--WTO協定違反の可能性や日本経済に与える影響には懸念はないのか。
「今回の措置は、禁輸ではなく、安全保障上の懸念を踏まえ、日本の輸出管理制度を適切に実施する上で必要な運用の見直しであり、こうした輸出管理の見直しは、韓国を含む各国も実施しているものです。従って、旧朝鮮半島出身労働者問題に係る『対抗措置』でもなければ、こうした措置が『自由貿易やG20サミットで採択した理念に反する』との指摘も全く当たりません。
さらに、今回の見直しは韓国に対して実施してきた簡素化された手続を通常の手続に戻すものであり、WTO協定との関係でも何の問題もありません」
--日本が今回の措置の根拠として安保上の問題を取り上げたことにより、両国の安保協力に対する懸念も高まっている。特に、GSOMIAが延長されるかどうかにも関心が集まっている。日本の対応は。
「繰り返しになりますが、今回の輸出管理の運用の見直しは、安全保障の観点から、軍用品への転用が可能な機微物資・技術等の輸出について、実効性のある管理を確かなものとするために行ったのであり、国際社会の責任ある一員として当然のことです。
日韓関係は非常に厳しい状況にありますが、北朝鮮問題を始めとした連携すべき課題については引き続き韓国と連携していく考えです」
--日本は1965年の請求権協定で徴用問題は決着が付いたと主張し、韓国は昨年10月の大法院判決を尊重しなければならないと対抗している。改めて、日本政府の徴用問題に対する立場は。
「旧朝鮮半島出身労働者の問題は、まさに国家間の約束を守るか否かの問題です。大法院判決が出されたという一方の国の国内事情で国と国の約束が破られるようなことになれば、安定した国際関係を築くことはできません。
日本と韓国は、1965年に14年にわたる困難な交渉をまとめ、日本から無償3億ドル、有償2億ドルの経済協力を約束するとともに、両国及びその国民の間の財産・請求権に関する問題が『完全かつ最終的に解決』されたことを明文の規定で確認しました。
また、その交渉の中で韓国側が日本側に示したいわゆる八項目の『対日請求要綱』には、被徴用韓人の未収金や戦争による被徴用者の被害に対する補償が含まれており、日韓請求権協定の合意議事録では、完全かつ最終的に解決された財産・請求権に当該八項目に属する請求が全て含まれており、いかなる主張もすることはできない旨明記されています。
さらに日韓請求権協定の交渉において、韓国は、被徴用者全般について補償を要求し、これが被徴用者の精神的、肉体的苦痛に対する補償を意味するとの説明を行いました。これに対し、日本側から、個人に対する支払いを提案しましたが、韓国側は、日本に対し、国として請求した上で、韓国内での支払いは、国内措置として行う旨述べた経緯があります。
2005年8月に韓国政府は、請求権協定を通じて日本から無償資金協力として受け取った無償3億ドルには、『強制動員』に関する『苦痛を受けた歴史的被害』の補償のための資金も含まれており、韓国政府は、受領した無償資金のうちの相当金額を『強制動員』被害者の救済に使わなければならない道義的責任を持つ旨を公表しています。
この問題の本質は、以上のような経緯がありながら、国と国との約束、それも国交正常化の法的基盤となってきた約束が50年以上も経ってから韓国側から一方的に覆されてしまったことにあります。韓国側には、国際法、国家間の関係の観点からこの問題にしっかり向き合っていただき、国際社会の一員としての責任ある対応を取るよう強く望みます。
同時に、日本としては、本件を国際法にのっとって解決するため、協定上定められた仲裁を求めています。韓国政府には協定上の義務に従い、7月18日までの期限内に仲裁に応じるよう求めます」
--大法院で最終勝訴の判決が下された3件については、韓日両国の企業の基金で解決することとし、今後提起される訴訟等その他の被害者に対しては、韓国政府が責任を持つ案、すなわち、「1+1+α(韓国政府)」案が出されたが、この案について提案を受けたことがあるのか。もしこの案が提案されれば受け入れる意思は。
「御指摘のような提案が韓国政府から日本政府に対して示されたとの事実はありません。
その上で申し上げれば、先月、韓国政府からなされた提案については、韓国による国際法違反の状態を是正することにはならず、この問題の解決策にはならない旨、従来から述べているとおりです。
韓国政府にはこの問題の重大性をしっかり認識いただき、早急に適切な対応をとることを強く望んでいます」
--政治的な対立が経済的交流に深刻な打撃を与えることは明白で、両国国民が被害を受ける状況になったわけだが。
「繰り返しになりますが、今回の輸出管理の運用の見直しは、安全保障の観点から、軍用品への転用が可能な機微物資・技術等の輸出について、実効性のある管理を確かなものとするために行ったのであり、国際社会の一員として当然のことです。
