「地球で人間の持続的な支配を最も脅かすものはウイルスだ」。大腸菌とサルモネラ菌関連研究で1958年のノーベル生理学・医学賞を受賞した米国の遺伝学者ジョシュア・レダーバーグ(1925~2008)博士の警告だ。適用範囲を狭めて「ある国で与党の連続執権の最大の脅威はウイルスだ」と解釈しても無理はないだろうか。
昨年12月に中国湖北省武漢で始まった新型コロナウイルスによる肺炎が個人の生命と安全を脅かしている。同時に感染症を防ぐことができない各国政府には大きな政治的危機として作用している。
実際に韓日中3カ国は約束でもしたかのように新型肺炎危機対応に失敗した。感染者基準で中国が1位、韓国が2位、日本が3位(クルーズ船除外)を走っている。五輪の金メダル順位ではなく防疫失敗を示す恥ずかしい国別成績表だ。なぜこんな状況になったのだろうか。
文在寅(ムン・ジェイン)政権は感染症専門家らが全面的なウイルス流入遮断を促してもまともに聞かなかった。中国の顔色をうかがい習近平中国国家主席の総選挙前の訪韓に執着した。対北朝鮮政策に対する中国の支持を誘導して対話動力を生かし、限韓令解除を引き出して総選挙で勝利するという計算だっただろう。
実際に青瓦台(チョンワデ、大統領府)と与党は国民の安全より中国の顔色をうかがうことに重点を置いている印象を与えた。外交部の康京和(カン・ギョンファ)長官は習主席の上半期訪韓を強調し、「中国が要請すれば韓国の医療陣を中国に派遣できる」と話した。保健福祉部の朴凌厚(パク・ヌンフ)長官は「中国人観光客より中国に行ってきた韓国国民が感染源として作動したケースがもっと多い」と中国の閣僚のように話した。入国遮断に消極的だった法務部の秋美愛(チュ・ミエ)長官は韓国政府の対応を自画自賛してひんしゅくを買った。
文大統領は9日に忠清南道牙山(チュンチョンナムド・アサン)の温陽(オニャン)温泉市場を訪問し民生経済状況を尋ねた。惣菜店の女性店主は「最悪です。とても商売になりません」と実状をそのまま伝えた。驚いた文大統領は「新型肺炎のせいですか」と問い直した。崩壊する民生経済の実状だけ再確認した。
新型肺炎問題への対応ミスで地域社会感染者が続出すると韓国政府と与党は新天地教会に非難の標的を移している。しかし新天地と関係のないイスラエル聖地巡礼客70人の中からも感染者が大量に出てきた。宗教的異端の有無が集団感染の一次的原因ではないわけだ。伝染病の震源地は中国で、入国遮断をしっかりしなかった政府の責任が最も大きい。
中国は共産党一党独裁体制と硬直した官僚らの保身主義のため2000人以上が死亡する大型惨事を自ら招いた。独裁体制が招いた人災だ。サタンの仕業だと騒いでも決して免責されることはない。昨年12月1日に初めての感染者が出て同月中旬に人間同士の感染の事実が確認されたが、中国夢の実現に執着してきた共産党はこうした事実を隠した。1月11日に最初の死亡者が出たが武漢封鎖は1月23日にようやくなされた。
集団感染者発生の事実を12月30日にSNSで初めて伝えた「良心的医師」の李文亮(死亡)は警察で反省文を書かなければならなかった。情報が統制され事実が歪曲され罪のない人民の犠牲だけ拡大した。氏名不詳の中国人女性がユーチューブで共産党政権の無能と実情を絶叫するように暴露しても国営メディアは美談事例ばかり吐き出している。
日本は7月の東京五輪を成功裏に開催しなければならないという強迫観念のため新型肺炎対応を台無しにしたケースだ。執権8年目の安倍晋三首相は五輪成功を最大の治績とする計算だった。ところが3711人を乗せたクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号が3日に横浜港に入り深刻なジレンマに陥った。
感染者が発生したクルーズ船の搭乗者を下船させれば日本発の感染者が急増し五輪開催国の安全イメージに打撃を与える状況だった。結局日本政府は救助を哀願するクルーズ船内の人たちを冷遇した。人命より五輪興行を優先した後遺症は激しい。
今回韓日中3カ国の政府は程度の違いはあっても大きな枠組みで見れば納得しがたい対応をした。最も大きな原因は為政者が国民の生命と安全保護という根本を優先せず政治的計算を優先したためだ。
韓日中3カ国は儒教的伝統を共有する。易姓革命を主唱した孟子は「民が尊く、社稷(国家)がその次で、君主は軽い(民為貴社稷次之君為軽)」と力説した。君主は船で、民は船を浮かす水だ。権力が傲慢になり民本主義精神を忘却すればいくら大きい船でも水にひっくり返されかねない。権力より人が先だ。
