北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の健康不安説が出ていた4月末、筆者は映像会議プラットホーム「ズーム(Zoom)」でワシントンのシンクタンクのカンファレンスに3回参加した。会議は北朝鮮の急変事態を中心に進行された。ワシントンの関心がどこに向かっていたかを示唆していた。金正恩委員長の潜行は関連国に対し、金委員長の異変に合理的な疑いを抱かせ、対策を講じる動機を与えた。ある参加者は「これは本当に警鐘を鳴らす事件だった」と話した。
韓国には、北朝鮮の急変事態について米国と中国の間にある種の合意した計画があるはずだという考えが根底にある。米中ともに北朝鮮の核を望まない「利益積集合」を共有するため、北朝鮮の急変事態が発生すれば核兵器の流出を防ぐために両強大国がお互い計画をあらかじめ立てているはずという合理的推論だ。さらにコロナ事態が続くほど深刻化する米中対立の中でも、北朝鮮問題は気候変動とともに依然として米中が維持する「協力のマジノ線」との見方がある。しかし韓半島地政学のさまざまな可能性のうち韓国の運命に莫大な影響を及ぼす米中合意説については、細かく点検してみる必要がある。
◆米中の北核協力「当然論」根拠ない
主要2カ国(G2)に成長した中国が習近平主席時代に入って強大国DNAを備え始めると、韓国では中国が北朝鮮の挑発行為を座視しないはずという見方が強まった。しかしストロングマンの習近平主席は北朝鮮に厳格になるよりも、米国に対して強硬になっている。コロナ事態の中で習主席は9日、金正恩委員長に「力が及ぶ限り助ける」と約束した。
韓国の希望的な思考は米中関係にもそのまま転移する。習近平主席は2013年、米カリフォルニア州ランチョミラージュのサニーランドでオバマ米大統領と就任後初めて会った。ネクタイなく虚心坦懐に米中協力の未来を議論した両首脳は特に、北朝鮮の核問題に対する協力を約束したと、韓国では大きく報道された。しかし実情は違った。北朝鮮の核問題は、当時のトム・ドニロン大統領補佐官(国家安全保障担当)が事前に北京を訪問して中国側とすでに調整した部分だ。サニーランドの現場でオバマ大統領と習近平主席が意気投合して協力することにした成果ではない。すなわち事前に準備された会談の成果物にすぎなかった。
北朝鮮の急変事態も同じだ。長年の多くの推測にもかかわらず、米中が政府レベルで北朝鮮急変事態発生時に役割を協力することで合意した証拠はない。米国と中国が北朝鮮急変事態を初めて議論したのは2009年と考えられている。韓国の国家情報院に該当する中国の国家安全部傘下の現代国際関係研究院(CICIR)と米戦略国際問題研究所(CSIS)の関係者が北京で北朝鮮の非常事態について議論したという。韓国メディアは「北朝鮮の急変事態について米中が初めて議論した」と大きく報道した。しかし当時、米国側の出席者に確認したところ、米国側が急変事態の議論の必要性を中国側に提起し、中国側はこれに「よく分かった」と答えたレベルだった。これを「議論」と呼ぶことはできない。
2つ目、米中が北朝鮮急変事態を議論したという主張は、レイモンド・オディエルノ米陸軍参謀総長が2014年に中国軍瀋陽軍区を訪問した当時に出てきた。瀋陽は中朝国境から近く、韓半島有事に真っ先に投入される軍として知られていたため、大きな関心を集めた。しかしこれは米中首脳会談で、両国の貿易が活発であるにもかかわらず軍部間の交流が不足しているという認識のため信頼増進レベルで進めた軍部隊訪問だった。特に米国側が中国人民解放軍から「北朝鮮軍の動向に関する報告」を受けたというのは事実でない。
無数の米中間急変事態議論説に関連し、米国で韓半島問題実務最高責任者だったスチーブン・ボズワース元米国務省北朝鮮政策特別代表は「私が対北朝鮮政策を担当した期間に議論は一度もなかった。現在まで北朝鮮急変事態に関する米中間の公式的な議論はないと把握している」と明らかにした。当時は2014年だった。筆者がボズワース大使に発言を公開してもよいのかと尋ねると、彼は快く承諾した。
2017年8月、北京で米中軍首脳部のジョセフ・ダンフォード米統合参謀本部議長と房峰輝・中国人民解放軍総参謀長が互いの判断の過ちを防ぐ対話チャンネル(Joint Staff Dialogue Mechanism)の開設に両軍史上初めで合意した。これは逆説的にそれ以前まで米中間にこうした対話チャンネルがなかったことを意味する。
