いま韓国の国民は政府の政策責任者がオオカミ少年なのかもしれないという疑いを少しの間でも引っ込めてはならない。韓国経済が自由落下しているのに政府は「大丈夫だ」という言葉ばかり繰り返しているためだ。経済指標はすべて赤信号なのに「韓国経済は正しい方向に進んでいる」という現政権の状況認識は、セウォル号に子どもたちが閉じ込められているのに「じっとしていなさい」と言ったのとまったく同じかもしれない。
なぜなのかは数字を見ればわかる。最も深刻な兆候は今年に入り非常ベルが鳴り続けている物価だ。10月の消費者物価上昇率は2カ月ぶりにマイナスを抜け出したが依然として0%台を記録した。「デフレの兆しではないのか」という懸念に、政府は「一時的」と主張する。この言葉をそのまま信じてはならない。1997年の通貨危機直前にも政府は「(経済の)ファンダメンタルズはしっかりしている」と国民をだました。
政府の言葉だけ信じて国民は韓国戦争(朝鮮戦争)以来最大の国難を体験しなければならなかった。大企業と巨大銀行が相次いで倒産し失業者200万人があふれた。その時「経済が危険だ」として政府があらかじめ対処していたならば体験しなかったことだった。青瓦台(チョンワデ、大統領府)のカン・キジョン政務首席秘書官が指を突き付けて怒るかも知れないが、政府がいくら言い張っても0%台の物価は韓国経済に向けた重大な警告に違いない。
いくら違うといっても経済の現場ではすでに日本型長期不況が始まっている。事実その兆候は「爆弾セール」「店舗整理」のような表現の中で日常化して随分たつ。最近の低物価はその結果にすぎない。他の国と比較するとさらに明確になる。経済協力開発機構(OECD)加盟国と加盟予定国40カ国の9月の物価上昇率で、韓国は最低のマイナス0.4%を記録した。われわれが口さえ開けば「失われた20年の呪いを受けた」で哀れに考える日本でもないことだ。日本の物価上昇率は今年0.2~0.9%で推移している。少なくとも物価が後退することはないという話だ。
物価上昇率最下位は祝福ではなく呪いだ。肯定的な意味の物価安定ではなく経済躍動性の低下を意味するためだ。低物価は低金利・低成長の別の顔でもある。最近は銀行に1億ウォンを預けても1カ月の利子は10万ウォンを少し超える程度だ。だから金を使うことができず消費が萎縮する。低金利の呪いだ。何より潜在成長率が2%台半ばに落ち込んだのは絶望的だ。今年はそれすら達成できず1%台の実質成長率が予告されている。これら全て現政権になって起きたことだ。すべての国が同じ条件で唯一韓国だけマイナス物価と急激な潜在成長率低下が現れているのは韓国経済内部の構造的問題が原因とみなければならない。
韓国政府はそれでも「大丈夫だ」という。企画財政部のキム・ヨンボム第1次官は「一部でデフレを懸念するが、物価が長期間持続して広範囲に下落することはない」と主張した。韓国銀行の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁も「年末か来年初めに1%台に戻るだろう」と楽観した。だが彼らは歴史を振り返らなければならない。米国の大恐慌と日本のバブル崩壊の時のように低物価は景気低迷を知らせるサイレンという事実をだ。
残念なのは非常ベルがけたたましく鳴っているのに政策責任者がオオカミ少年のように継続して「大丈夫だ」と言う間に韓国経済が手を出すこともできず鍋の中のカエルに転落するという点だ。物価が広範囲に下落せず1%台に戻れば大丈夫だということなのか問いたい。低成長・低物価自体で景気低迷のどん底に陥り結局日本の前轍を踏み長期不況の影が襲っているのにもだ。
診断が間違っているので正しい対策が出ることはない。経済活力を殺す所得主導成長が続くだけだ。そうなるほどに消費と投資が萎縮を続け物価を引き下げるデフレが加速しかねない。ローンを組んでマンションを買う人も多いため負債デフレまで重なることになる。経済の総体的崩壊を意味する。それでも政府は「大丈夫だ」と壊れたレコードをかける可能性が大きい。国民だけが鍋の中のカエルの境遇だ。
