#防弾少年団と『パラサイト』の積集合
防弾少年団と『パラサイト』の共通点は、全て韓国語で構成されたコンテンツの成功という点だ。韓国の特殊な現実から出発したストーリーと歌詞から、全世界が共感する普遍的主題意識を引き出した。言語・国籍・人種の障壁を越える「超国籍性」の獲得だ。両方とも韓流の歴史を書き直し、同時に西欧主流の大衆文化の歴史も書き直した。韓国映画初のアカデミー受賞となった『パラサイト』が、過去92年間、非英語映画に一度も作品賞を与えたことがないオスカーの保守的歴史を変えたように。
防弾少年団のリーダーRMは、今回のアルバム発売記念オンライン懇談会で、その人気の秘訣を尋ねられると、「時代性を最もよく現わしたアーティストが最も多く愛されるようだ。僕たちが歌にした個人的なことが、皮肉にも汎世界性を帯びることになったのだと思う」と答えた。ポン・ジュノ監督がアカデミー監督賞を受賞し、マーティン・スコセッシ監督の名言を引用して「最も個人的なものが最も創意的なもの」と話したことと重なる。RMはこれに先立ち、米誌エンターテインメント・ウィークリーとのインタビューでも「1等になるために僕たちのアイデンティティや真実性を変えたくない。僕たちが突然英語だけで歌い、すべてのことをガラッと変えてしまうなら、それは防弾ではない」とも話した。
最近『韓国人の話-君はどこからきたのか』を出版した李御寧(イ・オリョン)元文化部長官は、防弾少年団と『パラサイト』の善戦を「韓国語の勝利」「韓国語の成功」と解釈した。あるインタビューで、李氏は「グローバルスタンダードである英語でなくても韓国語が世界に通じた。韓国語を学んでこそBTSを、ラップを完全にまねることができ、『パラサイト』も韓国語を学んでこそ本当にセリフの意味を理解することができる。(米国SNSにパロディブームが起きた)『ジェシカソング』も韓流が強くなったから、それが何であれ、韓国語を一生懸命学ぶ。それが言語の勝利だ」と話した。
大衆文化評論家のチョン・ドクヒョン氏は国籍と言語を越えるグローバルプラットホームとオーディエンスに注目する。「国籍と言語を越えて文化を幅広く理解したいと思うグローバルな欲望を備えた大衆が登場し、国家という境界が、相当部分、崩れつつある」という分析だ。「内需市場が小さいため、常にローカルでありながらもグローバルを指向するほかなく、海外市場トレンドを敏感に受け入れながらもこちらのやり方に引き込むこと」も成功要因に挙げた。
「オスカーの舞台で作品賞を受賞するアジア人とは…なんて驚くほど美しい場面だろう!」。映画『クレイジー・リッチ!』の原作小説家ケヴィン・クワンが『パラサイト』受賞直後、自身のSNSに掲載した感想だ。もちろん、まだ彼らの偉業を今回限りのものだとして見下し、冷笑する者も多いが、傾いた文化の錘をもとに戻すほどではないようだ。防弾少年団と『パラサイト』の成果がこれまでの韓流とは違い、さらに本質的な変化であるのはこのためだ。彼らは韓流だけ進化させたわけではない。多元主義・多様性の風に乗った西欧主流文化の世界史的変化も引き出している。
◆アーミーが作ったオタク語「ア民正音」とは?
「ア民正音(アミンジョンウム、アーミー+訓民正音)」は海外アーミーが作った、アーミーだけの言語だ。「kibun(キブン、気分)」「yeonseupseng(ヨンスプセン、練習生)」「tteedonggab(ティドンカプ、干支が同じ人)」のように、韓国語の発音をアルファベットで表記して使う。直訳が容易ではないニュアンスを生かすためだ。アーミーやK-POPファンがSNSでコメントをしたりニュースを共有したりする時に使う。このようなア民正音を集めた『K-POPDICTIONARY』もある。「アーミーのための韓国語ガイド辞典」だ。防弾少年団が米国の番組に出演してア民正音を教えたりもする。
ア民正音にはK-POPスターが日常でよく使う言葉、韓国アイドル文化に関連した言葉、韓流ドラマや芸能に頻繁に登場する言葉が含まれている。ニューヨーク・タイムズが「幸福と成功に達する韓国人の秘密」と紹介した「noonchi(ヌンチ、顔色)」、アイドルに強要される「aegyo(エギョ、愛嬌)」、昨年9月にBBCが「今日の単語」に選んだ「kkondae(コンデ、頭の固い年寄り)」等だ。コンサートで観客の反応を誘導する時に使う「so-ri jil-luh(ソリジルロ、腹から声を出せ/make some noise)」、愛されキャラを担当する最年少メンバーを示す「maknae(マンネ、末っ子)」のほか、「bap moon-na(パプムンネ、ご飯食べた?)」のような方言まである。
本来なかった意味が追加されたりもする。「nugu(ヌグ、誰)」は誰かよく分からない「トゥッポジャプ」、つまり聞いたことも見たこともない人のことを下に見ることを意味する。「he is a nugu」は「誰あの人?」というニュアンスの意味なので、気を付けて使わなければならない。最近追加されたア民正音としては「sajaegi(サジェギ、買い占め)」がある。K-POPファンダムが、最近、韓国音源市場の買い占め論争にまで深く通じているということを意味する。
(※韓国語の発音は現地の発音に近いものをカタカナで表記しており、必ずしもアルファベット表記と一致しません。参考までにご覧ください)
ヤン・ソンヒ/論説委員
【コラム】世界に通じた韓国語の勝利(1)
