ドイツは核保有国でない。核拡散防止条約(NPT)に基づき核の開発・保有が禁止されている。しかしロシアの侵攻で核戦争になる場合、ドイツは核兵器でロシアを攻撃することができる。ドイツ空軍のパイロットが操縦するパナビアトーネード戦闘機が核爆弾を搭載してドイツ西部のラインラント=プファルツ州ビューヒェル空軍基地から発進し、ロシア内の目標物に核爆弾を投下する。戦時に備えてビューヒェル空軍基地には米国のB61-4戦術核爆弾20個が配備されている。核兵器がないドイツが自国の空軍機を利用して核攻撃ができるのは、NATO(北大西洋条約機構)の核共有戦略のためだ。
NATOが創設された1949年当時、唯一の核保有国だった米国は当初から加盟国に核抑止力の提供を約束した。発足と同時に採択されたNATOの戦略概念は「NATOは加盟国が攻撃を受けると同時に、あらゆる手段を動員して『戦略的爆撃』を遂行できる能力を確保し、動員される武器の種類には『例外』を設けない」と明示した。戦略的な爆撃が可能な例外のない武器とは核兵器を意味する。NATO加盟国をソ連が攻撃すれば、広島と長崎で威力を立証した「絶対武器」核兵器の使用も辞さないという米国の決意は過去70年間、NATOを集団安全保障共同体として維持する核心的な土台となった。
しかしソ連が核兵器を開発したのに続き、57年に世界初の人工衛星スプートニク1号打ち上げにも成功すると、欧州加盟国は米国の核の傘の信頼性に疑問を抱き始めた。ソ連がロケットを宇宙空間に打ち上げることができる能力を保有することになったのは、米本土に向けて核弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射することが可能になったという意味であり、これはワシントンにソ連の核爆弾が落ちることを覚悟して米国が果たして欧州を核の傘で守れるのかという疑問につながった。
米国、ソ連に続いて英国までが核保有国に合流し、事実上、欧州の「二流国家」に転落したフランスは特に敏感に反応した。アルジェリア事態をきっかけにまた大統領になったシャルル・ド・ゴールは「核武装」を宣言した。自国の防衛を外国に依存する限りフランスは主権国にも強大国にもなれないため、いかなる犠牲と代価を支払っても独自の核打撃力を必ず保有すべきというのが彼の持論であり、結局、フランスは核武装に成功した。米国の核の傘から脱して一人立ちを選んだフランスは、米軍の将官が作戦統制権を行使するNATOの指揮体系からも離脱した。
伝統的なライバルのフランスまでが核武装に成功すると、ドイツの不安感は強まった。しかし第2次世界大戦の戦犯国という烙印のため独自の核武装は考えられなかった。「核武装をしない西ドイツは他の同盟国の軍隊のための炊事兵でも送ることになり、西ドイツの運命はそれで決まる」という当時の西ドイツ国防長官ヨーゼフ・シュトラウスの嘆きは当時のドイツ人の不安感を代弁している。ドイツは生存のために自国に配備された米国の戦術核の使用権を共有できる制度的な装置を用意してほしいと米国に強く要求した。NATOの核共有戦略が出てきた背景だ。
核共有戦略に基づき米国は66年、NATO核計画グループ(NPG)という機構を構築した。加盟国の国防相で構成されるNPGは核兵器の運用に関する意思決定をし、核兵器情報を共有し、核戦略を議論・調整する。有事の際、核打撃の対象と順序、規模を決めるのもNPGの役割だ。NATOの欧州加盟国が自国の戦闘機や爆撃機を動員し、定例的に戦術核兵器引き渡し、装着、発進、模擬弾頭投下訓練をするのも、核共有戦略の一環だ。
米国は54年から欧州に戦術核を配備し始めた。量的にピークだった71年には、多様な爆発力を持つ7300個の戦術核が、空中投下用核爆弾、砲撃用核爆弾、ミサイル発射用核弾頭、核地雷など13種類の形態で欧州各地に配備されていた。しかし冷戦の終息後はほとんど撤収し、今は空中投下用の戦術核B61系列核爆弾およそ190個だけが残っている。ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、トルコの5カ国に20-80個ずつ分散配備されている。
米国は100億ドル(約1兆1000億円)を投入し、米国と欧州に配備された480個のB61系列核爆弾を最新型のB61-12型スマート核爆弾に置き換える作業を進めている。来年から実戦配備を始めて2024年までに終える計画だ。B61-12核爆弾はレーダーと衛星利用測位システム(GPS)など精密誘導装置を装着し、正確度を大幅に向上させた。誤差範囲を従来のB61核爆弾の100メートルから30メートルに減らした。バンカーバスター能力を備えたB61-12核爆弾は地下60メートルまで突き抜けて爆発し、山岳地帯やトンネルに潜伏する敵の指揮部を精密打撃できる。ステルス機能を備えたF35A戦闘機がB61-12核爆弾を搭載して飛行する状況は、北朝鮮の指導部としては想像するだけでもぞっとするしかない。
B61-12核爆弾は爆発力を0.3キロトンから50キロトンまで4段階に調節でき、不必要な殺傷を防いだり地上作戦中の味方への放射能被害を最小化できる。このため実際に使用される可能性が高い。戦術核の置き換え作業をきっかけに核兵器が配備された欧州国を中心に戦術核撤収世論が強まっている背景だ。昨年6月に実施された世論調査では、ドイツ国民の70%、イタリア国民の65%が米国の戦術核撤収を支持していることが分かった。