日韓関係の現状は大変厳しいものがありますが、そのような時でも、両国間の相互理解と信頼増進のために、国民間の交流、自治体間の交流や、文化・スポーツ等の交流はしっかり続けていくべきと考え、私は機会がある度にこの点を発信しています。
特に日韓両国の未来を担う青少年の交流は重要であり、日本の外務省は昨年度1年間で1000名以上の日韓の青少年らを招へい、又は派遣しました。相手国を実際に自分の目で見て体験し、理解することで、両国のより多くの国民がそれぞれの隣国を大切に思い、友好的な感情を持つようになることは極めて重要です。これからもこうした交流事業は韓国側とも協力しながら力強く進めていきたいと思います。
私は、日本の国会議員の中でもとりわけ日韓関係に愛情を注いできたという自負があります。このような強い思いがあるからこそ韓国側には適切な対応を取ってもらいたいと強く望んでいます」
--両国関係がこのような状況にまで墜落した最も大きなきっかけは具体的に何だとお考えか。
「私は、外務大臣就任以来、日韓関係を未来志向で発展させていくことが極めて重要であるとの信念の下、そのために懸命に努力してきました。しかし、昨年来、それに逆行するような韓国側による否定的な動きが相次いでいることは大変残念です。
特に昨年の一連の大法院の判決は、1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の法的基盤を根本から覆すものであり、日本政府だけではなく、両国の良好な関係を望む多くの日本国民を大変失望させています。
もちろん、隣国同士である日本と韓国の間の重要な関係をこのままの状態で放置してよいわけがありません。韓国政府には、日韓関係の重要性をしっかり認識した上で、早急に適切な対応を取ることを強く望んでいます」
--韓日間には水面下の対話チャンネルが完全に閉ざされているという指摘があり、このため、専門家からは「無条件で両国首脳が会うべきだ」との主張も出ている。
「日韓間の対話のチャネルが閉ざされているとの指摘は正しくありません。外交当局間では、私と康京和(カン・ギョンファ)外交部長官との対話を始め、あらゆるレベルで緊密なやり取りが行われています。
今後とも外交当局間の対話を継続していく考えです」
河野外相単独インタビュー「徴用葛藤で信頼関係が損なわれている…韓国、明日までに仲裁に応じよ」(1)
「今回の措置は、禁輸ではなく、安全保障上の懸念を踏まえ、日本の輸出管理制度を適切に実施する上で必要な運用の見直しであり、こうした輸出管理の見直しは、韓国を含む各国も実施しているものです。従って、旧朝鮮半島出身労働者問題に係る『対抗措置』でもなければ、こうした措置が『自由貿易やG20サミットで採択した理念に反する』との指摘も全く当たりません。
さらに、今回の見直しは韓国に対して実施してきた簡素化された手続を通常の手続に戻すものであり、WTO協定との関係でも何の問題もありません」
--日本が今回の措置の根拠として安保上の問題を取り上げたことにより、両国の安保協力に対する懸念も高まっている。特に、GSOMIAが延長されるかどうかにも関心が集まっている。日本の対応は。
「繰り返しになりますが、今回の輸出管理の運用の見直しは、安全保障の観点から、軍用品への転用が可能な機微物資・技術等の輸出について、実効性のある管理を確かなものとするために行ったのであり、国際社会の責任ある一員として当然のことです。
日韓関係は非常に厳しい状況にありますが、北朝鮮問題を始めとした連携すべき課題については引き続き韓国と連携していく考えです」
--日本は1965年の請求権協定で徴用問題は決着が付いたと主張し、韓国は昨年10月の大法院判決を尊重しなければならないと対抗している。改めて、日本政府の徴用問題に対する立場は。
「旧朝鮮半島出身労働者の問題は、まさに国家間の約束を守るか否かの問題です。大法院判決が出されたという一方の国の国内事情で国と国の約束が破られるようなことになれば、安定した国際関係を築くことはできません。
日本と韓国は、1965年に14年にわたる困難な交渉をまとめ、日本から無償3億ドル、有償2億ドルの経済協力を約束するとともに、両国及びその国民の間の財産・請求権に関する問題が『完全かつ最終的に解決』されたことを明文の規定で確認しました。
また、その交渉の中で韓国側が日本側に示したいわゆる八項目の『対日請求要綱』には、被徴用韓人の未収金や戦争による被徴用者の被害に対する補償が含まれており、日韓請求権協定の合意議事録では、完全かつ最終的に解決された財産・請求権に当該八項目に属する請求が全て含まれており、いかなる主張もすることはできない旨明記されています。
