韓国実務団を冷遇する日本を見て、22年前の苦い記憶が脳裏に蘇った。通貨危機当時、筆者は東京特派員として「日本の悪い癖を直す」と言った金泳三(キム・ヨンサム)政権のその後の悪影響を現地で目撃した。1997年11月28日、韓国の副首相が日本の大蔵大臣に会って緊急資金支援を要請したがけんもほろろに断られた。米国財務省がすでに大蔵省に「金を貸すな」と手を打っていた状態だった。大蔵大臣は「日本の単独支援は難しい」という言葉を繰り返すのみだった。先週末の日本の冷遇も米国との事前共感や最小限の黙認があったとみるべきだ。
文大統領が安倍首相が張っておいた罠に引っかかったような感じだ。日本は正確に急所を突いた反面、韓国は慌てながらただ腕力だけを振り回している。一昨日、文大統領の「結局、日本経済のほうが大きな被害を受ける」という発言も事前に計算されたものかどうか疑わしい。これまでの「韓国の被害が3倍以上」という分析からは非常に乖離した状況だからだ。政府が十分に経済被害を確認してみたのかも疑問だ。民間の経済研究所によると、先週末、韓国開発研究院(KDI)が「上からの急な指示」として日本貿易規制に関する資料があれば協力してほしいとあたふたと要請してきたという。いくらKDIといっても2~3日で分析を終えるのは無理というものだ。
最近、日本専門家のインタビューのうち、大きく2つのことが恐ろしく迫ってくる。まず一つは「今回の事態による教訓は、韓国社会が日本に対して驚くほど無知だったという点」という津田塾大学の朴正鎮(パク・ジョンジン)教授の指摘だ。日本で嫌韓の雰囲気が盛り上がり、安倍政府が公然と刀を研いでいるにもかかわらず、韓国は事前の警戒と予防に失敗した。もう一つは「安倍政府は東京オリンピック(五輪)が開かれる来年7月ごろに妥協に出る」という松山大学の張貞旭(チャン・ジョンウク)教授の診断だ。今年10月の消費税率引き上げを控えた安倍としてはスケープゴートが必要だ。中国との尖閣紛争やロシアの北方領土返還はおいそれとは手が出しにくく、「条件をつけずに会う」としている北朝鮮を攻撃するばかりもできない。残ったのが韓国だけというものだ。
それなら今回の事態は長く引っ張るほど良いことがない。意外にも今回の葛藤の解決方法をめぐり、保守・進歩陣営間の違いも大きくない。むしろ進歩側の意見が合理的だ。どちらの陣営も外交的解決法を注文する。ハンギョレ新聞は「世界貿易機関(WTO)に提訴しても数年を要し、韓国企業の困難をすぐには解決できない。勝訴したとしても、報復の撤回や被害の原状回復を引き出すのは容易ではない」と報じた。政府側であり、学者の鄭泰仁(チョン・テイン)氏も京郷(キョンヒャン)新聞に「両国の最終審級が65年韓日協定を相反するように解釈した。日本政府がこの協定に基づいて仲裁を要求するのは最もなことだ。韓国政府はこの要求に応じて大法院の判断根拠を説明し、日本子会社の資産差し押さえの問題も議論するべきだった。ただ冷遇してどうにかなるようなことではなかった」と書いた。
民主弁護士会(民弁)のソン・ギホ弁護士も民主党の懇談会で「日本政府としては国際仲裁委に回付するのがむしろ国の責務」と認めた。ソン弁護士はさらに一歩踏み込んで「韓国政府が個人請求権賠償金を先に支給し、その後に国際仲裁手続きによって補償金問題を解決しなければならないだろう」と提案した。このように進歩側専門家たちも口をそろえて仲裁委の構成が不可避だと考えている。それなら迷う理由がない。締め切り期間である明日、青瓦台(チョンワデ、大統領府)で与野代表会談が開かれる。勝負に出る最後の機会だ。米国も仲裁委カードくらいは出てきてこそ、韓日仲裁に出るものとみられる。
我々にとって2010年の日中紛争は反面教師だ。日本は9月7日に尖閣領海を侵して海上保安庁巡視船と衝突した中国人船長を逮捕した。中国は静かにレアアース(希土類)禁輸カードを切った。ニューヨーク・タイムズが9月23日に匿名の当局者の言葉を引用し、中国が対日レアアース輸出を全面統制したと報じた。両国政府は公開的にこの報道を否定したが、その翌日、日本は中国船長を釈放した。那覇地方検察庁は「今回の衝突は船長が瞬間的に酔っぱらった行動で計画性があるとはみられない」と退いた。この白旗投降で日本政府の支持率は10%ポイントも暴落した。だが、そのような外交的屈辱を克服し、日本はレアアース代替材の開発に踏み出し、中国もこれ以上日本をむやみに扱うことができなくなった。
今回も事故は政治家が起こして無関係の企業が収拾のために四方を奔走している。所得主導成長で自営業をめちゃくちゃにしたとすると、今回は韓日摩擦で輸出企業まで荒地にしてしまわないか心配だ。誰が実権を握り誰がそれを実際に行使しているのかから冷静に判断しなければならない。文大統領が先に強制徴用被害者を青瓦台に招いて心の痛みを慰め、事態の悪化を防ぐために「現金化(日本資産の強制売却)」を遅らせるよう頼むのが合理的な解決手順ではないかと思う。同時に特使を派遣し、安倍首相と仲裁委構成や「1+1+α」などの共同基金の水面下協議に入るべきだ。米国ケネディ大統領も就任演説でソ連に対して「恐怖から交渉をしてはいけない。しかしまた、交渉するのを恐れてもいけない」と言った。
