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【コラム】ナイキとアシックス、そしてプロスペックス=韓国

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
1980年代は激動の歳月だった。軍事政権に対抗して大学生の民主化運動が絶頂に達した時期だった。20代初めの大学生の血気は熱かった。そして新しい物に対する好奇心も旺盛だった。大学初年兵時代に記者はナイキのスウッシュロゴがそれほど格好良く見えなかった。アルバイトをしてお金を貯めた。スウッシュロゴが光るナイキの運動靴を手に入れた時のあの気持ちをまだ忘れることができない。ところがその運動靴を履いて学校に行きひどい目に遭うとは思わなかった。普段から親しかったある先輩は私が履いていたナイキの靴をぼんやり眺めたかと思うと、「米国帝国主義の代表的商品であるナイキを履いてきた」と面罵した。

山河が3度変わった。2019年、米国のナイキは世界最高のスポーツブランドに成長した。勝利の女神ニケの翼を形象化したというスウッシュロゴはいまではスポーツの代名詞になった。電子・IT製品を合わせても世界的に最もおなじみのロゴがまさにスウッシュだ。このロゴの市場価値だけで260億ドルを超えるという分析もある。ナイキの歴史はそれほど長くない。父親に借りた50ドルで日本製運動靴オニツカタイガーの輸入販売をしていた米国のフィリップ・ナイトが1971年に設立した会社がナイキだ。ナイトが2016年に刊行した自叙伝『シュードッグ』によると、スウッシュロゴはキャロライン・デビッドソンという無名の女性画家が2週間で急いで作った作品だ。ナイトは当初このロゴが気に入らなかったのか、デビッドソンにわずか35ドルの小切手を切ったという。

ナイキは草創期には日本製オニツカタイガーの品質に追いつくことができなかった。オニツカタイガーはアシックスの前身だ。1949年に日本の神戸で始まったオニツカは米国の輸入商ナイトがナイキというブランドを作りライバル関係になると、1977年に会社名をアシックスに変えた。アシックスが停滞する間にスウッシュロゴを付けたナイキは世界市場に広がっていった。バスケットボールの皇帝マイケル・ジョーダン、ゴルフの皇帝タイガー・ウッズがナイキの靴を履いた。攻撃的なスポーツマーケティング戦略を掲げて前世界最高のスポーツブランドになった。昨年の売上額は364億ドルを超える。


米国にナイキ、日本にアシックスがあるならば、ドイツにはアディダスがある。中国は体操スターの名前を取った「リーニン(李寧)」というブランドを育てるために国レベルの努力をしている。韓国はどうなのか。目をこすって探してみても韓国を代表するほどのスポーツブランドはない。1980年代に道端でよく見られた国産の「カバロ」や「ペガサス」の運動靴は姿を消して久しい。プロスペックスというブランドだけがどうにか命脈を維持しているだけだ。

高速道路にはきょうも乗用車があふれている。最も多く目に入るのは現代自動車と起亜自動車だ。その間にベンツとBMW、アウディ、レクサスのロゴがみられる。ところがスポーツ用品市場だけは外国ブランド一色だ。サッカー代表チーム選手のユニフォームにはナイキのスウッシュロゴが光る。バレーボール韓国代表ユニフォームは日本のアシックス製品だ。それでもイタリアブランドを買収したフィラが内外市場で善戦しているのが慰めだ。

国家代表ユニフォームは必ず国産であるべきという話ではない。安倍首相が憎いからと日本ブランドのロゴが付いた国家代表ユニフォームを着るのをやめようという話もとても感情的に聞こえる。21世紀に国粋主義は通じない。ブランドイメージと品質で対決するだけだ。ナイキとアディダス、アシックスが力強く走っている世界のスポーツ用品市場にそろそろメイド・イン・コリアのブランドがひとつくらいは出てくる時になっていないか。

チョン・ジェウォン/中央日報プラス・スポーツ本部長





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