3日、北朝鮮軍が江原道鉄原(カンウォンド・チョルウォン)の非武装地帯(DMZ)で韓国の監視哨所(GP)に向けて14.5ミリ機関銃で射撃した。これに対し韓国国防部は北朝鮮軍のGP銃撃を一切の敵対行為を全面中止することにした9・19南北軍事合意を違反したと指摘し、北朝鮮に公式釈明を要求した。しかし5日後の8日、北朝鮮は人民武力省報道官の談話で、(韓国側)空軍と海軍が6日に西海(ソヘ、黄海)で実施した合同防御訓練を「軍事対決の極限状態」と非難した。そして「すべてが2018年の南北首脳会談以前の原点に戻っている」とし「南北軍事合意に対する全面的な逆行であり露骨な背信行為」と主張した。
北朝鮮が非難した西海合同防御訓練は2015年から毎年実施している訓練だ。敵が西海で艦艇を攻撃する場合、海・空軍が共に反撃するシナリオで進める。しかし北朝鮮の談話には3日の銃撃に関する内容は一文字もなかった。北朝鮮はむしろ因縁をつけて韓国を非難したのだ。
北朝鮮の厚かましさは国防部の原罪と同じだ。国防部の内外では国防部のローキー(low-key)基調のためという指摘が多い。ローキーはもともと写真・放送で意図的に写真を暗くしたり、暗い画面の雰囲気を演出する技法だ。国防部が北朝鮮に対してローキーを維持するというのは、北朝鮮を刺激する発表を控えることを意味する。2018年の3回の南北首脳会談による南北和解ムードの火が軍事的衝突で消えてしまわないよう気をつけるというのが国防部の意図だ。ところが国防部のローキーは度が過ぎるうえ、北朝鮮に対する低姿勢として映るケースが多かった。
銃撃事件の当日、軍当局のバックグラウンド(非公開)ブリーフィングが代表的な例だ。当時のブリーフィングを担当した軍関係者は銃撃事件の概要を説明した後、「現場指揮官の判断」という前提で▼霧がかかって視界が良くなかった▼北朝鮮軍の勤務交代時間だった▼銃撃前後に北朝鮮軍の特異動向はなかったーーなどの事実を羅列した。
「銃撃が、挑発か、誤射か」という質問が出る前から、軍関係者が親切にも意図的な銃撃ではないと先に知らせたのだ。その後、国防部と軍当局は一様に「銃撃に意図性はない」という立場を表した。また対応射撃の過程を詳細に説明してほしいという記者の要求に対しては「関連調査が終ってから公開する」と答えた。調査が終わっていないにもかかわらず偶発的な銃撃という結論を出したということだ。これを見ると、国防部と軍当局のローキーが果たして何のためのものかが気になる。政府の南北交渉を支援するレベルではなく、北朝鮮の反応を気にしているという考えを抱かせる。
昨年の「発射体」をめぐる論争は国防部のローキーの弊害を見せている。北朝鮮は昨年13回も弾道ミサイルを発射した。軍当局は当初これを「発射体」と表現していたが、後に「ミサイル」と評価した。弾道ミサイルなら2018年の南北、米朝会談の成果が崩れたと見なすことができ、射程距離に関係なく国連安全保障理事会決議違反だった。これを意識した軍当局は弾道ミサイルと認めるのが難しかったのだ。後に軍当局は13回すべて弾道ミサイルという資料をさりげなく国会に提出した。韓国の最大の脅威である北朝鮮の弾道ミサイルをまともに分析することができなくなるところだった。
高高度無人偵察機グローバルホークを導入する過程でもローキーの雑音が聞こえた。20キロの高度から地上30センチの大きさの物体を区別できるグローバルホークは、北朝鮮だけでなく周辺国を相手にするうえで必要だ。国防部と軍当局はグローバルホークが韓国に到着した事実を隠した。関連記事が出ると、大々的な保安調査を始めて口封じをした。8800億ウォン(約800億円)以上の導入予算を出した国民の知る権利は無視された。
軍内部からも北朝鮮の反応を気にしてグローバルホークを隠しているという声が出てきた。このような過敏対応はグローバルホークが結局、北朝鮮を狙う武器であることを国防部が立証しているのと変わらない。徹底的なセキュリティーの中でも空軍基地の周辺で夜を明かした写真記者が滑走路に着陸したグローバルホークを撮影した。ハリー・ハリス駐韓米大使はツイッターに格納庫に保管中のグローバルホークの写真を載せて国防部を困惑させた。
