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【中央時評】コロナウイルスを克服してくれる成熟した市民意識=韓国

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
ポン・ジュノ監督の映画『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー映画祭で脚本賞、国際長編映画賞、監督賞、作品賞を相次いで受賞する場面をテレビで視聴したときに受けた大きな感動は忘れられない。しかし、ポン監督が帰国した空港で「私に拍手を送ってくださったが、逆に今コロナウイルスを見事に克服している国民の皆さんに私が拍手を送りたいと思う」、「私も手を懸命に洗いながらコロナ克服の隊列に仲間入りするようにしたい」と言った時も穏やかながら心温まる感覚が拭えなかった。COVID-19の拡散による不安と懸念が日増しに高まっていたとき、どんな言葉よりも心に響く帰国の挨拶であり、それこそが私たちに必要だった希望と連帯の修辞だった。現在のCOVID-19事態を克服するために韓国国民が見せた、成熟した市民意識に注目を促すメッセージだったのではないかと思う。

コロナウイルスを克服する市民意識は2つの次元で考えてみることができる。第一に、個人レベルの市民意識だ。まさにポン監督が言った、懸命な手洗いが出発だ。この他にも、マスクの着用、咳エチケット、外部活動の自制、感染の疑いがある場合の選別診療機関訪問による積極的な検査の実施、自己隔離時の原則遵守など、個人の衛生、感染予防と拡散防止のための努力がすべて重要だ。自分の保護はもちろん、相手の安全も守り、このような市民の小さな実践が担保されてはじめて国家防疫システムが効果的に機能できるからだ。このようなささやかながらも重要な個人的努力において、我々市民は比較的成熟した市民意識を見せている。専門家も、特に過去のMERS(中東呼吸器症候群)事態と比較して、一層高まった市民の公衆衛生意識を評価している。

もちろん、現在のウイルス感染経路の把握が困難な地域社会感染が始まった時点で、より体系的かつ細かな国防疫体系と、より積極的な政府の政策的介入が必要なのは事実だ。政府の危機対応段階を「警戒」から「深刻」に上げ、汎政府総力対応態勢を整えようという話も出ている。しかし、むしろこのような時こそ、市民意識と力量がより重要だという主張も提起されている。ソウル大学保健大学院の金昌ヨプ(キム・チャンヨプ)教授は「地域社会感染が始まると、どんなに完ぺきなシステムを備えても行政・防疫当局・医療機関や専門家だけで拡散を防ぐには力不足だ。中央集中式の国家監視網を越えて市民自ら判断して自己隔離するなど、地域と住民の草の根の力量が発揮されなければならない」と主張している。とにかく、現状では政府だけでなく専門家、民間の医療機関、自治体、市民の有機的な協力体制を整備し、私たちの社会全般の感染症対応能力を高めなければならないということには異論の余地はないだろう。


第二に、市民がお互いに暖かい情を交わして連帯意識を積み重ねながら共同問題解決のための一翼を担う集団的次元の市民意識だ。様々な事例があるが、圧巻だったのは初期の反対意見を撤回して武漢の同胞を受け入れることにした忠清南道牙山(チョンチョンナムド・アサン)と忠清北道鎮川(チュンチョンブクド・チンチョン)の市民だ。彼らは「#We_are_Asan」「#牙山市民は歓迎します」のような「プラカードリレー」で到着する海外同胞を受け入れた。2週間の隔離期間を終えて出発する僑民は「牙山ステキです、きっとまた来ます」「お弁当のカートの音は忘れられないでしょう」「I(ハート)牙山・鎮川」「WE(ハート)大韓民国」などのメッセージを書いた垂れ幕で答える感動的な場面を演出した。

他にもあちこちで海外同胞や脆弱階層を支援するための温かく差し伸べられる手が続き、各自の地域の「セルフ防疫」に乗り出すコロナ防弾市民団が組織され、新型コロナウイルス事態で献血が不足すると、市民の自発的な参加でわずか10日で血液保有量が2倍近く増えるという奇跡も起こした。全国各地の自治体と市民は低迷する地域経済を活性化するために「バラの花購入」「構内食堂の閉鎖」「外食を1回増やす」「家賃引き下げ共生協約」など、様々なキャンペーンを行っている。中国から戻ってくる留学生を対象に自治体が空港から寮まで無料コールタクシーサービスをサポートし、大学が隔離期間に温かい関心と密着サポートを提供する、ある地域の「善きサマリア人」の美談も聞こえる。

もちろん、市民意識だけでコロナウイルスを克服することはできない。政府は責任ある姿勢を回避したり、積極的な支援を先送りしたりしてはならない。現時点においても中国の留学生の管理・支援において大学ごとに寮などの隔離施設が途方もなく不足している状況で、教育部が責任を大学に押し付けて見て見ぬふりを決め込んでいるという批判が提起されている。それでも現在の新型コロナウイルス事態で、検閲されて抑圧されている中国の市民社会や、「マニュアル社会」のルーチンに埋もれて無気力になった日本の市民社会と比較すると韓国の市民社会は比較的成熟したダイナミックな姿を見せている。過去の国債補償運動や募金運動から最近の平和的ろうそく集会による政権交代や日本不買運動に至るまで危機的状況の度に団結力を見せてきた伝統と遺産もある。この国家レベルの災害を克服するため、韓国の市民社会の意識と力量に慎重に期待する理由だ。

金義英(キム・ウィヨン)/ソウル大学政治外交学部教授



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