韓国の文化体育観光部が危機の旅行会社を支援するとして予算90億ウォン(約8億円)を反映した「国内旅行早期予約割引商品支援事業」が訴訟にぶつかった。それも支援を受ける旅行会社が事業取り消し請求訴訟を起こしたのだ。どういうことなのか。主な争点を整理した。
◆最大9万ウォン支援
支援事業は韓国旅行業協会(KATA)が主管する。文化体育観光部が委嘱した。事業は次のような過程を踏む。まず、国民が30%割引価格で旅行商品を予約できるイベントサイトが今月末にオープンする。
サイトで販売する旅行商品は別の公募で選定する。全1000件以上の商品が選ばれると文化体育観光部は予想している。旅行会社はこのサイトで最大6件まで商品を販売できる。サイトで国民が割引価格で商品を購入すれば正常価格と差額が発生する。この差額を個別商品1人基準で最大9万ウォンまで支援する。最大6万ウォンは文化体育観光部の支援金で、残りの最大3万ウォンは地方自治体の支援金と旅行会社の割引額で補填する。文化体育観光部はこの事業で最大15万人が割引を受けると見込んでいる。
◆協会の資格
中小旅行会社の「イーエル」と「テイアウッ」が7月21日、この事業の取り消しを求めてソウル行政裁判所に訴訟を起こした。両社が最も問題視したのは事業を主管するKATAの資格だ。▼文化体育観光部が法的な根拠なく事業をKATAに委嘱した▼KATAは全国旅行会社を代表せず、一介の事業者団体にすぎない▼今回の事業がKATA会員会社だけに有利であり不公正--というのが主な理由だ。イーエルのユ・イルハン代表は「全国の旅行会社は約2万社だが、KATAは会員会社が619社にすぎない」とし「文化体育観光部はKATAが協会認可条件も満たしていないのに黙認している」と主張した。
文化体育観光部の立場は違う。文化体育観光部は3日、KATAに事業を委託したのは法的に問題がないという釈明資料も出した。文化体育観光部のシン・ヨンシク観光基盤課長は「KATAは観光振興法に基づき文化体育観光部から承認を受けた旅行業関連の唯一の業種別協会」とし「1999年からさまざまな公共事業を遂行してきた」と説明した。
KATAのチェ・チャンウ局長は「8月4日現在、KATA会員会社は計1229社」とし「619社は2018年に会費を完納して会長投票権を持つ会員会社数」と説明した。とはいえ、KATA会員会社が旅行会社全体の10%にならないのは事実だ。
◆「不公正」の声
訴訟を起こした旅行会社は公募基準自体が地方の中小旅行会社に不利だと主張する。事業公告文に明示された「優秀旅行会社受賞実績」「旅行者保険加入など安全対応」「地方旅行会社との協業」などの公募基準が地方の中小旅行会社に比べて売上と実績が多いソウルの大型旅行会社に有利な条件ということだ。結局、KATAの核心会員会社であるソウルの大手旅行会社ばかりが恩恵を受けるという指摘だ。
KATAと文化体育観光部は一つ一つ反論している。KATAのソ・テフン部長は「旅行業登録2年以上の企業はどこでも参加でき、会員会社を優待することはない」とし「優秀旅行会社はKATAが選定する会社でなく、自治体が選定する会社または各種受賞経歴を意味する」と説明した。文化体育観光部のチェ・ボグン観光局長も「外部の専門家が審査するためKATAは一切関与できない」とし「公正な審査を通じて地域旅行会社も事業に参加させる」と強調した。
文化体育観光部の釈明にもかかわらず、原告側の弁護士は事業自体が不公正という立場だ。法務法人ヒョンのパク・ジフン弁護士は「審査基準がソウル所在の大手旅行会社に有利に構成されているだけでなく、審査の過程と結果を公開しない」とし「地方の中小旅行会社には絵に描いた餅」と批判した。
◆実効性は?
訴訟とは別に事業の実効性に疑問を提起する観光業界の意見もある。匿名を求めた大手旅行会社のある役員は「個別旅行商品で見ると割引額が大きく、旅行会社に入る収益は大きくないはず」とし「最大6件の商品が可能というが、わが社はそこまでしないだろう」と話した。
さらにこの事業は「先に割引、後に支援」方式だ。中小旅行会社だけでなく新型コロナで直撃弾を受けた大手旅行会社も資金繰りが厳しい状況だ。ある中小旅行会社代表は「テナント料も出せない旅行会社が続出している」とし「むしろ災難支援金のように直接支援する方式がよい」と語った。
◆「発想の転換」必要
今年2月1日から8月4日までに旅行会社443社が閉鎖した。2018年の同じ期間には旅行会社491社が、前年同期には469社が廃業した(行政安全部)。史上最悪の危機というが、旅行会社の生存率はむしろ高まった。なぜか。政府の雇用維持支援金が廃業を遅らせているからだ。6カ月間にわたり仕事がなくても旅行会社はそれほど閉鎖していない。
新型コロナは旅行生態系の体質転換を要求する。知らない人と共に移動や食事をする空間を避ける世の中だ。過去のようなパッケージ旅行はもう有効でない。しかし政府支援事業は依然として予算配分に焦点が置かれている。今回の支援事業審査項目にも「アンタクト(非対面)観光地発掘」「アンタクト旅程開発」が抜けたのは惜しまれる。カン・ウヒョン南怡島(ナミソム)副会長はこう指摘した。
「旅行をするには命をかけなければいけない世の中で、旅行で儲けようとするにはどうすべきなのか。旅行業者も命がけでなければいけない。日々延命しようとする旅行業界も情けなく、わずかな予算で目の前の危機だけを割けようとする政府も残念だ。発想の転換が必要だ」。
