北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長はどうしたらいいか困っているに違いない。弾道ミサイルを発射しても誰もが「大丈夫だ」と言う。さらに「短距離ミサイルはどこの国でも発射するものだ」(トランプ)と言ってかばう。挑発を通じてどうにか米朝交渉の局面転換を試みようとした金正恩の立場では、これほどあきれることも他にない。ハノイに続く2次誤算だ。結局、習近平を引き込んで反転に出ようとしている。事実、常識だけで見るなら話にならないようなことだ。北朝鮮のミサイル発射は国連安保理北朝鮮制裁決議2397号に真っ向から違反している。それでも米国防長官やホワイトハウスの国家安全保障担当は「安保理決議違反」、国務長官は「おそらく違反」、大統領は「違反ではない」という。コメディのような非正常的状況だ。韓国国防部はその上を行く。発射1カ月半が過ぎても、ただ「分析中」としか言わない。
「金正恩親書」騒動も正常ではない。親書とは指導者の考えを相手国に伝える高度な外交行為だ。該当国家指導者もその内容を公開しないのが鉄則だ。親書そのものが国家機密だからだ。先日問題になった韓米首脳間の電話会談内容と違わない。ところが北朝鮮の金正恩が米国のトランプに送った親書をめぐり、第三国である韓国の青瓦台(チョンワデ、大統領府)が理解できないコメントを出した。「鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長がそれ(親書)を見た。見て予想したものだった。トランプ大統領がこの手紙を見ることになれば『本当に美しい手紙』と言うだろう(と予想した)。予想がそのまま的中した」。明らかに韓国が前もって親書を見たというニュアンスだった。その後、「『見た』というのは、内容を知っていたということ」「『米国から内容を通知された』が正しい」と収拾したが、本当に外交的節度のある青瓦台なのか疑わしい。「見た」と「知っていた」、「見た」と「通知された」は同じ意味なのか。
また、内容は明らかにしなかったと言うものの、文在寅大統領が公開席上で「(親書に)トランプ大統領が発表しなかった非常に興味深い部分がある」と話したことも問題だ。事前に見たり聞いたりしたとしても、それがどれほど気になる内容だったとしても、当事国は黙っているのに第三国である我々が取り上げるべきことではない。いや、出しゃばるべきではなかった。外交の基本だ。このように仮定してみよう。韓米首脳間の通話内容を第3者である安倍首相がトランプから「伝達」されたとする。それを聞いた安倍が「あ、私は聞いたが、韓米首脳間で公開するのが難しい微妙な対話があったそうだ」と話した。どうなるだろうか。韓国は黙っていただだろうか。我々の外交素顔が今、こうだ。
非正常の正常化は長く続かないものだ。そのうえトランプの「制裁違反ではない」という発言は交渉妥結のための高度な戦略でも、緻密な戦術でもない。ただ、このように時間稼ぎをして来年の大統領選挙で勝つための枝打ちをしているにすぎない。再選が確定した瞬間、どう急変するか分からない。またトランプが再選に成功するという保障もない。金正恩を「暴君」と呼ぶジョー・バイデンが勝利する瞬間、北朝鮮外交は原点に逆戻りする。最高の相性「バイデン-習近平」が手を握って北朝鮮にどのように出るか、大言壮語できない。一言で、北朝鮮としては今の「非正常の局面」が最後のチャンスだ。「正常」に戻ったことに気づいた瞬間には、「時すでに遅し」だ。
我々の非正常外交も同じだ。同盟も友邦も遠ざかった「北朝鮮オールイン外交」は限界に直面した。今がその限界点であり転換点だ。「北朝鮮制裁緩和」と「完全な非核化」の間での綱渡りは、結局何の足しにもならず、なんの効果もなかったことを我々は1年以上にわたって目撃した。そのような点で、文大統領が最近北朝鮮に先に核廃棄の意志を示すよう求めたのは良い信号だ。車線を変えたので、大韓民国外交の実務指令塔も変える時期が来た。軍旗だけ握って責任は取らないのに、組織の歯車がまともに回っていくわけがない。リーダーシップの大家ラッセル・ユーイングは「ボスは非難を転嫁し、リーダーは誤りを正す」と言った。国民はボスを望んでいるのか、リーダーを望んでいるのか。答えは出ている。
