の在日同胞企業家の対北朝鮮送金経路を断った。国連の北朝鮮制裁とは別に今まで続いている日本の独自制裁が菅氏の手によって始まったのだ。またNHKラジオ(短波)と「しおかぜ」という名前の短波放送を通じて日本人拉致問題に関する北朝鮮向け放送の実施に道筋をつけた。かなり以前から日本政治家の中で対北朝鮮強硬派の先頭で活動してきたといえる。そのような菅氏の目に北朝鮮向けビラ禁止法を制定した韓国政府の北朝鮮政策がどのように映るかは察するに難くない。北朝鮮制裁緩和、経済交流協力および人道的支援などを推進している韓国政府との北朝鮮政策共助は菅政権発足後も容易ではない展望だ。
【コラム】「次期首相有力」菅義偉氏、「力の論理」重視する土の箸とスプーンのマキャベリスト(2)
菅義偉官房長官が安倍晋三首相の後任として確実視されている。過去7年8カ月間、安倍政権を支えてきたナンバー2だが、韓国では菅氏がどういった人物かあまりよく知られていない。国際舞台に出ないで、内政に集中する官房長官という特性のためだ。コロナ危機や米中葛藤、韓日関係悪化などの挑戦課題の中で、首相官邸の鍵を引き継ぐ菅氏とは果たしてどんな政治家なのか、いくつかのエピソードを通じてその人物像に迫ってみた。
ビジネスマンや大企業会社員を主要読者層としている時事雑誌『プレジデント』で「戦略的人生相談」という連載コーナーがある。職場の上下関係、業務成果を認められる方法などの悩みについて、紙上カウンセリングを2ページにわたって載せている。驚くべきことにカウンセラーは菅氏だ。今年5月に連載が始まると、「『ポスト安倍』を視野に露出を増やしている」と疑われたりもした。概してこのような種類の相談は「悩みを訴える人」が十分に満足できるような名答が出てくることはあまりないが、政治家・菅義偉の人生観や政治哲学、またはそれとなく自身の政治業績を前に出す「戦略的」表現が登場する。
たとえば若い会社員が「“昭和の考え方”の上司が多すぎる仕事をさせる」訴えると、菅氏は「現在自民党の税制調査会会長の甘利明先生は、事務所のスタッフがたるんでいると『菅事務所に出すぞ』と活を入れているとも聞きました」と答える。また自分にも過去に同じような過程を通ってきたとしながら「毎日、朝から晩まで歩き続けるのでいつも靴がボロボロで、見かねた支援者の方に靴をプレゼントされたこともありました。(中略)あなたの世代が抱くビジョンや、描いている未来像についての話を聞けば、上司の方もあなたの世代に会社の将来、ひいては日本の未来を託しても何の心配もない、と安心してくれるのではないでしょうか」とアドバイスもした。酒を飲まない菅氏は「24時間フル稼働政治家」として噂になったほどの仕事の虫だ。
権力闘争の宿命から抜け出すことができない政治家の中には、マキャベリを通読する人が珍しくない。菅氏も同じのようだ。菅氏は「恐れられるよりも愛されるほうがよいか、それとも逆か。……二つのうちの一つを手放さねばならないときには、愛されるよりも恐れられていたほうがはるかに安全である」と『君主論』を引用した後、官僚社会を手中に収めた秘訣として「嫌われ役」を買って出たことを挙げた。
日本の官僚は菅氏の前では強く出ることができない。「意志あれば道あり」を信条とする菅氏に「できない」という言い訳は通じない。そのうえ、高位級官僚の人事に直接関与し、従来の慣行を破壊した。安倍氏が最長寿首相になることができた秘訣の一つに、菅氏の力を借りて官僚を掌握したことが挙げられる。
ナショナリズムと歴史修正主義、右翼指向が顕著な安倍氏に比べ、菅氏は理念指向が明確ではないとの評価がある。だが、力の論理を優先するのはマキャベリストの共通点だ。菅氏は2012年に出版した自叙伝『官僚を動かせ 政治家の覚悟』でマキャベリの別の著書『政略論』の中の一節「弱体な国家は常に優柔不断である。そして決断に手間取ることは、これまた常に有害である」を引用し、「まるで今の日本に向けたかのようで慄然とします」と結んだ。結局は安倍氏と同じように「強い日本」を目指して言うべきことは言うということだ。このような志向は、今後彼が本格的に外交舞台に登場するときにさらに顕著になるだろう。菅氏が前面に出る韓日関係も小さくない波動が予想される理由だ。
◆少壮派時期から対北朝鮮強硬論者
歴史問題が韓日葛藤のアルファでありオメガであるとよく認識されているが、その他にも主要な葛藤の要因がある。中国の台頭と米中葛藤に対する対応方式、北朝鮮の核武装に対する解決方案と当面の政策など、国際情勢変化に対する戦略的差異は韓日協力を難しくさせている重要原因だ。菅氏は外交前面から一歩下がっていたが、北朝鮮政策だけは少壮議員時代からはっきりとした所信を表してきた。
前述の自叙伝『政治家の覚悟』で、菅氏が議員立法として通過させた代表的業績として掲げているものがある。2004年5月に通過した「特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法」だ。これは事実上の「万景峰号禁止法」だ。菅氏は「年間20回ほど往来する万景峰号に乗って北朝鮮統一戦線部の幹部が来て、日本で暗躍している工作員に船上で指令を下し、毎回10億~20億円の現金を北朝鮮に運ぶ役割を果たしていた。このような船が入ってくることをこれ以上放置できない」とし、官僚の反対を押し切って法案を通過させた。菅氏は自民党の「対北朝鮮経済制裁シミュレーションチーム」の座長で、山本一太氏(現群馬県知事)や河野太郎氏(現防衛相)など若手議員を率いて主導的な役割を果たした。
万景峰号禁止法だけでなく「外国為替及び外国貿易法」条項を改正し、朝鮮総連系の在日同胞企業家の対北朝鮮送金経路を断った。国連の北朝鮮制裁とは別に今まで続いている日本の独自制裁が菅氏の手によって始まったのだ。またNHKラジオ(短波)と「しおかぜ」という名前の短波放送を通じて日本人拉致問題に関する北朝鮮向け放送の実施に道筋をつけた。かなり以前から日本政治家の中で対北朝鮮強硬派の先頭で活動してきたといえる。そのような菅氏の目に北朝鮮向けビラ禁止法を制定した韓国政府の北朝鮮政策がどのように映るかは察するに難くない。北朝鮮制裁緩和、経済交流協力および人道的支援などを推進している韓国政府との北朝鮮政策共助は菅政権発足後も容易ではない展望だ。
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