類例のない長い梅雨と集中豪雨で土砂崩れや河川氾濫などの災害が続出する中で、１０日、台風５号「チャンミー（ＪＡＮＧＭＩ）」が慶尚南道（キョンサンナムド）地方を横切り、航空機と船舶にも欠航などの被害をもたらした。蟾津江（ソンジンカン）・栄山江（ヨンサンガン）の水系が氾濫しながら、この一帯だけで２０００人余りの罹災民が発生した。洪水被害に加えて台風まで襲来し、一部地域では復旧作業に支障をきたした。

１０日午前、慶尚南道河東郡花開市場（ハドングン・ファゲジャント）。水魔がなめ尽くした痕には泥水で使い物にならなくなった家財道具がごろごろしていた。商人会のキム・ユヨル会長（５８）が「浸水被害の復旧だけで１０日以上かかる予定だったが、そのうえ台風まで襲来するとは心配が山積している」と訴えた。黄江（ファンガン）の川辺に位置する慶尚南道陜川郡双冊面巾台村（ハプチョングン・サンチェクミョン・コンテマウル）で韓牛１３０頭を飼育しているチョン・ソンチョルさん（５６）は台風北上のニュースを聞き、この日午前トラクターを動員して水害で死んだ牛２０頭の片付けに追われた。チョンさん夫婦は「３分の２程度が水に浸った住宅は、壁が崩れて泥水が流入しているが、人手不足で何も手がつけられない」と話した。

台風５号がこの日済州（チェジュ）東の海上を通過して慶尚南道を横切りながら、南部地方各地に１００ミリを越える多くの雨を降らせた。一番最初に台風の影響圏に入った済州では航空機２２便が欠航したほか、船舶も足止めを余儀なくされた。高波によって海水浴場はすべて立入禁止となった。


台風は済州を通過し、この日午後２時５０分ごろ、慶尚南道巨済島（コジェド）南端に上陸した。慶尚南道に上陸しながら急激に勢力が弱まり、この日午後５時ごろに消滅した。懸念した大きな被害は追加で発生しなかった。しかし台風の影響で、この日午後２時基準で金海（キムヘ）空港では国内線６３便の運航がキャンセルとなった。また、釜山（プサン）港に船舶６５０余隻が被港し、釜山と済州を行き来する旅客船の入出港も統制された。蔚山（ウルサン）でも午後３時から台風の影響圏に入るという予報が伝えられて船舶がいっせいに待避した。

中央災難（災害）安全対策本部はこの日、台風の影響で河川が氾濫することを憂慮し、全国各地の低地帯居住住民に対して避難を呼びかけた。この日午後４時基準、蟾津江近隣の全羅南道谷城邑（チョルラナムド・コクソン）・梧谷面（オゴクミョン）の住民９５４人が体育館や近くの高校に避難して身を守った。求礼邑（クレウプ）などでも住民５６３人が中学校に避難したほか、咸平郡（ハムピョングン）など栄山江水系近隣の地域住民１１２人も敬老堂や教会などに一時避難をした。慶尚南道河東や陜川、昌寧（チャンニョン）などの住民１４７人も追加の雨の被害を憂慮して避難所に移動した。江原（カンウォン）地域でも漢灘江（ハンタンガン）の水位が高まったことを受けて住民２１８世帯３８９人が避難した。

対策本部によると、１日から続いた集中豪雨で、この日午後３時基準で全国１１市道で合計６９７６人に達する罹災民が発生した。また、同じ期間３１人が死亡して１１人が行方不明になるなど人命被害が相次いだ。

益山（イクサン）地方国土管理庁はこの日午前から大雨で流失した全羅北道南原市金池面（チョルラブクド・ナムォンシ・クムジミョン）一帯の蟾津江堤防に対する応急復旧作業を開始した。益山国土庁関係者は「応急復旧は流失した堤防に土砂などが入った麻袋を積み上げる形で行われ、少なくとも２～３日は必要とされると予想する」と話した。流失した洛東江（ナクトンガン）の堤防も復旧作業に入った。洛東江の堤防を委託管理している水資源公社は、この日午前７時３０分から堤防の幅と高さを従来あった堤防に合わせて復旧作業を急いだ。水資源公社関係者は「台風が来ても、午後８時までに完全復旧後、シートなどをかぶせる防水布作業まで終える計画」と話した。

丁世均（チョン・セギュン）首相はこの日、政府ソウル庁舎で集中豪雨被害および対処状況点検会議に出席して「全国各地を襲った集中豪雨による傷痕が癒える前に台風が接近し、罹災民だけではなく国民も大いに心配している」と話した。

一方、江原道春川（チュンチョン）の衣岩湖（ウィアムホ）船舶転覆事故から５日目を迎えたこの日も、引き続き行方不明者の捜索作業が行われた。この日午前７時５０分ごろ、行方が分からなくなっている５人のうち１人、春川市庁の公務員がダムから２キロ離れたところから遺体で発見された。