チャン・セジョン/論説委員
昨年12月に中国湖北省武漢で始まった新型コロナウイルスによる肺炎が個人の生命と安全を脅かしている。同時に感染症を防ぐことができない各国政府には大きな政治的危機として作用している。
実際に韓日中3カ国は約束でもしたかのように新型肺炎危機対応に失敗した。感染者基準で中国が1位、韓国が2位、日本が3位(クルーズ船除外)を走っている。五輪の金メダル順位ではなく防疫失敗を示す恥ずかしい国別成績表だ。なぜこんな状況になったのだろうか。
文在寅(ムン・ジェイン)政権は感染症専門家らが全面的なウイルス流入遮断を促してもまともに聞かなかった。中国の顔色をうかがい習近平中国国家主席の総選挙前の訪韓に執着した。対北朝鮮政策に対する中国の支持を誘導して対話動力を生かし、限韓令解除を引き出して総選挙で勝利するという計算だっただろう。
実際に青瓦台(チョンワデ、大統領府)と与党は国民の安全より中国の顔色をうかがうことに重点を置いている印象を与えた。外交部の康京和(カン・ギョンファ)長官は習主席の上半期訪韓を強調し、「中国が要請すれば韓国の医療陣を中国に派遣できる」と話した。保健福祉部の朴凌厚(パク・ヌンフ)長官は「中国人観光客より中国に行ってきた韓国国民が感染源として作動したケースがもっと多い」と中国の閣僚のように話した。入国遮断に消極的だった法務部の秋美愛(チュ・ミエ)長官は韓国政府の対応を自画自賛してひんしゅくを買った。
文大統領は9日に忠清南道牙山(チュンチョンナムド・アサン)の温陽(オニャン)温泉市場を訪問し民生経済状況を尋ねた。惣菜店の女性店主は「最悪です。とても商売になりません」と実状をそのまま伝えた。驚いた文大統領は「新型肺炎のせいですか」と問い直した。崩壊する民生経済の実状だけ再確認した。
新型肺炎問題への対応ミスで地域社会感染者が続出すると韓国政府と与党は新天地教会に非難の標的を移している。しかし新天地と関係のないイスラエル聖地巡礼客70人の中からも感染者が大量に出てきた。宗教的異端の有無が集団感染の一次的原因ではないわけだ。伝染病の震源地は中国で、入国遮断をしっかりしなかった政府の責任が最も大きい。
中国は共産党一党独裁体制と硬直した官僚らの保身主義のため2000人以上が死亡する大型惨事を自ら招いた。独裁体制が招いた人災だ。サタンの仕業だと騒いでも決して免責されることはない。昨年12月1日に初めての感染者が出て同月中旬に人間同士の感染の事実が確認されたが、中国夢の実現に執着してきた共産党はこうした事実を隠した。1月11日に最初の死亡者が出たが武漢封鎖は1月23日にようやくなされた。
集団感染者発生の事実を12月30日にSNSで初めて伝えた「良心的医師」の李文亮(死亡)は警察で反省文を書かなければならなかった。情報が統制され事実が歪曲され罪のない人民の犠牲だけ拡大した。氏名不詳の中国人女性がユーチューブで共産党政権の無能と実情を絶叫するように暴露しても国営メディアは美談事例ばかり吐き出している。
日本は7月の東京五輪を成功裏に開催しなければならないという強迫観念のため新型肺炎対応を台無しにしたケースだ。執権8年目の安倍晋三首相は五輪成功を最大の治績とする計算だった。ところが3711人を乗せたクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号が3日に横浜港に入り深刻なジレンマに陥った。
感染者が発生したクルーズ船の搭乗者を下船させれば日本発の感染者が急増し五輪開催国の安全イメージに打撃を与える状況だった。結局日本政府は救助を哀願するクルーズ船内の人たちを冷遇した。人命より五輪興行を優先した後遺症は激しい。
今回韓日中3カ国の政府は程度の違いはあっても大きな枠組みで見れば納得しがたい対応をした。最も大きな原因は為政者が国民の生命と安全保護という根本を優先せず政治的計算を優先したためだ。
韓日中3カ国は儒教的伝統を共有する。易姓革命を主唱した孟子は「民が尊く、社稷(国家)がその次で、君主は軽い(民為貴社稷次之君為軽)」と力説した。君主は船で、民は船を浮かす水だ。権力が傲慢になり民本主義精神を忘却すればいくら大きい船でも水にひっくり返されかねない。権力より人が先だ。
チャン・セジョン/論説委員
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