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【時視各角】コロナよりも非情な言葉=韓国

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
鋭くなった言葉があちこちに刺さる。非情で配慮のない、心ない増殖本能によって、ヒトを攻撃するコロナと似ていた。相手には無慈悲で、自分たちには寛大で、国民には不遜な言語だ。「中東呼吸器症候群(MERS)時の前政府の無能を一つ一つ証言することができる」〔朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長〕、「感染者数が増えるのは国家システムがうまく作動しているという意味」〔朴洸オン(パク・グァンオン)共に民主党最高委員〕、「コロナ拡散は中国から入ってきた韓国人のせい」〔朴凌厚(パク・ヌンフ)保健福祉部長官〕のような言葉だ。

新型コロナウイルス感染症(コロナ19、新型肺炎)拡散事態がどうして全面的に文在寅(ムン・ジェイン)政府のせいなのだろうか。そのように考えるなら、むしろ現政権の能力を過大評価している。蝶の羽ばたきのようにとても小さな変因が台風のような非常に大きな結果をもたらす場合があるというのが複雑系に適用されるカオス理論だ。誰が感染した新天地信徒の行動を予測できただろうか。複雑系ですべての変因を統制できるというのは幻想だ。謙虚な姿勢で緊張を緩めるべきではなかった。それでも政府は「勝機を捉えた」「世界最高の防疫対応」と自画自賛した。国民が怒ったのは単に政府の無能のためでない。科学的事実さえ無視した傲慢、そしてこのような傲慢さが重なった「言葉のバベルの塔」ためだ。

柳時敏(ユ・シミン)氏の言葉がその絶頂だ。柳氏は「権泳臻(クォン・ヨンジン)大邱(テグ)市長が『中国人の入国を遮断しなかったからこんなことになった』というふうに話したが、責任を中央政府に押し付ける総選挙戦略だ。コロナを抑えこもうという考えがないようだ」と言った。これぐらいになれば病的だ。かなりの陣営還元主義だ。先日、彼は「保守政党から世宗大王(セジョンデワン)が出てきても私は選ばない」と言った。多くの有権者が人物や公約よりも政党を見て選ぶという現象診断だが、陣営論者の自己告白でもあった。すぐに陳重権(チン・ジュングォン)氏から「相手の党でも世宗大王が出てくれば選ぶべきで、我が党から鄭鳳株(チョン・ボンジュ)出てきたら選ぶのか」という詰問を受けた。チョ・グク夫人のチョン・ギョンシムの証拠隠滅行為を証拠保全だと言い張ったことに照らし合わせてみると、柳氏のこのような態度は今さら驚くようなことではない。


中国人入国禁止はその実効性を置いて論争できると考える。経済と外交を考慮しなければならないという政府の立場も理解できないことはない。論理と実証で扱うべき問題を、柳氏は相手陣営に対する政治的攻撃の道具として用いた。討論と著述専門家である彼が重視してきたという「論証」はどこにも見当たらなかった。このような形の論理なら、「文在寅(ムン・ジェイン)大統領が新天地を遮断するべきだと主張したが、これは責任を特定集団に押し付ける総選挙戦略」と逆攻勢しても返す言葉がない。柳氏は文在寅政府発足に際して、自身は「進歩御用知識人」になると話した。御用であることは確かだが、残りはよく分からない。自称知識人という人なら、このような論理の暴力を駆使することはできない。「苦痛を受ける人々との連帯」という進歩の価値を蹴飛ばしておきながら進歩だと自任することはできない。

2つに分かれた言葉の応酬は、ほぼ宗教戦争レベルだ。その責任を片方だけに問うのは難しい。しかし、その責任の軸は政府・与党側にやや傾いていることは否定し難い。執権勢力という位置のためだけではない。時には美しい修飾語で飾り、時には残忍な言葉の戦争で主導権を握ったのが今の執権勢力ではないか。

「新型コロナ事態は遠からず終息する」という大統領の言葉が問題になると青瓦台(チョンワデ、大統領府)は「国民を安心させようと発したメッセージだった」と話した。善意だったという意味だ。鋭い言葉の短刀を突きつけるばかりだった人々が、窮地に追い込まれると善意を前面に出す姿は不自然で惨めったらしい。大統領選挙前に安熙正(アン・ヒジョン)氏が「反対陣営だとしても、ひとまず善意で受け取る必要がある」と言って、文在寅候補支持者からどんな非難と嘲弄を受けたことか。文候補本人さえ「安熙正の善意論には怒りが抜けている」と批判した。

言語哲学者のルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタインは「我々の言語の限界はすなわち世界の限界を意味する」と話した。度重なる与党の言語失敗の中で、今、彼らが生きている世界の限界を感じる。その限界が世間にさらされたくないのであれば、口を閉じるしかない。

イ・ヒョンサン/論説委員



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