多くの人が経済が危機だと話す。チョ・グク氏をめぐるスキャンダルに熱を上げながらも経済に話題が移るとため息が続く。いまの経済が正常でないという指標はひとつやふたつではない。経済の総体的成績表である成長率は2%の達成が難しいようにみられる。通貨危機(1998年、マイナス5.5%)や金融危機(2009年、0.7%)のような危機状況を除きこうした低成長はなかった。経済がまともに成長できず、政府が財政を放出して作る臨時雇用以外には雇用が十分に生じておらず、お金が回らずついに物価がマイナスに落ちたこの状況が危機でなければ何が危機なのか。通貨危機が急性心筋梗塞だったなら、いまは体内で重病にかかっている格好だ。
韓国経済で国の外為金庫がすっかりなくなるような通貨危機が訪れる可能性は低いとみる。政府が口さえ開けば自慢していた通り外貨準備高は4000億ドルを超えた。国際金融市場が台無しになる状況ではないならデフォルトを心配するほどまで進まないだろう。心配になる点は2019年の韓国社会が1997年の通貨危機当時と類似した点が少なくないということだ。
まず執権勢力内部の危機意識不在だ。「韓国経済は正しい方向に行っている」という文在寅(ムン・ジェイン)大統領の認識がこれを代弁する。危機がくるのに危機を認識できなければ経済はとんでもない方向に流れる。97年当時韓国社会は「韓国経済はファンダメンタルズが堅固だ」という「ファンダメンタルズ論」に酔っていた。そんな非理性的楽観論の中で改革と構造調整のタイミングを逃した。同年に韓宝(ハンボ)鉄鋼をはじめ、真露(ジンロ)、起亜(キア)など大企業の倒産が続いたが不良企業手術は遅々として進まず、結局海外資本の離脱と通貨危機につながった。
20年前と似ている点はまだある。政界のポピュリズム(大衆迎合主義)蔓延と労組の勢力拡大だ。執権から2年間知らんぷりしていた大企業団体の全国経済人連合会を訪ねた席で、「文在寅政権は大企業労組の味方、民主労総の味方ではない」と話した与党議員は労働界が反発すると翌日に謝罪すると述べた。企業の士気を高めて経済を生かすことより、労働界ににらまれないことが先という格好だ。
票に誘惑された政界は国の経済のため必要な仕事をしない。企業が力を入れている週52時間制の弾力労働拡大や「データ3法(個人情報保護法・情報通信網法・信用情報法)」の改定案はまだ処理されていない。通貨危機当時もそうだった。国際通貨基金(IMF)という死神が門の前に来ているのに金融改革立法は国会の敷居を越えることができなかった。法案はすべてまとまっていたが、与野を問わず大統領選挙に不利だという理由から法案処理を忌避した。
通貨危機当時よりできていないことも多い。まず対外環境がはるかに悪い。米国と中国の覇権競争はグローバル分業体系を揺るがし世界経済をどん底に追いやっている。合わせて各国が貿易障壁を積み上げており保護貿易基調は大恐慌以降で最悪だ。輸出で生きる韓国経済としては致命的な状況だ。輸出が10カ月連続で減少するのは一時的な現象ではないかもしれない。
いまも相対的に財政は堅実な方だが、20年ほど前にはもっと堅固だった。その裏には「ノー」と言える官僚らがいた。彼らはIMF交渉団が「赤字財政を編成せよ」と押しつけても「健全財政が重要だ」として目を血走らせて持ちこたえた。財政拡大に消極的だったために景気がさらに冷え込んだという批判もあるが、財政健全性死守の意志だけは高く評価できた。政界のポピュリズムに対抗しなければならない官僚らの決起は以前と同じではない。国の借金が急増している現在の状況を予算官僚の先輩らは何と言うだろうか。一度崩れた財政の堤防は立て直しが難しい。
何より不吉なのは通貨危機当時よりも激しい不安感と悲観論が拡散しているという点だ。経済は心理なのに、その心理が崩れている。海外に出て行く直接投資額は過去最高を記録し、国内設備投資は10カ月連続マイナスだ。成長動力が凍りつき日本型の長期不況がすでに始まったとみる人たちがますます増加している。
