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【時視各角】文在寅政権は運がよい

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
その年にも選挙があった。通貨危機が襲った1997年。一時は90%だった現職大統領の支持率は濡れた落ち葉のように急落した。年末の大統領選挙で野党が勝利した。憲政史上初めて選挙で政権が交代した。23年後、また選挙を控えて経済危機が訪れた。今度は大統領選挙ではなく総選挙だ。災難の前で政治的な計算は話題にしにくいが、新型コロナは与党に災難になるという予測が多かった。しかし推移は意外な方向に流れている。世論調査と体感情緒は与党に不利でない。停滞していた文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率はまた上昇している。大規模な災難と経済難局は与党に不利という通念が崩れるのだろうか。反転の理由は何か。

「今は戦時」とも言われる。戦争の遂行で最も重要なのは言うまでもなく兵力と補給品だ。現在の政府は97年の政府と比較できないほど豊富な使用可能資源がある。この点で現政権は運がよい。政府の対応努力と能力を低く評価するわけではない。しかし運を実力と勘違いすれば決して戦争で勝つことはできないという点は知らなければいけない。

まず危機発生の地政学的特性だ。97年の通貨危機はアジアに限られた。国際通貨基金(IMF)の基本的な関心はお金を返してもらうという点だった。ドル融資の条件として高い金利など過酷な緊縮プログラムを要求した。死んでいく重症患者に酸素呼吸器をつけるどころかダイエットを強要するのと変わらない。世界が協調して無条件に金融緩和をしようという解決法に目を向けたのは10年後の金融危機当時だった。自分たちの事情が厳しくなったからだ。


97年の金泳三(キム・ヨンサム)政権はドルを乞うほかに使えるカードがなかった。当時の国家財政はそれほど厳しい状態ではなかった。97年の国家債務比率はわずか11.4%だ。現在の40%線と比べてはるかに低い。しかし外貨保有高が危険な時期に財政投入は方法にならなかった。相対的に健全だった財政は、足元の火を消し、次期の金大中(キム・デジュン)政権で不良債権整理のための公的資金の投入に使われた。

これと比較すると現在の政府には余裕がある。完全には安心できない水準とはいえ、4000億ドル以上の外貨準備高が防波堤となっている。米連邦準備制度理事会(FRB)の非常対策プログラムの一環として作動した韓米通貨スワップも力になった。何よりも財政政策のフレームが変わった。企業・金融市場の流動性支援に100兆ウォン(約9兆円)を投入することにしたが、不足すれば追加するという認識が作動している。災難支援名目の現金ばらまきにもためらいがない。あれこれ問いただす段階ではないという切迫感のためだ。選挙を控えた与党には追い風だ。

政府は大きく改善した企業の体質にも助けられている。通貨危機当時のように30大グループの負債比率が500%を超える状況なら、いくら財政を動員しても対応できない。昨年、資産5兆ウォン以上の企業集団の負債比率は70%以下に落ちた。その過程には骨身を削るリストラ、多くの失業者と自営業者、経済的弱者の痛みが伴っている。

過去に借りのない現在はない。世界が称賛する防疫体系の基礎は朴正熙(パク・ジョンヒ)政権が導入した医療保険制度だ。世界が感心する診断キットの開発と生産は2015年のMERS(中東呼吸器症候群)事態がきっかけになった。過去の継承よりも清算に執着した政権が過去の遺産に助けられるのはアイロニーだ。この運がいつまで続くかは分からない。深淵が見えない危機はまだ第一歩を踏み出したにすぎない。新型コロナ後、未来は今まで考えていた未来とは違うものになっているだろう。慣れない未来に話しかける方法は謙そんでなければいけない。96年の総選挙で当時与党だった新韓国党は無難に勝利した。わずか1年7カ月後、韓国はIMF救済金融に入り、翌月には政権を明け渡した。4月の総選挙後、次の大統領選挙までは2年1カ月だ。

イ・ヒョンサン/論説委員



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