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【社説】「強制」の疑惑が深まる北朝鮮送還をめぐる論議、徹底的に突き止めよ

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
韓国政府が亡命の意思を明らかにした北朝鮮住民2人を強制的に北朝鮮へ送還したという疑惑が広がっている。万一、事実なら韓国憲法の基本価値と国連拷問防止条約を正面から違反して人倫を逆らった重大犯罪だ。「人が先だ」はスローガンで執権した現政権の道徳性にも根本的な疑問が提起されるほかはない。

「北朝鮮の住民が死んでも(北朝鮮に)帰るといった」という金錬鉄(キム・ヨンチョル)統一部長官の国会発言から偽りである可能性が大きくなっている。統一部当局者が「北朝鮮住民が手書きで亡命意向書を作成した」と明らかにし、軍当局も「北朝鮮住民が韓国海軍の退去作戦に抵抗して一貫して韓国へ向かった」と報告したためだ。韓国憲法上、北朝鮮住民は北朝鮮の土地にいても韓国国民だ。ましてわが領土に入ってきて亡命の意向を明らかにしたとすれば韓国政府は当然「国民」である人々を保護する責任がある。犯罪の疑惑があっても韓国司法当局の捜査・裁判を通じて措置を取ることが法に定められた手続きだ。さらに、20代初めの若者2人が狭い木船で船員16人を殺害することができたのかも疑問だ。それでも韓国政府は無罪推定の原則まで無視して北朝鮮の一方的な主張を既成事実化して「北朝鮮に行くと死ぬ」と哀願したはずの国民2人を追い出すかのように渡した。第3世界の後進国も自国民にこのような態度は取らない。

北朝鮮の実状に対して最も高い権威を認められる国連北朝鮮人権調査会(COI)の2014年報告によると、強制送還された脱北者はただ一人の例外もなくあくらつな拷問にあう。「鼻を突き抜けて輪をはめたり、血が出るほど殴られたり、女性は性暴行にあったりするのが常だ。妊娠した女性は麻酔もせず道具を使ったり骨盤を殴ったりして強制的に堕胎させる。出産した子供は妊婦を見る前で殺害される」。


このような惨状を十分に知っている韓国政府が北朝鮮へ送還を強行したなら国際社会も黙っているわけがない。トマス・キンタナ国連北朝鮮人権状況特別報告者は今回の事件に対して「該当政府」と接触して「今後の措置」を考えているという。国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)も政府の北朝鮮送還措置は拷問防止条約の違反だと非難する声明を出した。ちょうど北朝鮮に長期抑留されて送還6日で亡くなった米国人のオットー・ワームビア氏の親が22日、ソウルで開かれる北朝鮮拉致被害者の決議大会の出席を機に文在寅大統領との面談を希望したが、青瓦台が断ったのも非難を浴びている。

前代未聞の脱北者送還は共同警備区域のある中佐が青瓦台のキム・ユグン国家安保室第1次長に直接報告した事実が知らされたせいで明るみに出た。統一部と国家情報院いずれも消極的だった北朝鮮送還を青瓦台がなぜ国防長官まで排除してすぐに処理したのかが疑惑の核心だ。国会は直ちに関係者全員を聴聞会に出席させて真相調査を始めてほしい。



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