経済が危機ということに同意しなくても、現政権もやはり経済を回復させたい思いはやまやまだろう。だが企業と人とお金が離れる経済をどういう方法で回復させるというのか。経済再生は韓国経済の投資魅力がなぜ落ちているのかに対する反省から始まらなければならない。
イ・サンリョル/経済エディター
韓国経済で国の外為金庫がすっかりなくなるような通貨危機が訪れる可能性は低いとみる。政府が口さえ開けば自慢していた通り外貨準備高は4000億ドルを超えた。国際金融市場が台無しになる状況ではないならデフォルトを心配するほどまで進まないだろう。心配になる点は2019年の韓国社会が1997年の通貨危機当時と類似した点が少なくないということだ。
まず執権勢力内部の危機意識不在だ。「韓国経済は正しい方向に行っている」という文在寅(ムン・ジェイン)大統領の認識がこれを代弁する。危機がくるのに危機を認識できなければ経済はとんでもない方向に流れる。97年当時韓国社会は「韓国経済はファンダメンタルズが堅固だ」という「ファンダメンタルズ論」に酔っていた。そんな非理性的楽観論の中で改革と構造調整のタイミングを逃した。同年に韓宝(ハンボ)鉄鋼をはじめ、真露(ジンロ)、起亜(キア)など大企業の倒産が続いたが不良企業手術は遅々として進まず、結局海外資本の離脱と通貨危機につながった。
20年前と似ている点はまだある。政界のポピュリズム(大衆迎合主義)蔓延と労組の勢力拡大だ。執権から2年間知らんぷりしていた大企業団体の全国経済人連合会を訪ねた席で、「文在寅政権は大企業労組の味方、民主労総の味方ではない」と話した与党議員は労働界が反発すると翌日に謝罪すると述べた。企業の士気を高めて経済を生かすことより、労働界ににらまれないことが先という格好だ。
票に誘惑された政界は国の経済のため必要な仕事をしない。企業が力を入れている週52時間制の弾力労働拡大や「データ3法(個人情報保護法・情報通信網法・信用情報法)」の改定案はまだ処理されていない。通貨危機当時もそうだった。国際通貨基金(IMF)という死神が門の前に来ているのに金融改革立法は国会の敷居を越えることができなかった。法案はすべてまとまっていたが、与野を問わず大統領選挙に不利だという理由から法案処理を忌避した。
通貨危機当時よりできていないことも多い。まず対外環境がはるかに悪い。米国と中国の覇権競争はグローバル分業体系を揺るがし世界経済をどん底に追いやっている。合わせて各国が貿易障壁を積み上げており保護貿易基調は大恐慌以降で最悪だ。輸出で生きる韓国経済としては致命的な状況だ。輸出が10カ月連続で減少するのは一時的な現象ではないかもしれない。
いまも相対的に財政は堅実な方だが、20年ほど前にはもっと堅固だった。その裏には「ノー」と言える官僚らがいた。彼らはIMF交渉団が「赤字財政を編成せよ」と押しつけても「健全財政が重要だ」として目を血走らせて持ちこたえた。財政拡大に消極的だったために景気がさらに冷え込んだという批判もあるが、財政健全性死守の意志だけは高く評価できた。政界のポピュリズムに対抗しなければならない官僚らの決起は以前と同じではない。国の借金が急増している現在の状況を予算官僚の先輩らは何と言うだろうか。一度崩れた財政の堤防は立て直しが難しい。
何より不吉なのは通貨危機当時よりも激しい不安感と悲観論が拡散しているという点だ。経済は心理なのに、その心理が崩れている。海外に出て行く直接投資額は過去最高を記録し、国内設備投資は10カ月連続マイナスだ。成長動力が凍りつき日本型の長期不況がすでに始まったとみる人たちがますます増加している。
経済が危機ということに同意しなくても、現政権もやはり経済を回復させたい思いはやまやまだろう。だが企業と人とお金が離れる経済をどういう方法で回復させるというのか。経済再生は韓国経済の投資魅力がなぜ落ちているのかに対する反省から始まらなければならない。
イ・サンリョル/経済エディター
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