国防部が自らこのように行動するため、北朝鮮がむしろ当惑するという解釈が出ている。北朝鮮が挑発すれば韓国が反発してこそ挑発の効果がある。しかし韓国が何もなかったかのように行動するため、北朝鮮の立場では挑発の意味が薄れる。国防部と軍当局が突然、北朝鮮の挑発を抑止しようと虚虚実実戦術を駆使したわけではないはずだ。「沈黙は金なり」という格言がある。しかし決然とした行動がない沈黙は弱さに対する苦しい弁解にすぎない。
イ・チョルジェ/軍事安保研究所長
北朝鮮が非難した西海合同防御訓練は2015年から毎年実施している訓練だ。敵が西海で艦艇を攻撃する場合、海・空軍が共に反撃するシナリオで進める。しかし北朝鮮の談話には3日の銃撃に関する内容は一文字もなかった。北朝鮮はむしろ因縁をつけて韓国を非難したのだ。
北朝鮮の厚かましさは国防部の原罪と同じだ。国防部の内外では国防部のローキー(low-key)基調のためという指摘が多い。ローキーはもともと写真・放送で意図的に写真を暗くしたり、暗い画面の雰囲気を演出する技法だ。国防部が北朝鮮に対してローキーを維持するというのは、北朝鮮を刺激する発表を控えることを意味する。2018年の3回の南北首脳会談による南北和解ムードの火が軍事的衝突で消えてしまわないよう気をつけるというのが国防部の意図だ。ところが国防部のローキーは度が過ぎるうえ、北朝鮮に対する低姿勢として映るケースが多かった。
銃撃事件の当日、軍当局のバックグラウンド(非公開)ブリーフィングが代表的な例だ。当時のブリーフィングを担当した軍関係者は銃撃事件の概要を説明した後、「現場指揮官の判断」という前提で▼霧がかかって視界が良くなかった▼北朝鮮軍の勤務交代時間だった▼銃撃前後に北朝鮮軍の特異動向はなかったーーなどの事実を羅列した。
「銃撃が、挑発か、誤射か」という質問が出る前から、軍関係者が親切にも意図的な銃撃ではないと先に知らせたのだ。その後、国防部と軍当局は一様に「銃撃に意図性はない」という立場を表した。また対応射撃の過程を詳細に説明してほしいという記者の要求に対しては「関連調査が終ってから公開する」と答えた。調査が終わっていないにもかかわらず偶発的な銃撃という結論を出したということだ。これを見ると、国防部と軍当局のローキーが果たして何のためのものかが気になる。政府の南北交渉を支援するレベルではなく、北朝鮮の反応を気にしているという考えを抱かせる。
昨年の「発射体」をめぐる論争は国防部のローキーの弊害を見せている。北朝鮮は昨年13回も弾道ミサイルを発射した。軍当局は当初これを「発射体」と表現していたが、後に「ミサイル」と評価した。弾道ミサイルなら2018年の南北、米朝会談の成果が崩れたと見なすことができ、射程距離に関係なく国連安全保障理事会決議違反だった。これを意識した軍当局は弾道ミサイルと認めるのが難しかったのだ。後に軍当局は13回すべて弾道ミサイルという資料をさりげなく国会に提出した。韓国の最大の脅威である北朝鮮の弾道ミサイルをまともに分析することができなくなるところだった。
高高度無人偵察機グローバルホークを導入する過程でもローキーの雑音が聞こえた。20キロの高度から地上30センチの大きさの物体を区別できるグローバルホークは、北朝鮮だけでなく周辺国を相手にするうえで必要だ。国防部と軍当局はグローバルホークが韓国に到着した事実を隠した。関連記事が出ると、大々的な保安調査を始めて口封じをした。8800億ウォン(約800億円)以上の導入予算を出した国民の知る権利は無視された。
軍内部からも北朝鮮の反応を気にしてグローバルホークを隠しているという声が出てきた。このような過敏対応はグローバルホークが結局、北朝鮮を狙う武器であることを国防部が立証しているのと変わらない。徹底的なセキュリティーの中でも空軍基地の周辺で夜を明かした写真記者が滑走路に着陸したグローバルホークを撮影した。ハリー・ハリス駐韓米大使はツイッターに格納庫に保管中のグローバルホークの写真を載せて国防部を困惑させた。
国防部が自らこのように行動するため、北朝鮮がむしろ当惑するという解釈が出ている。北朝鮮が挑発すれば韓国が反発してこそ挑発の効果がある。しかし韓国が何もなかったかのように行動するため、北朝鮮の立場では挑発の意味が薄れる。国防部と軍当局が突然、北朝鮮の挑発を抑止しようと虚虚実実戦術を駆使したわけではないはずだ。「沈黙は金なり」という格言がある。しかし決然とした行動がない沈黙は弱さに対する苦しい弁解にすぎない。
イ・チョルジェ/軍事安保研究所長
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