日本のある週刊誌が「安倍氏の辞任を最も歓迎しているのは韓国かもしれない」と書いた。隣国の指導者の不幸の前で、あからさまに表現することがはばかられる韓国人の胸の内を読んだものでないかと思う。日本国内や国際社会の総体的評価とは別に、韓国人は最悪の韓日関係にした張本人として安倍氏を記憶している。歴史修正主義と強固なナショナリズムに根ざした安倍氏の挑発的行動と政策が、韓国人の気持ちを不快なものにし、自国で開いたG20サミットの時には文在寅(ムン・ジェイン)大統領との会談を拒否して仲間はずれにした露骨な「韓国たたき」が怒りを呼んだ。昨年の輸出規制を契機に起きた不買運動スローガンが「ノージャパン(NO JAPAN)」から「ノー安倍」に変わったのは、そのような怒りを代弁している。経緯がどうであれ、「ノー安倍」は成功したので、韓日関係は改善だけが残っているという期待感が巷にはあるようだ。辞任発表直後、参謀陣の反対を押し切って発表したという文大統領のメッセージからもそのような期待を読むことができる。そうなれば良いが現実は簡単でない。
何よりも日本社会全般の雰囲気が変化した点をわれわれは冷静に認識しなければならない。過去、日本の政治を説明するときには「振子の法則」というものがあった。時計の重りが左右に動くように、日本有権者の投票心が今回は保守右派、次の選挙はリベラル(あるいは進歩)に行ったり来たりするということだ。自民党の中でも穏健リベラルと強硬タカ派がバランスを取っていたのが派閥政治だった。だが、過去20数年間で振り子の中心軸そのものが大きく右側に移動した結果、重りの方向と振幅は無意味になった。自民党は代表的なタカ派である清和会(現細田派)の独走が普通のことになり、派閥間の色の違いも消えてしまった。合理的で謙虚な歴史認識所有者や改憲党論に反対する政治家は立つ瀬がない。野党はもっと支離滅裂だ。そのため安倍氏が退いても、第2、第3の安倍氏が登場するよりほかはない。それが今の日本政界の現実で、社会全般の雰囲気だ。いわゆる「主流の交代」が確固として実現したのだ。日本と戦って最後までいこうが、話し合いで問題を解決して和解しようが、一応このような日本国内の事情を正確に把握しておくことが優先だ。
もう一つ深刻な問題は、日本国内で親韓派が消滅直前になった点だ。たとえ残っていたとしても、自分の主張をするのが難しい雰囲気だ。これは日本のせいばかりにするのはなく、韓国側にも問題がないかどうか振り返らなくてはならないことだ。親韓でも反韓でもなかったが、最近になり確実な反韓に立場を固めた人も珍しくない。次期首相として有力な菅義偉官房長官もそのような部類に属すると考える。昨年、東京で会った政界消息筋によると、菅氏は自身の作品といえる慰安婦合意を文在寅政府が、事実上覆したことに対して反感と失望を私席で表したことがあるという。「李丙ギ(イ・ビョンギ)-菅義偉」ラインを稼動させて注ぎ込んだ努力が水泡に帰したことに対し、反発心が非常に深いということだ。
このように、韓日両国政府の間には抜け出すことが難しい不信のドロ沼が横たわっている。永遠に恨み合いながら生きていくつもりなら関係ないが、そうでないのなら両国の指導者が立ち上がって打開するしかない。「相手のせいだ」と言って相手の立場が変わることだけを待つのではなく、自分のほうが先に変わることができるという開かれた姿勢が必要だ。第2、第3の安倍氏が登場しても懐に迎えていくべきだということだ。金大中(キム・デジュン)元大統領は、韓国内の反日感情が大きかった1998年、過去を乗り越えて未来志向的な関係への転換を盛り込んだ韓日パートナーシップ宣言を採択して日本大衆文化を開放した。執権以前から長く準備してきた所信から始まったことだったが、これを実践に導いたのは反対世論を直接説得する勇気といばらの道ともいえる交渉を愚直に続けてきた忍耐心だった。日本の新政府発足は文在寅大統領にも勇気と忍耐心を発揮する契機を提供することができる。
イェ・ヨンジュン/論説委員
何よりも日本社会全般の雰囲気が変化した点をわれわれは冷静に認識しなければならない。過去、日本の政治を説明するときには「振子の法則」というものがあった。時計の重りが左右に動くように、日本有権者の投票心が今回は保守右派、次の選挙はリベラル(あるいは進歩)に行ったり来たりするということだ。自民党の中でも穏健リベラルと強硬タカ派がバランスを取っていたのが派閥政治だった。だが、過去20数年間で振り子の中心軸そのものが大きく右側に移動した結果、重りの方向と振幅は無意味になった。自民党は代表的なタカ派である清和会(現細田派)の独走が普通のことになり、派閥間の色の違いも消えてしまった。合理的で謙虚な歴史認識所有者や改憲党論に反対する政治家は立つ瀬がない。野党はもっと支離滅裂だ。そのため安倍氏が退いても、第2、第3の安倍氏が登場するよりほかはない。それが今の日本政界の現実で、社会全般の雰囲気だ。いわゆる「主流の交代」が確固として実現したのだ。日本と戦って最後までいこうが、話し合いで問題を解決して和解しようが、一応このような日本国内の事情を正確に把握しておくことが優先だ。
もう一つ深刻な問題は、日本国内で親韓派が消滅直前になった点だ。たとえ残っていたとしても、自分の主張をするのが難しい雰囲気だ。これは日本のせいばかりにするのはなく、韓国側にも問題がないかどうか振り返らなくてはならないことだ。親韓でも反韓でもなかったが、最近になり確実な反韓に立場を固めた人も珍しくない。次期首相として有力な菅義偉官房長官もそのような部類に属すると考える。昨年、東京で会った政界消息筋によると、菅氏は自身の作品といえる慰安婦合意を文在寅政府が、事実上覆したことに対して反感と失望を私席で表したことがあるという。「李丙ギ(イ・ビョンギ)-菅義偉」ラインを稼動させて注ぎ込んだ努力が水泡に帰したことに対し、反発心が非常に深いということだ。
このように、韓日両国政府の間には抜け出すことが難しい不信のドロ沼が横たわっている。永遠に恨み合いながら生きていくつもりなら関係ないが、そうでないのなら両国の指導者が立ち上がって打開するしかない。「相手のせいだ」と言って相手の立場が変わることだけを待つのではなく、自分のほうが先に変わることができるという開かれた姿勢が必要だ。第2、第3の安倍氏が登場しても懐に迎えていくべきだということだ。金大中(キム・デジュン)元大統領は、韓国内の反日感情が大きかった1998年、過去を乗り越えて未来志向的な関係への転換を盛り込んだ韓日パートナーシップ宣言を採択して日本大衆文化を開放した。執権以前から長く準備してきた所信から始まったことだったが、これを実践に導いたのは反対世論を直接説得する勇気といばらの道ともいえる交渉を愚直に続けてきた忍耐心だった。日本の新政府発足は文在寅大統領にも勇気と忍耐心を発揮する契機を提供することができる。
イェ・ヨンジュン/論説委員
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