金玄基(キム・ヒョンギ)/ワシントン総局長
「金正恩親書」騒動も正常ではない。親書とは指導者の考えを相手国に伝える高度な外交行為だ。該当国家指導者もその内容を公開しないのが鉄則だ。親書そのものが国家機密だからだ。先日問題になった韓米首脳間の電話会談内容と違わない。ところが北朝鮮の金正恩が米国のトランプに送った親書をめぐり、第三国である韓国の青瓦台(チョンワデ、大統領府)が理解できないコメントを出した。「鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長がそれ(親書)を見た。見て予想したものだった。トランプ大統領がこの手紙を見ることになれば『本当に美しい手紙』と言うだろう(と予想した)。予想がそのまま的中した」。明らかに韓国が前もって親書を見たというニュアンスだった。その後、「『見た』というのは、内容を知っていたということ」「『米国から内容を通知された』が正しい」と収拾したが、本当に外交的節度のある青瓦台なのか疑わしい。「見た」と「知っていた」、「見た」と「通知された」は同じ意味なのか。
また、内容は明らかにしなかったと言うものの、文在寅大統領が公開席上で「(親書に)トランプ大統領が発表しなかった非常に興味深い部分がある」と話したことも問題だ。事前に見たり聞いたりしたとしても、それがどれほど気になる内容だったとしても、当事国は黙っているのに第三国である我々が取り上げるべきことではない。いや、出しゃばるべきではなかった。外交の基本だ。このように仮定してみよう。韓米首脳間の通話内容を第3者である安倍首相がトランプから「伝達」されたとする。それを聞いた安倍が「あ、私は聞いたが、韓米首脳間で公開するのが難しい微妙な対話があったそうだ」と話した。どうなるだろうか。韓国は黙っていただだろうか。我々の外交素顔が今、こうだ。
非正常の正常化は長く続かないものだ。そのうえトランプの「制裁違反ではない」という発言は交渉妥結のための高度な戦略でも、緻密な戦術でもない。ただ、このように時間稼ぎをして来年の大統領選挙で勝つための枝打ちをしているにすぎない。再選が確定した瞬間、どう急変するか分からない。またトランプが再選に成功するという保障もない。金正恩を「暴君」と呼ぶジョー・バイデンが勝利する瞬間、北朝鮮外交は原点に逆戻りする。最高の相性「バイデン-習近平」が手を握って北朝鮮にどのように出るか、大言壮語できない。一言で、北朝鮮としては今の「非正常の局面」が最後のチャンスだ。「正常」に戻ったことに気づいた瞬間には、「時すでに遅し」だ。
我々の非正常外交も同じだ。同盟も友邦も遠ざかった「北朝鮮オールイン外交」は限界に直面した。今がその限界点であり転換点だ。「北朝鮮制裁緩和」と「完全な非核化」の間での綱渡りは、結局何の足しにもならず、なんの効果もなかったことを我々は1年以上にわたって目撃した。そのような点で、文大統領が最近北朝鮮に先に核廃棄の意志を示すよう求めたのは良い信号だ。車線を変えたので、大韓民国外交の実務指令塔も変える時期が来た。軍旗だけ握って責任は取らないのに、組織の歯車がまともに回っていくわけがない。リーダーシップの大家ラッセル・ユーイングは「ボスは非難を転嫁し、リーダーは誤りを正す」と言った。国民はボスを望んでいるのか、リーダーを望んでいるのか。答えは出ている。
金玄基(キム・ヒョンギ)/ワシントン総局長
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