キム・ドンホ/論説委員
なぜなのかは数字を見ればわかる。最も深刻な兆候は今年に入り非常ベルが鳴り続けている物価だ。10月の消費者物価上昇率は2カ月ぶりにマイナスを抜け出したが依然として0%台を記録した。「デフレの兆しではないのか」という懸念に、政府は「一時的」と主張する。この言葉をそのまま信じてはならない。1997年の通貨危機直前にも政府は「(経済の)ファンダメンタルズはしっかりしている」と国民をだました。
政府の言葉だけ信じて国民は韓国戦争(朝鮮戦争)以来最大の国難を体験しなければならなかった。大企業と巨大銀行が相次いで倒産し失業者200万人があふれた。その時「経済が危険だ」として政府があらかじめ対処していたならば体験しなかったことだった。青瓦台(チョンワデ、大統領府)のカン・キジョン政務首席秘書官が指を突き付けて怒るかも知れないが、政府がいくら言い張っても0%台の物価は韓国経済に向けた重大な警告に違いない。
いくら違うといっても経済の現場ではすでに日本型長期不況が始まっている。事実その兆候は「爆弾セール」「店舗整理」のような表現の中で日常化して随分たつ。最近の低物価はその結果にすぎない。他の国と比較するとさらに明確になる。経済協力開発機構(OECD)加盟国と加盟予定国40カ国の9月の物価上昇率で、韓国は最低のマイナス0.4%を記録した。われわれが口さえ開けば「失われた20年の呪いを受けた」で哀れに考える日本でもないことだ。日本の物価上昇率は今年0.2~0.9%で推移している。少なくとも物価が後退することはないという話だ。
物価上昇率最下位は祝福ではなく呪いだ。肯定的な意味の物価安定ではなく経済躍動性の低下を意味するためだ。低物価は低金利・低成長の別の顔でもある。最近は銀行に1億ウォンを預けても1カ月の利子は10万ウォンを少し超える程度だ。だから金を使うことができず消費が萎縮する。低金利の呪いだ。何より潜在成長率が2%台半ばに落ち込んだのは絶望的だ。今年はそれすら達成できず1%台の実質成長率が予告されている。これら全て現政権になって起きたことだ。すべての国が同じ条件で唯一韓国だけマイナス物価と急激な潜在成長率低下が現れているのは韓国経済内部の構造的問題が原因とみなければならない。
韓国政府はそれでも「大丈夫だ」という。企画財政部のキム・ヨンボム第1次官は「一部でデフレを懸念するが、物価が長期間持続して広範囲に下落することはない」と主張した。韓国銀行の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁も「年末か来年初めに1%台に戻るだろう」と楽観した。だが彼らは歴史を振り返らなければならない。米国の大恐慌と日本のバブル崩壊の時のように低物価は景気低迷を知らせるサイレンという事実をだ。
残念なのは非常ベルがけたたましく鳴っているのに政策責任者がオオカミ少年のように継続して「大丈夫だ」と言う間に韓国経済が手を出すこともできず鍋の中のカエルに転落するという点だ。物価が広範囲に下落せず1%台に戻れば大丈夫だということなのか問いたい。低成長・低物価自体で景気低迷のどん底に陥り結局日本の前轍を踏み長期不況の影が襲っているのにもだ。
診断が間違っているので正しい対策が出ることはない。経済活力を殺す所得主導成長が続くだけだ。そうなるほどに消費と投資が萎縮を続け物価を引き下げるデフレが加速しかねない。ローンを組んでマンションを買う人も多いため負債デフレまで重なることになる。経済の総体的崩壊を意味する。それでも政府は「大丈夫だ」と壊れたレコードをかける可能性が大きい。国民だけが鍋の中のカエルの境遇だ。
キム・ドンホ/論説委員
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