【コラム】韓国と日本、米国との核共有は可能か…NATO式核共有は事実上の戦術核再配備(2)
NATOが創設された1949年当時、唯一の核保有国だった米国は当初から加盟国に核抑止力の提供を約束した。発足と同時に採択されたNATOの戦略概念は「NATOは加盟国が攻撃を受けると同時に、あらゆる手段を動員して『戦略的爆撃』を遂行できる能力を確保し、動員される武器の種類には『例外』を設けない」と明示した。戦略的な爆撃が可能な例外のない武器とは核兵器を意味する。NATO加盟国をソ連が攻撃すれば、広島と長崎で威力を立証した「絶対武器」核兵器の使用も辞さないという米国の決意は過去70年間、NATOを集団安全保障共同体として維持する核心的な土台となった。
しかしソ連が核兵器を開発したのに続き、57年に世界初の人工衛星スプートニク1号打ち上げにも成功すると、欧州加盟国は米国の核の傘の信頼性に疑問を抱き始めた。ソ連がロケットを宇宙空間に打ち上げることができる能力を保有することになったのは、米本土に向けて核弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射することが可能になったという意味であり、これはワシントンにソ連の核爆弾が落ちることを覚悟して米国が果たして欧州を核の傘で守れるのかという疑問につながった。
米国、ソ連に続いて英国までが核保有国に合流し、事実上、欧州の「二流国家」に転落したフランスは特に敏感に反応した。アルジェリア事態をきっかけにまた大統領になったシャルル・ド・ゴールは「核武装」を宣言した。自国の防衛を外国に依存する限りフランスは主権国にも強大国にもなれないため、いかなる犠牲と代価を支払っても独自の核打撃力を必ず保有すべきというのが彼の持論であり、結局、フランスは核武装に成功した。米国の核の傘から脱して一人立ちを選んだフランスは、米軍の将官が作戦統制権を行使するNATOの指揮体系からも離脱した。
伝統的なライバルのフランスまでが核武装に成功すると、ドイツの不安感は強まった。しかし第2次世界大戦の戦犯国という烙印のため独自の核武装は考えられなかった。「核武装をしない西ドイツは他の同盟国の軍隊のための炊事兵でも送ることになり、西ドイツの運命はそれで決まる」という当時の西ドイツ国防長官ヨーゼフ・シュトラウスの嘆きは当時のドイツ人の不安感を代弁している。ドイツは生存のために自国に配備された米国の戦術核の使用権を共有できる制度的な装置を用意してほしいと米国に強く要求した。NATOの核共有戦略が出てきた背景だ。
核共有戦略に基づき米国は66年、NATO核計画グループ(NPG)という機構を構築した。加盟国の国防相で構成されるNPGは核兵器の運用に関する意思決定をし、核兵器情報を共有し、核戦略を議論・調整する。有事の際、核打撃の対象と順序、規模を決めるのもNPGの役割だ。NATOの欧州加盟国が自国の戦闘機や爆撃機を動員し、定例的に戦術核兵器引き渡し、装着、発進、模擬弾頭投下訓練をするのも、核共有戦略の一環だ。
米国は54年から欧州に戦術核を配備し始めた。量的にピークだった71年には、多様な爆発力を持つ7300個の戦術核が、空中投下用核爆弾、砲撃用核爆弾、ミサイル発射用核弾頭、核地雷など13種類の形態で欧州各地に配備されていた。しかし冷戦の終息後はほとんど撤収し、今は空中投下用の戦術核B61系列核爆弾およそ190個だけが残っている。ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、トルコの5カ国に20-80個ずつ分散配備されている。
米国は100億ドル(約1兆1000億円)を投入し、米国と欧州に配備された480個のB61系列核爆弾を最新型のB61-12型スマート核爆弾に置き換える作業を進めている。来年から実戦配備を始めて2024年までに終える計画だ。B61-12核爆弾はレーダーと衛星利用測位システム(GPS)など精密誘導装置を装着し、正確度を大幅に向上させた。誤差範囲を従来のB61核爆弾の100メートルから30メートルに減らした。バンカーバスター能力を備えたB61-12核爆弾は地下60メートルまで突き抜けて爆発し、山岳地帯やトンネルに潜伏する敵の指揮部を精密打撃できる。ステルス機能を備えたF35A戦闘機がB61-12核爆弾を搭載して飛行する状況は、北朝鮮の指導部としては想像するだけでもぞっとするしかない。
B61-12核爆弾は爆発力を0.3キロトンから50キロトンまで4段階に調節でき、不必要な殺傷を防いだり地上作戦中の味方への放射能被害を最小化できる。このため実際に使用される可能性が高い。戦術核の置き換え作業をきっかけに核兵器が配備された欧州国を中心に戦術核撤収世論が強まっている背景だ。昨年6月に実施された世論調査では、ドイツ国民の70%、イタリア国民の65%が米国の戦術核撤収を支持していることが分かった。
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