「１８歳から月１５０万ウォン（約１３万円）の国家配当金支給」。国家革命配当金党が第２１代国会議員総選挙で掲げた代表公約だ。路上の垂れ幕を見た若い学生も「月１５０万ウォン」に関心を持ったというから話題性だけは認めるほかない。

今回の総選挙の１８歳以上の有権者は４３９９万人だ。彼らに毎月１５０万ウォン、年間１８００万ウォンを支給するには７９１兆ウォンが必要だ。今年の政府予算５１２兆ウォンより多い。同党の選挙公報を見ると、政府予算を６０％節約して３００兆ウォンを調達し、地域開発をしないなど財源調達案もある。もちろん実現の可能性を信じる人はごく少数だった。比例代表を選ぶ政党得票率は０．７１％にとどまった。

新型コロナウイルスの感染拡大により災害支援金と基本所得に対する関心が大きくなった。地方自治体が先に出た。同じ「共に民主党」所属だが朴元淳（パク・ウォンスン）ソウル市長と李在明（イ・ジェミョン）京畿道（キョンギド）知事は別の政策を展開した。ソウルは「災害緊急生活費」という名目で中位所得１００％以下の世帯を対象に選別支給することにした。これに対し京畿道は「災害基本所得」として１人当たり１０万ウォンずつ支給する普遍支給方式を選んだ。災害基本所得というが実際には金額が少なく単発で終わる限界がある。小説家の孔枝泳（コン・ジヨン）は「どうか災害基本所得という言葉を使うのをやめよう。緊急生活安定資金が正しい。基本所得（ベーシックインカム）はどの国でも成功したことがない」とした。それでも韓国では珍しい普遍支給方式のため注目度は高かった。李知事はこれを基盤に本格的な基本所得導入を主張している。


中央政府次元で給付する災害支援金も当初より規模が大きくなるものとみられる。選挙前に政府と与党は所得下位７０％の世帯に最大１００万ウォンを給付することにしていた。だが選挙が近づくと民主党は全国民支給に方向を変えた。黄教安（ファン・ギョアン）前未来統合党代表も予算削減を通じて１人当たり５０万ウォンの支給を主張した。これを見た未来統合党の劉承ミン（ユ・スンミン）議員が「多くの政党が国家革命配当金党に似てきている」と批判したほどだ。

選挙後も議論が続いた。与党は全国民に支給するが、高所得層がこれを受け取らなかったり寄付する場合には税額控除をする側に方向性を固めた。全国民支給に向けては３兆～４兆ウォンの赤字国債を追加で発行しなければならないと予想される。

支援金支給という先例ができただけに危機が深まれば要求は次第に強まるだろう。青年手当てなど特定階層を対象にした支給要求も多くなる公算が大きい。概してこうした公約は財源調達策がお粗末なことが多い。あいまいな「錬金術」で包装されたりもする。２０２２年の大統領選挙ではこうした公約が核心争点になり得る。

さらに文在寅（ムン・ジェイン）大統領は２２日に韓国版ニューディールで雇用５０万件を作るとして追加補正予算の準備を指示した。予算削減には限界があるため必要な資金は国債で調達する可能性が大きそうだ。新型コロナウイルス克服に向け財政が積極的な役割をしなければならないのは正しいが国の財政もしっかり管理しなければならない。財政を使なら景気回復という効果を得なければならない。ともすると景気は沈滞が続き、国債の利子を返すために国債を再び発行しなければならないという悪循環に陥りかねない。

現在韓国の国債格付けは上位３～４番目に属する。日本や中国より１～２段階高い。最近２０年間下がらず上がるばかりだった。国の借金が急激に増えれば債務償還能力が落ちる。国債格付けの下落は通貨危機の再発を呼び起こしかねない。金を借りるには限界があるという話だ。

それなら残された選択肢は増税だ。毎度言及されるのが富裕層増税だ。だが富裕層増税でどれだけ多くの税金を得られるかは疑問だ。富裕税を導入したが副作用のためにこれを廃止した国もある。昨年末に告知された総合不動産税は３兆ウォン水準だった。少なくない金額だが単発の支援金支給にも足りない。どこかに支出するには基本的に稼ぎがなければならない。ただ野党も多様で新たな要求が噴出しているのにこれをポピュリズムだと批判ばかりしていては今後選挙で勝つ見込みはない。

税金はすべての国民が公平に納付しなければならない。富裕層増税だけでなく普遍増税も考えなければならない。無から有を創造するという錬金術や特定階層に対する懲罰的課税は解決策にならない。新たに開幕する第２１代国会で現実性があり公平な対案を探す政策競争が展開されることを期待する。

キム・ウォンベ／社会ディレクター