文在寅（ムン・ジェイン）大統領は故・朴元淳（パク・ウォンスン）ソウル市長と白善ヨプ（ペク・ソニョプ）将軍の葬儀室を訪れなかった。代わりに「大統領文在寅」名義の弔花を送り、盧英敏（ノ・ヨンミン）大統領秘書室長が弔問した。結果的に、分かれた弔問政局でどちらも選ばなかったわけだ。

政治指導者が亡者に礼を尽くす方式はそれこそ政治的メッセージになる。李明博（イ・ミョンバク）政府時代だった２０１１年１２月、金正日（キム・ジョンイル）北朝鮮総書記死去当時、政府次元の弔問団を北朝鮮に送らなかった事例が代表的だ。天安（チョナン）艦事件（２０１０年３月）と延坪島（ヨンピョンド）砲撃事件（２０１０年１１月）に対して謝罪しない北朝鮮に向かった強硬なメッセージだった。

文大統領が就任以降直接弔問したのは３回目だ。２０１８年１月密陽（ミリャン）火災惨事の合同焼香所を訪れた。２０１９年１月には旧日本軍慰安婦被害者である故・金福童（キム・ボクドン）さんの葬儀室に弔問し、その年１２月には消防ヘリコプターの墜落事故で殉職した消防航空隊員５人の告別式に参加した。２０１８年６月金鍾泌（キム・ジョンピル）元首相が死去した時は弔問しなかった。


朴市長と白将軍の葬儀室を弔問しなかった文大統領の選択は二人の故人をめぐるセクハラ疑惑と親日行跡の論議を考慮して機械的にバランスを取ったものと分析される。一部では「無条件的な中立で政府の葛藤調整機能を事実上無力化した」という指摘もある。

野党では文大統領に白将軍に対する優遇を求めている。未来統合党のチュ・ホヨン院内代表はこの日、国会で開かれた党会議で「国軍統帥権者である文在寅大統領が是非創軍元老であり国を救った愛国者である白将軍を弔問することを求める」と話した。キム・ジョンイン非常対策委員長は「白将軍は６・２５韓国戦争（朝鮮戦争）の危うい状態に立たされた国を救うために輝かしい功績をたてた方」とし「白善ヨプ将軍の埋葬地をめぐって政界がこうのどうの言うことを見て果たしてわが国が正常な国なのか考えた」と指摘した。

白将軍に対する追慕と哀悼に韓国より米国政府がさらに先頭に立っていることから見ても文大統領の「不作為」はアイロニーだ。米国家安保会議（ＮＳＣ）はこの日、公式ツイッターアカウントに哀悼声明を掲載して「韓国は１９５０年代共産主義の侵略を撃退するためにすべてを捧げた白善ヨプ将軍とその他英雄のおかげで今日繁栄した民主共和国になった」として「われわれは彼の遺産に敬意を表わす」と明らかにした。ＮＳＣは『釜山（プサン）から板門店（パンムンジョム）まで：韓国軍最初４星将軍の戦時回顧録』という題名の白善ヨプ将軍の英文の回顧録表紙の写真もともに掲載した。ロバート・エイブラムス韓米連合司令官兼在韓米軍司令官はこの日、ソウル牙山（アサン）病院に用意された白将軍の葬儀室を訪れて挙手の敬礼で弔意を表わした。

ボイス・オブ・アメリカ（ＶＯＡ）放送ではバーウェル・ベル元在韓米軍司令官（２００６～２００８年再任）が「白将軍は米国独立戦争を勝利に導いたジョージ・ワシントンのような韓国軍の父」と哀悼した。ジョン・ティレリ元司令官（１９９６～１９９９年）は「白長官は誰より部下を愛した指揮官」と追悼し、ジェームズ・シャーマン元司令官（２０１１～２０１３年）も「彼は私の近い友人であり師匠だった。韓半島（朝鮮半島）の恒久的な平和と安保に非常に献身して信頼を受けた指導者として白将軍は自由と犠牲の価値が何を意味するかよく分かっていた」とした。ヴィンセント・ブルックス前司令官（２０１６～２０１８年）は「彼の他界は韓米同盟において大きな損失であり、真の歴史の一部分が消えたこと」とし「彼が戦争を指揮する時、彼を尊敬してともに服務して先にこの世を去った戦友らとともに永遠の安息を得ることを願う」と話した。