◆最大9万ウォン支援
支援事業は韓国旅行業協会(KATA)が主管する。文化体育観光部が委嘱した。事業は次のような過程を踏む。まず、国民が30%割引価格で旅行商品を予約できるイベントサイトが今月末にオープンする。
サイトで販売する旅行商品は別の公募で選定する。全1000件以上の商品が選ばれると文化体育観光部は予想している。旅行会社はこのサイトで最大6件まで商品を販売できる。サイトで国民が割引価格で商品を購入すれば正常価格と差額が発生する。この差額を個別商品1人基準で最大9万ウォンまで支援する。最大6万ウォンは文化体育観光部の支援金で、残りの最大3万ウォンは地方自治体の支援金と旅行会社の割引額で補填する。文化体育観光部はこの事業で最大15万人が割引を受けると見込んでいる。
◆協会の資格
中小旅行会社の「イーエル」と「テイアウッ」が7月21日、この事業の取り消しを求めてソウル行政裁判所に訴訟を起こした。両社が最も問題視したのは事業を主管するKATAの資格だ。▼文化体育観光部が法的な根拠なく事業をKATAに委嘱した▼KATAは全国旅行会社を代表せず、一介の事業者団体にすぎない▼今回の事業がKATA会員会社だけに有利であり不公正--というのが主な理由だ。イーエルのユ・イルハン代表は「全国の旅行会社は約2万社だが、KATAは会員会社が619社にすぎない」とし「文化体育観光部はKATAが協会認可条件も満たしていないのに黙認している」と主張した。
文化体育観光部の立場は違う。文化体育観光部は3日、KATAに事業を委託したのは法的に問題がないという釈明資料も出した。文化体育観光部のシン・ヨンシク観光基盤課長は「KATAは観光振興法に基づき文化体育観光部から承認を受けた旅行業関連の唯一の業種別協会」とし「1999年からさまざまな公共事業を遂行してきた」と説明した。
KATAのチェ・チャンウ局長は「8月4日現在、KATA会員会社は計1229社」とし「619社は2018年に会費を完納して会長投票権を持つ会員会社数」と説明した。とはいえ、KATA会員会社が旅行会社全体の10%にならないのは事実だ。
◆「不公正」の声
訴訟を起こした旅行会社は公募基準自体が地方の中小旅行会社に不利だと主張する。事業公告文に明示された「優秀旅行会社受賞実績」「旅行者保険加入など安全対応」「地方旅行会社との協業」などの公募基準が地方の中小旅行会社に比べて売上と実績が多いソウルの大型旅行会社に有利な条件ということだ。結局、KATAの核心会員会社であるソウルの大手旅行会社ばかりが恩恵を受けるという指摘だ。
KATAと文化体育観光部は一つ一つ反論している。KATAのソ・テフン部長は「旅行業登録2年以上の企業はどこでも参加でき、会員会社を優待することはない」とし「優秀旅行会社はKATAが選定する会社でなく、自治体が選定する会社または各種受賞経歴を意味する」と説明した。文化体育観光部のチェ・ボグン観光局長も「外部の専門家が審査するためKATAは一切関与できない」とし「公正な審査を通じて地域旅行会社も事業に参加させる」と強調した。
文化体育観光部の釈明にもかかわらず、原告側の弁護士は事業自体が不公正という立場だ。法務法人ヒョンのパク・ジフン弁護士は「審査基準がソウル所在の大手旅行会社に有利に構成されているだけでなく、審査の過程と結果を公開しない」とし「地方の中小旅行会社には絵に描いた餅」と批判した。
◆実効性は?
訴訟とは別に事業の実効性に疑問を提起する観光業界の意見もある。匿名を求めた大手旅行会社のある役員は「個別旅行商品で見ると割引額が大きく、旅行会社に入る収益は大きくないはず」とし「最大6件の商品が可能というが、わが社はそこまでしないだろう」と話した。
さらにこの事業は「先に割引、後に支援」方式だ。中小旅行会社だけでなく新型コロナで直撃弾を受けた大手旅行会社も資金繰りが厳しい状況だ。ある中小旅行会社代表は「テナント料も出せない旅行会社が続出している」とし「むしろ災難支援金のように直接支援する方式がよい」と語った。
◆「発想の転換」必要
今年2月1日から8月4日までに旅行会社443社が閉鎖した。2018年の同じ期間には旅行会社491社が、前年同期には469社が廃業した(行政安全部)。史上最悪の危機というが、旅行会社の生存率はむしろ高まった。なぜか。政府の雇用維持支援金が廃業を遅らせているからだ。6カ月間にわたり仕事がなくても旅行会社はそれほど閉鎖していない。
新型コロナは旅行生態系の体質転換を要求する。知らない人と共に移動や食事をする空間を避ける世の中だ。過去のようなパッケージ旅行はもう有効でない。しかし政府支援事業は依然として予算配分に焦点が置かれている。今回の支援事業審査項目にも「アンタクト(非対面)観光地発掘」「アンタクト旅程開発」が抜けたのは惜しまれる。カン・ウヒョン南怡島(ナミソム)副会長はこう指摘した。
「旅行をするには命をかけなければいけない世の中で、旅行で儲けようとするにはどうすべきなのか。旅行業者も命がけでなければいけない。日々延命しようとする旅行業界も情けなく、わずかな予算で目の前の危機だけを割けようとする政府も残念だ。発想の転換が必要だ」。
この記事を読んで…