さらに日韓請求権協定の交渉において、韓国は、被徴用者全般について補償を要求し、これが被徴用者の精神的、肉体的苦痛に対する補償を意味するとの説明を行いました。これに対し、日本側から、個人に対する支払いを提案しましたが、韓国側は、日本に対し、国として請求した上で、韓国内での支払いは、国内措置として行う旨述べた経緯があります。
2005年8月に韓国政府は、請求権協定を通じて日本から無償資金協力として受け取った無償3億ドルには、『強制動員』に関する『苦痛を受けた歴史的被害』の補償のための資金も含まれており、韓国政府は、受領した無償資金のうちの相当金額を『強制動員』被害者の救済に使わなければならない道義的責任を持つ旨を公表しています。
この問題の本質は、以上のような経緯がありながら、国と国との約束、それも国交正常化の法的基盤となってきた約束が50年以上も経ってから韓国側から一方的に覆されてしまったことにあります。韓国側には、国際法、国家間の関係の観点からこの問題にしっかり向き合っていただき、国際社会の一員としての責任ある対応を取るよう強く望みます。
同時に、日本としては、本件を国際法にのっとって解決するため、協定上定められた仲裁を求めています。韓国政府には協定上の義務に従い、7月18日までの期限内に仲裁に応じるよう求めます」
--大法院で最終勝訴の判決が下された3件については、韓日両国の企業の基金で解決することとし、今後提起される訴訟等その他の被害者に対しては、韓国政府が責任を持つ案、すなわち、「1+1+α(韓国政府)」案が出されたが、この案について提案を受けたことがあるのか。もしこの案が提案されれば受け入れる意思は。
「御指摘のような提案が韓国政府から日本政府に対して示されたとの事実はありません。
その上で申し上げれば、先月、韓国政府からなされた提案については、韓国による国際法違反の状態を是正することにはならず、この問題の解決策にはならない旨、従来から述べているとおりです。
韓国政府にはこの問題の重大性をしっかり認識いただき、早急に適切な対応をとることを強く望んでいます」
--政治的な対立が経済的交流に深刻な打撃を与えることは明白で、両国国民が被害を受ける状況になったわけだが。
「繰り返しになりますが、今回の輸出管理の運用の見直しは、安全保障の観点から、軍用品への転用が可能な機微物資・技術等の輸出について、実効性のある管理を確かなものとするために行ったのであり、国際社会の一員として当然のことです。
日韓関係の現状は大変厳しいものがありますが、そのような時でも、両国間の相互理解と信頼増進のために、国民間の交流、自治体間の交流や、文化・スポーツ等の交流はしっかり続けていくべきと考え、私は機会がある度にこの点を発信しています。
特に日韓両国の未来を担う青少年の交流は重要であり、日本の外務省は昨年度1年間で1000名以上の日韓の青少年らを招へい、又は派遣しました。相手国を実際に自分の目で見て体験し、理解することで、両国のより多くの国民がそれぞれの隣国を大切に思い、友好的な感情を持つようになることは極めて重要です。これからもこうした交流事業は韓国側とも協力しながら力強く進めていきたいと思います。
私は、日本の国会議員の中でもとりわけ日韓関係に愛情を注いできたという自負があります。このような強い思いがあるからこそ韓国側には適切な対応を取ってもらいたいと強く望んでいます」
--両国関係がこのような状況にまで墜落した最も大きなきっかけは具体的に何だとお考えか。
「私は、外務大臣就任以来、日韓関係を未来志向で発展させていくことが極めて重要であるとの信念の下、そのために懸命に努力してきました。しかし、昨年来、それに逆行するような韓国側による否定的な動きが相次いでいることは大変残念です。
特に昨年の一連の大法院の判決は、1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の法的基盤を根本から覆すものであり、日本政府だけではなく、両国の良好な関係を望む多くの日本国民を大変失望させています。
もちろん、隣国同士である日本と韓国の間の重要な関係をこのままの状態で放置してよいわけがありません。韓国政府には、日韓関係の重要性をしっかり認識した上で、早急に適切な対応を取ることを強く望んでいます」
--韓日間には水面下の対話チャンネルが完全に閉ざされているという指摘があり、このため、専門家からは「無条件で両国首脳が会うべきだ」との主張も出ている。
「日韓間の対話のチャネルが閉ざされているとの指摘は正しくありません。外交当局間では、私と康京和(カン・ギョンファ)外交部長官との対話を始め、あらゆるレベルで緊密なやり取りが行われています。
今後とも外交当局間の対話を継続していく考えです」
河野外相単独インタビュー「徴用葛藤で信頼関係が損なわれている…韓国、明日までに仲裁に応じよ」(1)
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