防弾少年団と『パラサイト』の共通点は、全て韓国語で構成されたコンテンツの成功という点だ。韓国の特殊な現実から出発したストーリーと歌詞から、全世界が共感する普遍的主題意識を引き出した。言語・国籍・人種の障壁を越える「超国籍性」の獲得だ。両方とも韓流の歴史を書き直し、同時に西欧主流の大衆文化の歴史も書き直した。韓国映画初のアカデミー受賞となった『パラサイト』が、過去92年間、非英語映画に一度も作品賞を与えたことがないオスカーの保守的歴史を変えたように。
防弾少年団のリーダーRMは、今回のアルバム発売記念オンライン懇談会で、その人気の秘訣を尋ねられると、「時代性を最もよく現わしたアーティストが最も多く愛されるようだ。僕たちが歌にした個人的なことが、皮肉にも汎世界性を帯びることになったのだと思う」と答えた。ポン・ジュノ監督がアカデミー監督賞を受賞し、マーティン・スコセッシ監督の名言を引用して「最も個人的なものが最も創意的なもの」と話したことと重なる。RMはこれに先立ち、米誌エンターテインメント・ウィークリーとのインタビューでも「1等になるために僕たちのアイデンティティや真実性を変えたくない。僕たちが突然英語だけで歌い、すべてのことをガラッと変えてしまうなら、それは防弾ではない」とも話した。
最近『韓国人の話-君はどこからきたのか』を出版した李御寧(イ・オリョン)元文化部長官は、防弾少年団と『パラサイト』の善戦を「韓国語の勝利」「韓国語の成功」と解釈した。あるインタビューで、李氏は「グローバルスタンダードである英語でなくても韓国語が世界に通じた。韓国語を学んでこそBTSを、ラップを完全にまねることができ、『パラサイト』も韓国語を学んでこそ本当にセリフの意味を理解することができる。(米国SNSにパロディブームが起きた)『ジェシカソング』も韓流が強くなったから、それが何であれ、韓国語を一生懸命学ぶ。それが言語の勝利だ」と話した。
大衆文化評論家のチョン・ドクヒョン氏は国籍と言語を越えるグローバルプラットホームとオーディエンスに注目する。「国籍と言語を越えて文化を幅広く理解したいと思うグローバルな欲望を備えた大衆が登場し、国家という境界が、相当部分、崩れつつある」という分析だ。「内需市場が小さいため、常にローカルでありながらもグローバルを指向するほかなく、海外市場トレンドを敏感に受け入れながらもこちらのやり方に引き込むこと」も成功要因に挙げた。
「オスカーの舞台で作品賞を受賞するアジア人とは…なんて驚くほど美しい場面だろう!」。映画『クレイジー・リッチ!』の原作小説家ケヴィン・クワンが『パラサイト』受賞直後、自身のSNSに掲載した感想だ。もちろん、まだ彼らの偉業を今回限りのものだとして見下し、冷笑する者も多いが、傾いた文化の錘をもとに戻すほどではないようだ。防弾少年団と『パラサイト』の成果がこれまでの韓流とは違い、さらに本質的な変化であるのはこのためだ。彼らは韓流だけ進化させたわけではない。多元主義・多様性の風に乗った西欧主流文化の世界史的変化も引き出している。
◆アーミーが作ったオタク語「ア民正音」とは?
「ア民正音(アミンジョンウム、アーミー+訓民正音)」は海外アーミーが作った、アーミーだけの言語だ。「kibun(キブン、気分)」「yeonseupseng(ヨンスプセン、練習生)」「tteedonggab(ティドンカプ、干支が同じ人)」のように、韓国語の発音をアルファベットで表記して使う。直訳が容易ではないニュアンスを生かすためだ。アーミーやK-POPファンがSNSでコメントをしたりニュースを共有したりする時に使う。このようなア民正音を集めた『K-POPDICTIONARY』もある。「アーミーのための韓国語ガイド辞典」だ。防弾少年団が米国の番組に出演してア民正音を教えたりもする。
ア民正音にはK-POPスターが日常でよく使う言葉、韓国アイドル文化に関連した言葉、韓流ドラマや芸能に頻繁に登場する言葉が含まれている。ニューヨーク・タイムズが「幸福と成功に達する韓国人の秘密」と紹介した「noonchi(ヌンチ、顔色)」、アイドルに強要される「aegyo(エギョ、愛嬌)」、昨年9月にBBCが「今日の単語」に選んだ「kkondae(コンデ、頭の固い年寄り)」等だ。コンサートで観客の反応を誘導する時に使う「so-ri jil-luh(ソリジルロ、腹から声を出せ/make some noise)」、愛されキャラを担当する最年少メンバーを示す「maknae(マンネ、末っ子)」のほか、「bap moon-na(パプムンネ、ご飯食べた?)」のような方言まである。
本来なかった意味が追加されたりもする。「nugu(ヌグ、誰)」は誰かよく分からない「トゥッポジャプ」、つまり聞いたことも見たこともない人のことを下に見ることを意味する。「he is a nugu」は「誰あの人?」というニュアンスの意味なので、気を付けて使わなければならない。最近追加されたア民正音としては「sajaegi(サジェギ、買い占め)」がある。K-POPファンダムが、最近、韓国音源市場の買い占め論争にまで深く通じているということを意味する。
(※韓国語の発音は現地の発音に近いものをカタカナで表記しており、必ずしもアルファベット表記と一致しません。参考までにご覧ください)
ヤン・ソンヒ/論説委員
【コラム】世界に通じた韓国語の勝利(1)
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