<チャイナインサイト>「米中、北朝鮮急変事態の合意ない」…韓国は「希望的思考」でなく仲裁の努力を(2)
韓国には、北朝鮮の急変事態について米国と中国の間にある種の合意した計画があるはずだという考えが根底にある。米中ともに北朝鮮の核を望まない「利益積集合」を共有するため、北朝鮮の急変事態が発生すれば核兵器の流出を防ぐために両強大国がお互い計画をあらかじめ立てているはずという合理的推論だ。さらにコロナ事態が続くほど深刻化する米中対立の中でも、北朝鮮問題は気候変動とともに依然として米中が維持する「協力のマジノ線」との見方がある。しかし韓半島地政学のさまざまな可能性のうち韓国の運命に莫大な影響を及ぼす米中合意説については、細かく点検してみる必要がある。
◆米中の北核協力「当然論」根拠ない
主要2カ国(G2)に成長した中国が習近平主席時代に入って強大国DNAを備え始めると、韓国では中国が北朝鮮の挑発行為を座視しないはずという見方が強まった。しかしストロングマンの習近平主席は北朝鮮に厳格になるよりも、米国に対して強硬になっている。コロナ事態の中で習主席は9日、金正恩委員長に「力が及ぶ限り助ける」と約束した。
韓国の希望的な思考は米中関係にもそのまま転移する。習近平主席は2013年、米カリフォルニア州ランチョミラージュのサニーランドでオバマ米大統領と就任後初めて会った。ネクタイなく虚心坦懐に米中協力の未来を議論した両首脳は特に、北朝鮮の核問題に対する協力を約束したと、韓国では大きく報道された。しかし実情は違った。北朝鮮の核問題は、当時のトム・ドニロン大統領補佐官(国家安全保障担当)が事前に北京を訪問して中国側とすでに調整した部分だ。サニーランドの現場でオバマ大統領と習近平主席が意気投合して協力することにした成果ではない。すなわち事前に準備された会談の成果物にすぎなかった。
北朝鮮の急変事態も同じだ。長年の多くの推測にもかかわらず、米中が政府レベルで北朝鮮急変事態発生時に役割を協力することで合意した証拠はない。米国と中国が北朝鮮急変事態を初めて議論したのは2009年と考えられている。韓国の国家情報院に該当する中国の国家安全部傘下の現代国際関係研究院(CICIR)と米戦略国際問題研究所(CSIS)の関係者が北京で北朝鮮の非常事態について議論したという。韓国メディアは「北朝鮮の急変事態について米中が初めて議論した」と大きく報道した。しかし当時、米国側の出席者に確認したところ、米国側が急変事態の議論の必要性を中国側に提起し、中国側はこれに「よく分かった」と答えたレベルだった。これを「議論」と呼ぶことはできない。
2つ目、米中が北朝鮮急変事態を議論したという主張は、レイモンド・オディエルノ米陸軍参謀総長が2014年に中国軍瀋陽軍区を訪問した当時に出てきた。瀋陽は中朝国境から近く、韓半島有事に真っ先に投入される軍として知られていたため、大きな関心を集めた。しかしこれは米中首脳会談で、両国の貿易が活発であるにもかかわらず軍部間の交流が不足しているという認識のため信頼増進レベルで進めた軍部隊訪問だった。特に米国側が中国人民解放軍から「北朝鮮軍の動向に関する報告」を受けたというのは事実でない。
無数の米中間急変事態議論説に関連し、米国で韓半島問題実務最高責任者だったスチーブン・ボズワース元米国務省北朝鮮政策特別代表は「私が対北朝鮮政策を担当した期間に議論は一度もなかった。現在まで北朝鮮急変事態に関する米中間の公式的な議論はないと把握している」と明らかにした。当時は2014年だった。筆者がボズワース大使に発言を公開してもよいのかと尋ねると、彼は快く承諾した。
2017年8月、北京で米中軍首脳部のジョセフ・ダンフォード米統合参謀本部議長と房峰輝・中国人民解放軍総参謀長が互いの判断の過ちを防ぐ対話チャンネル(Joint Staff Dialogue Mechanism)の開設に両軍史上初めで合意した。これは逆説的にそれ以前まで米中間にこうした対話チャンネルがなかったことを意味する。
<チャイナインサイト>「米中、北朝鮮急変事態の合意ない」…韓国は「希望的思考」でなく仲裁の努力を(2)
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