イ・チョルホ/中央日報コラムニスト
文大統領が安倍首相が張っておいた罠に引っかかったような感じだ。日本は正確に急所を突いた反面、韓国は慌てながらただ腕力だけを振り回している。一昨日、文大統領の「結局、日本経済のほうが大きな被害を受ける」という発言も事前に計算されたものかどうか疑わしい。これまでの「韓国の被害が3倍以上」という分析からは非常に乖離した状況だからだ。政府が十分に経済被害を確認してみたのかも疑問だ。民間の経済研究所によると、先週末、韓国開発研究院(KDI)が「上からの急な指示」として日本貿易規制に関する資料があれば協力してほしいとあたふたと要請してきたという。いくらKDIといっても2~3日で分析を終えるのは無理というものだ。
最近、日本専門家のインタビューのうち、大きく2つのことが恐ろしく迫ってくる。まず一つは「今回の事態による教訓は、韓国社会が日本に対して驚くほど無知だったという点」という津田塾大学の朴正鎮(パク・ジョンジン)教授の指摘だ。日本で嫌韓の雰囲気が盛り上がり、安倍政府が公然と刀を研いでいるにもかかわらず、韓国は事前の警戒と予防に失敗した。もう一つは「安倍政府は東京オリンピック(五輪)が開かれる来年7月ごろに妥協に出る」という松山大学の張貞旭(チャン・ジョンウク)教授の診断だ。今年10月の消費税率引き上げを控えた安倍としてはスケープゴートが必要だ。中国との尖閣紛争やロシアの北方領土返還はおいそれとは手が出しにくく、「条件をつけずに会う」としている北朝鮮を攻撃するばかりもできない。残ったのが韓国だけというものだ。
それなら今回の事態は長く引っ張るほど良いことがない。意外にも今回の葛藤の解決方法をめぐり、保守・進歩陣営間の違いも大きくない。むしろ進歩側の意見が合理的だ。どちらの陣営も外交的解決法を注文する。ハンギョレ新聞は「世界貿易機関(WTO)に提訴しても数年を要し、韓国企業の困難をすぐには解決できない。勝訴したとしても、報復の撤回や被害の原状回復を引き出すのは容易ではない」と報じた。政府側であり、学者の鄭泰仁(チョン・テイン)氏も京郷(キョンヒャン)新聞に「両国の最終審級が65年韓日協定を相反するように解釈した。日本政府がこの協定に基づいて仲裁を要求するのは最もなことだ。韓国政府はこの要求に応じて大法院の判断根拠を説明し、日本子会社の資産差し押さえの問題も議論するべきだった。ただ冷遇してどうにかなるようなことではなかった」と書いた。
民主弁護士会(民弁)のソン・ギホ弁護士も民主党の懇談会で「日本政府としては国際仲裁委に回付するのがむしろ国の責務」と認めた。ソン弁護士はさらに一歩踏み込んで「韓国政府が個人請求権賠償金を先に支給し、その後に国際仲裁手続きによって補償金問題を解決しなければならないだろう」と提案した。このように進歩側専門家たちも口をそろえて仲裁委の構成が不可避だと考えている。それなら迷う理由がない。締め切り期間である明日、青瓦台(チョンワデ、大統領府)で与野代表会談が開かれる。勝負に出る最後の機会だ。米国も仲裁委カードくらいは出てきてこそ、韓日仲裁に出るものとみられる。
我々にとって2010年の日中紛争は反面教師だ。日本は9月7日に尖閣領海を侵して海上保安庁巡視船と衝突した中国人船長を逮捕した。中国は静かにレアアース(希土類)禁輸カードを切った。ニューヨーク・タイムズが9月23日に匿名の当局者の言葉を引用し、中国が対日レアアース輸出を全面統制したと報じた。両国政府は公開的にこの報道を否定したが、その翌日、日本は中国船長を釈放した。那覇地方検察庁は「今回の衝突は船長が瞬間的に酔っぱらった行動で計画性があるとはみられない」と退いた。この白旗投降で日本政府の支持率は10%ポイントも暴落した。だが、そのような外交的屈辱を克服し、日本はレアアース代替材の開発に踏み出し、中国もこれ以上日本をむやみに扱うことができなくなった。
今回も事故は政治家が起こして無関係の企業が収拾のために四方を奔走している。所得主導成長で自営業をめちゃくちゃにしたとすると、今回は韓日摩擦で輸出企業まで荒地にしてしまわないか心配だ。誰が実権を握り誰がそれを実際に行使しているのかから冷静に判断しなければならない。文大統領が先に強制徴用被害者を青瓦台に招いて心の痛みを慰め、事態の悪化を防ぐために「現金化(日本資産の強制売却)」を遅らせるよう頼むのが合理的な解決手順ではないかと思う。同時に特使を派遣し、安倍首相と仲裁委構成や「1+1+α」などの共同基金の水面下協議に入るべきだ。米国ケネディ大統領も就任演説でソ連に対して「恐怖から交渉をしてはいけない。しかしまた、交渉するのを恐れてもいけない」と言った。
イ・チョルホ/中央日報コラムニスト
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